読書日記352:パラダイス・ロスト by柳広司



タイトル:パラダイス・ロスト
作者:柳広司
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
異能のスパイたちを率いる“魔王”ー結城中佐。その知られざる過去が、ついに暴かれる!? 世界各国、シリーズ最大のスケールで繰り広げられる白熱の頭脳戦。究極のスパイ・ミステリ!



感想--------------------------------------------------
第二次大戦中、日本軍の中に極秘裏に設置されたスパイ養成機関「D機関」。そのD機関を率いる「魔王」こと結城中佐と世界を舞台に暗躍する各メンバーの活躍を描いたのが「ジョーカー・ゲーム」とその続編「ダブル・ジョーカー」です。この二作は評価が非常に高く、私もとても楽しく読むことができました。そして本作「パラダイス・ロスト」はこの二作に続く第三作目になります。

本作は「誤算」、「失楽園」、「追跡」、「暗号名ケルベロス(前編)」「暗号名ケルベロス(後編)」の全五編から構成されています。どの話でも「D機関」のメンバーおよび結城中佐の活躍が描かれているのはいつも通りですね。しかしその「いつもどおり」が非常に高いレベルで達成されています。本作も前二作と遜色のない、いや前二作以上の仕上がりになっています。これだけ注目されている作品の続編を、前作と変わらないレベルで出し続けるというのはそれだけでも難しいと思いますが、それを成し遂げているのは凄いと思います。

本作で印象的だったのは「誤算」と「暗号名ケルベロス」の二編でしょうか。どちらもD機関のスパイの眼線から物語が描かれているのですが、そのスパイとしての実力、手際のよさだけでなく間らしさも描かれていますね。特に「暗号名ケルベロス」で主人公が謎を解くために取った最後の行動は人間味が溢れていていいです。

あとは「追跡」でしょうか。一人の新聞記者によって僅かではありますが、D機関設立の立役者で「魔王」こと結城中佐の正体が暴かれていきます。ストーリーの結末はいつもどおり鮮やかなのですが、人間らしさを伴って描かれている結城中佐の姿を見るのは初めてでしょうね。

しかし本シリーズは本当に面白いですね。柳広司さんの他の作品と比較しても本シリーズは別格の面白さを誇っています。これは結城中佐やD機関をうまく影の存在として描いているからかな、と感じます。あくまで第三者的な視点から結城中佐とD機関を描くことで、彼らの存在を一層、際立たせているますね。また時代背景の描写もうまいです。本作では日米関係だけでなく、ドイツ、シンガポール、英国、フランスなどの当時の情勢も描かれており、それら各国の複雑な利害関係の中でD機関が暗躍していきます。このあたりの描き方はこれまでの本シリーズの作品と比べても進化しているなあ、って感じます。

本シリーズは「このミステリーがすごい!」大賞の常連ですが、本作もおそらくリストアップされるでしょうね。また続きもぜひ書いて欲しいです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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