読書日記306:青年のための読書クラブ by桜庭一樹
タイトル:青年のための読書クラブ
作者:桜庭一樹
出版元:新潮社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
伝統あるお嬢様学校「聖マリアナ学園」。転入生・烏丸紅子は中性的な美貌で一躍、学園のスターとなる。その裏には異端児たちの巣窟「読書クラブ」の部長で、容姿へのコンプレックスを抱えたニヒリスト妹尾アザミの、ロマンティックな詭計があった…。学園の創設から消滅までの百年間に起きた数々の事件の背後で活躍した歴代の「読書クラブ」員。その、あらぶる乙女魂のクロニクル。
感想--------------------------------------------------
直木賞作家、桜庭一樹さんの作品です。この方の作品は久しぶりに読みました。この方の作品の多くに共通する、「少女」をテーマとした扱った作品です。
山の手に居を構える伝統あるお嬢様学校:聖マリアナ学園。その学園には異端児達の巣窟である「読書クラブ」が存在した—。聖マリアナ学園とその読書クラブの百年の歴史を扱うクロニクル。
本作は「烏丸紅子恋愛事件」、「聖女マリアナ消失事件」、「奇妙な旅人」、「一番星」、「ハビトゥス&プラティーク」の全五編から成る連作短編集です。聖マリアナ学園を舞台に様々な時代の様々な少女達の学園生活の一部を描いています。各話の登場人物は微妙な繋がりを見せていますね。時代の流れとともに変遷していく少女たちの姿や世相の違いも感じられます。
描かれているのはどの作品でも共通して"少女"ですね。学園という閉ざされた空間で異性と接触することなく青春を謳歌する少女たち。その姿をこの著者に特有の芝居がかった表現で描いていきます。この描き方はこの著者独特ですね。作風としては「ブルースカイ」と「製鉄天使」を足して割ったようなイメージでしょうか。時代によって異なる少女達の姿が目に浮かびます。
物語は1969年、東大紛争の頃からスタートし、二十世紀初頭の聖女マリアナの話や最終的には2019年、聖マリアナ学園が百周年を迎えるときまで、読書クラブを中心に生徒会や演劇部との接触や、"王子"と呼ばれる男性役の女生徒の選挙など様々な行事についても描かれていきます。描かれているのは著者と同性の女性ばかり。その描き方はやはり男性の描く女性像とは大きく異なりますね。まだ子供ではありながら生々しい「女」がそこにはしっかりと描かれています。
終わり方もいいですし、解説も味があっていいのですが、若干、地味な印象の作品ですね。取り立てて大きな事件もないため、この方のファンの方にはお勧めですが、その他の方は他の桜庭一樹さんの作品を読まれた方がいいかな、とも思いました。個人的には現代を包む空気を「満たされたあきらめの空気」と表現している点がとても印象に残りました。この表現は的を得ていると感じます。こんな表現を使えるとはさすがに一流の作家さんです。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
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