読書日記353:社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう! byちきりん



タイトル:社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!
作者:ちきりん
出版元:大和書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
自分の目で見て、自分の足で歩いて、自分の心で感じよう!
社会派ちきりんの世界の見方。
いま、一番日本で影響力のある大人気ブログ「Chikirinの日記」著者の待望の最新刊!


感想--------------------------------------------------
この本の著者である”ちきりん”は、”おちゃらけ社会派”と称して書き始めたブログ、「Chikirinの日記」で有名な方です。このブログは月間150万PV、毎日3万人のユニークユーザーが訪れる日本で最も支持される個人ブログの一つだそうです。毎日3万人のユニークユーザーって……。同じブロガーだからこそ、この数字の凄さがよくわかりますね……。

「Chikirinの日記」は私も毎日のようにチェックしているのですが、字が大きい、行間が広い、砕けた文体、主張が簡潔で明快、と非常に読みやすいブログです。この”読みやすい”というのはどのような内容であるにしろ、多くの人々に指示されるブログの必須条件でしょうね。老若男女問わず、読みにくいより読みやすい方がいいに決まっています。

さて本書は、簡単に言ってしまうとそのブロガーちきりんが世界を歩いて考えたことをまとめた本です。ちきりんのこれまでの訪問国数なんと五十カ国。本書を読むと分かるのですが同じ国でも時期を変えて何度も訪問していたりするので、外国を訪問した回数は数え切れないのではないでしょうか。そうした非常に多くの海外訪問の経験と、”社会派”ならではの独自の鋭い視点により、本書は他のこうした世界紀行的な本とは大きく異なった切れ味鋭い本になっています。

この本の中でちきりんは、我々日本人が当たり前だと思っている価値観が世界では通用しないのだということを、自らの体験を通して示していきます。「店主と従業員の信頼関係が成り立たない国」、「水や、電気による光が当たり前に手に入らない国」、など世の中には日本と全く価値観の異なる国があることに驚くと同時に、翻って今の日本はこれだけ停滞していながらもなんて平和でのどかな国なのだろうか、と感じさせてもくれます。

私がこの方の視点の鋭さに感心した点の一つは、「ビーチリゾートの旅」と題した第五章で取り上げられているビーチリゾートの比較です。モルジブ、バリ島、プーケット、カンクンといったリゾート地を比較し、「バリ島やプーケット、カンクンでは独自の文化を感じることができるが、モルジブでは独自の文化を感じることはできない」と言っています。それはモルジブのリゾートが現地の人が住む場所と離れた場所に作られているからだそうですね。私もモルジブに行ったことがあり、今思い返すと確かにそうなのですが、普通はリゾート気分に浸りきってこんなことに気付かないのではないでしょうか。各地を周り、その土地を独自の視点で鋭く見つめてきた著者だから気付くことなのでしょうね。


他にも印象に残った点はいくつもありますが、本書の中で私が最も印象に残ったのはインドで出会った「格差」に関する記述です。インドを旅した際に、リクシャー(人力タクシー)に乗るお嬢様姿の少女達と、そのリクシャーを引く同い年くらいのぼろぼろの衣服を身に纏った少年を見かけたちきりんは、大きすぎる二者の間の格差と、その格差を当たり前に受け入れているインドという国の姿に、二重に絶句します。本当の格差社会では、「格差の認識」さえもない。この事実は色々なことを考えさせます。

日本には確かに格差はありません。しかし、格差の代わりに、他の国の人が見たら絶句するような不可思議なことが、もしかしたら当たり前としてまかり通っているのかもしれません。四十年間、毎日満員電車で通勤して朝早くから夜遅くまで働くサラリーマン、国内経済が行き詰っているのに外に眼を向けられない企業、意思決定ができず調整に明け暮れる政財界のリーダーたち……。これらの風景に日本人である我々は慣れてしまっていますが、逆に他国の人から見ると、これらの問題は、もしかしたら格差以上に大きな日本の問題に見えるかもしれません。

また、ちきりんが博物館や美術館で溜め息をつきながら眺めていた多くの工芸品、美術品がそうであるように、格差や階級といったものがないと生まれ得なかったものも数多くあります。日本という国は、全員平等を良しとし、「格差はあってはならないもの」という意識が非常に強い国だと思います。このこと自体は素晴らしいのですが、一方で全員横並びが良しとされるため、突き抜けるような何かを持った人はなかなかでてきません。仮に出てきたとしても今の日本ではきっと潰されてしまうでしょうね。このあたりは「リーダー不在」と言われる今の日本の状況を良く表していると思います。「リーダー不在」なのではなく、リーダーが出てきても、今の日本にはリーダーを受け入れる土壌がないため、潰れてしまうのでしょう。全員平等→全員衰退→全員滅亡みたいにならないためには、平等を機軸としつつも、何か手が必要だろうな、とも感じます。ここらへんは”Chikirinの日記”の「2012-06-14 “キラ星スター”だけは救い出そうというお話」なんかが参考になりそうです。

最後になりますが、この著者ちきりんが常に標榜している言葉は、”自分のアタマで考えよう”ということです。常日頃から自分のアタマで考えている習慣のある人と、そうでない人では将来、大きな差が生まれることは間違いありません。本書は”自分のアタマで考える”ことを始めるきっかとなるいい本だと思います。

*本ブログは『世界を歩いて考えよう!』の書評コンテストに応募しています!

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
レビュープラス

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック