コミック日記77:GUNSLINGER GIRL(14) by相田 裕



タイトル:GUNSLINGER GIRL(14)
作者:相田 裕
出版元:アスキー・メディアワークス
その他:

あらすじ----------------------------------------------
終幕の時。憎しみの果てにあるものは。五共和国派・公社・フラテッロ・・・、彼らの下した決断は・・・!!


感想--------------------------------------------------
Gunslinger Girlの14巻です。物語も佳境に入ってきましたね。そろそろ本作も終わるのでしょうか。かなりネタバレを含みますので味読の方はご注意を。

ジョゼとジャンの兄弟にとって最大の復讐の敵、ジャコモ・ダンテ率いるテロリスト集団によって占拠された建築中の原発で、激しい戦闘が繰り広げられる—。

前回、衝撃的な展開で終わりを迎えましたが、そこからの続きです。お互いを想いながら最期を迎えるジャンとヘンリエッタのフラテッロ(兄弟)。そして自らの身体を犠牲にしてジャコモ・ダンテに瀕死の重傷を与えたジョゼに、相棒であるリコは私のために生きてと懇願します。そしてトリエラとヒルシャーも同じようにお互いを思いやりながら最期を迎えます。

壮絶な巻ですね。
14巻までに登場してきた主役級の登場人物がことごとく銃弾に倒れていきます。生き残っているのはサンドロとペトラぐらいでしょうか。一期生である義体たちはジャコモを追い詰めるためにほとんど全滅に近い犠牲を払うことになります。凄絶なストーリー展開ですが、でも逆に、ここまでのストーリーの全てはここに辿り着くためにあったとも言えると思います。ここまでのストーリーがあったからこそこの凄絶な戦いが引き立つのでしょうね。最期の戦いで交錯するフラテッロたちの想い。本作序盤で見られた、どこかのどかさを感じさせる展開とはいい意味で対照的です。

義体たちを統括する「社会福祉公社」自体もテロリスト達との戦いを契機にして、武力による強制的な解体を迫られるようです。主要なメンバーがほぼ全滅し、母体となる公社も壊滅するのでしょうか。残されたペトラとサンドロのフラテッロはどうなるのでしょうか。クリスチアーノや残された主要な人物たちの動向も気になります。過去と現実が交錯する14巻の最後ではテロの犠牲となったジャンの妹であるエンリカの友人、ジュリアがジャコモに銃を向けますが、引き金を引くことはどうやらできなかったようです。ここで憎しみの連鎖は止まるのか、それとも新たな連鎖は始まってしまうのか。次巻も非常に楽しみです。

本作を通して読んでいて思うのですが、「不幸の上に成り立っているささやかな幸福」というものの描き方がうまいと感じます。両親・妹・婚約者を殺されたジョゼとジャンの兄弟と、生まれつき四肢が満足に動かせなかったり、一家殺人や人身売買の生き残りだったりする義体たち。彼・彼女達がそういった不幸な運命を背景に持ちながら公社の仕事を通して心を通わせていくのですが、その姿には常に不幸の影が付きまといます。その儚い幸福の描き方、背景に常に存在する不幸の残影。イタリアという地をバックグラウンドに、その圧倒的な不幸と儚い刹那的な幸せが絶妙のコントラストで描かれています。(幸せとか不幸とか言う言葉では簡単に表せないほどの幸せと不幸ですが…)繰り返しになりますが、このような背景があるからこそ、今、このジャコモとの戦いが引き立つのでしょうね。この戦いが終わったら物語りは終焉を迎えるのでしょうか?ペトラとサンドロを軸に、できれば続けて欲しいとも思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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