読書日記282:プリンセス・トヨトミ by万城目学
タイトル:プリンセス・トヨトミ
作者:万城目 学
出版元:文藝春秋
その他:
あらすじ----------------------------------------------
このことは誰も知らないー四百年の長きにわたる歴史の封印を解いたのは、東京から来た会計検査院の調査官三人と大阪下町育ちの少年少女だった。秘密の扉が開くとき、大阪が全停止する!?万城目ワールド真骨頂、驚天動地のエンターテインメント、ついに始動。特別エッセイ「なんだ坂、こんな坂、ときどき大阪」も巻末収録。
感想--------------------------------------------------
喋る鹿が登場する「鹿男あおによし」や、子鬼を操って大学生同士が対戦する「鴨川ホルモー」といった奇想天外な設定で読者を毎回驚かせる万城目学さん。本作はその万城目学さんの作品で、直木賞候補にもなった作品です。本作は堤真一さん、綾瀬はるかさん、岡田将生さん、中井貴一さんといったキャストで映画化もされて公開もされていますね。
松平、旭、鳥居の三人の会計検査院の調査員は調査で大阪に向かった際に「社団法人OJO」という組織の調査をおこなうことになる。その組織には大きな秘密が隠されていた。一方で空堀中学校に通う大輔はある大きな決意を秘めていた—。
本作は全六章で構成され、各章が会計検査院と空堀中学校の二つの部に分かれています。最初は別々の話と進んでいくこの二つの話が、徐々に徐々にと一つに組み合わさっていきます。
登場人物は万城目作品らしく皆個性的です。完璧を絵に描いたような男:松平、超絶美貌と完璧な能力を持つ旭、ユーモアたっぷりの鳥居、と個性が際立った三人がそれぞれいい味を出しています。また中学生の二人、茶子に大輔も個性的な容姿と性格をしています。
物語の展開は万城目作品にしてはかなりシリアスに進んでいきます。徐々に明かされるOJOの正体、その裏に潜む大阪全土に隠された大きな謎、そして緊迫の対決—。物語自体はいいのですが、このシリアスな展開が私にはちょっと万城目作品に期待していたものと違って戸惑いました。隠された設定は非常に荒唐無稽で万城目作品らしいのですが、展開がどこまでもシリアスで、しかもページ数が多いため、少し退屈してしまう部分もありました。
中盤は少し退屈な展開が続くのですが、ラストの盛り上げ方はうまいです。この盛り上げ方はこれまでの作品と遜色ないできですね。荒唐無稽な設定の中にも感動を呼び起こす、これぞ万城目ワールドだと思いました。ただ、やはりこれまでの作品と比べるとユーモアというか、「なんじゃこりゃ」みたいなものが少なかったです。これは良くも悪くもですが。
細かい設定や細部の描写は本作では特に光っています。特に著者の生まれ故郷である大阪を舞台としているためでしょうか、舞台である大阪の描写は凄くいいです。大阪に馴染みのある人は読んでいて大きく頷くところが多いのではないでしょうか。
映画版の出来はどうでしょうね。キーとなる人物に堤真一さん、中井貴一さんという実力派の俳優さんを設定しているため、底堅い作品に仕上がっている印象は感じます。あとはラストのあの盛り上げ方をどのように映像化しているか、ですね。二百万人vs一人。この設定をうまく映像化できていればかなりの期待が持てます。
(また原作では旭が女性で鳥居が男ですが、この設定が入れ替わっていて旭を岡田さんが、鳥居を綾瀬さんが演じているようです)
万城目さんの著作は今、最新作「偉大なる、しゅららぼん
」も店頭に並んでいます。万城目ワールドはとどまることを知らなそうです。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
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