読書日記311:冷たい校舎の時は止まる(下) by辻村深月



タイトル:冷たい校舎の時は止まる(下)
作者:辻村深月
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
学園祭のあの日、死んでしまった同級生の名前を教えてくださいー。「俺たちはそんなに薄情だっただろうか?」なぜ「ホスト」は私たちを閉じ込めたのか。担任教師・榊はどこへ行ったのか。白い雪が降り積もる校舎にチャイムが鳴ったその時、止まったはずの時計が動き出した。薄れていった記憶、その理由は。第31回メフィスト賞受賞作。



感想--------------------------------------------------
先日紹介した「冷たい校舎の時は止まる」の下巻です。上巻も五百ページを越えていましたが、下巻も五百ページ強。読み応え十分の作品です。

雪がしんしんと降り積もる校舎に閉じ込められた八人。思い出せない自殺した同級生の名前、そしていなくなってしまった担任の榊—。いったいなにが起きているのか—。

上巻と変わらず、読んでいてどんどんと引き込まれていきます。雪の校舎に閉じ込められた八人の生徒、その舞台の設定が凄く雰囲気があっていいです。冷たく静かでしんとした雰囲気が物語全体から伝わってきます。

物語のところどこでに挟み込まれていく八人の過去。そしてその過去が八人の本当の姿を浮き彫りにし、各人が抱える心の闇をも露わにしていきます。毎日を笑顔で迎え、仲のよかった八人。その心の中の描き方が何と言っても本作の一番の特徴ですね。心理描写はもはやデビュー作のレベルを大きく越えています。ここまで描けるのだから、最近、直木賞に何度かノミネートされているのも頷けます。個人的には、下巻では物語のメインとなる深月や鷹野よりも明彦や景子、梨香の過去の方が読んでいて面白かったです。キャラクターがはっきりしているから、というのもあるかもしれませんね。

逆に一つ気になった点としては・・・登場人物がみんな頭が良すぎてかっこう良すぎる点ですかね・・・。何かエリートの集団みたいで、そこがちょっと人によっては嫌悪感を感じるかもしれません。東大とか京大を志望し現役で合格して行く人ばかり、しかもその人物たちの心情も美しすぎるばかりです。まあ、この著者は汚れたこと、曲がったことを書くことができない人らしいので、しょうがない気もしますが。

最終的に明らかにされる自殺した同級生の正体と、全ての謎。迎える結末は非常にすっきりしていて爽やかでした。1000ページを越える作品なのでどうなのだろうか、と思ってもいたのですが、最後まで飽きずに読むことができ、特に最後の方は一気読みをしてしまいましたね。読んでよかった。素直にそう思える作品です。

著者の辻村深月さんはこの作品を高校時代から書き始め、大学の四年間をかけて書き終えたそうですね。執筆期間は四年以上になるのでしょうか。それだけの思いが込められた作品なのでしょうね。メフィスト賞の受賞も当たり前でしょうし、辻村深月さんも西尾維新さんなどと同様に成功している作家さんと言って間違いないでしょう。「ツナグ」「水底フェスタ」「本日は大安なり」と文学賞の受賞作やドラマ化される作品が目白押しですね。これからが楽しみな作家さんです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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