読書日記287:氷菓 by米澤穂信
タイトル:氷菓
作者:米澤 穂信
出版元:角川書店
その他:
あらすじ----------------------------------------------
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実ー。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。
感想--------------------------------------------------
「追想五断章」や「インシテミル」の作者、米澤穂信さんのデビュー作が本書です。もう十年程前の作品ですね。本作で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビューしています。
神山高校に進学した折木奉太郎は姉の進めに従い古典部に入部した。千反田える、福部里志、伊原摩耶花といった個性的な古典部メンバーとともに、今日も日常の謎を解いていく—。
本作を読んで、ああ米澤穂信の原点はここか、と思いました。
私は「春期限定いちごタルト事件」に代表される小鳩くんと小山内さんの小市民シリーズから入ったのですが、本作も小市民シリーズに良く似ていますね。いや、本当は小市民シリーズがこちらに似ている、というべきでしょうか。高校を舞台として主人公が身の回りの小さな謎を解き明かしていくその筋自体は全く同じです。ただし、登場人物自体の個性は大分異なりますが。
解き明かしていく謎はそれこそ小さな謎ばかりです。しかし、最後にある一つの大きな謎、過去の古典部に纏わる隠された秘密に迫る謎を解き明かしていきます。ただ、本作は「小市民シリーズ」同様、謎解きよりも高校生活に重きを置かれていますね。ミステリよりも青春小説の色合いの方が強い作品だと感じました。
難点を挙げるとすると、まず謎自体が非常に小さくて些細なものである点が少し物足りなさを感じさせます。図書館から毎週必ず貸し出される本の謎とか…借主に聞いてみればいいんじゃない?とか思ってしまいます。(身も蓋も無いですが…)あとは主人公である奉太郎がどうも気に入りません。省エネをモットーとし、エネルギーを無駄に使うことには手を出さない…ポリシーとしては立派ですが、なんか実際にいたら嫌な奴かな、って思ってしまいます。しかも、その奉太郎が清楚な女子高生:千反田えるから頼られる、というストーリーは、うーん、男子向けの御都合的なストーリーだなあ、って思ってしまいました。実際にこんな男子高校生がいたらきっと女子には相手にされないだろうなあ、って思ってしまいます。
本作は「愚者のエンドロール」、「クドリャフカの順番」、「遠まわりする雛」、「ふたりの距離の概算」と続いていきます。あまり力は入れずに読めたら読もうかな、っていう感じですかね。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
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