コミック日記64:乙嫁語り(3) by森薫
タイトル:乙嫁語り(3)
作者:森 薫
出版元:エンターブレイン
その他:
あらすじ----------------------------------------------
美しく幸薄きー第2の「乙嫁」、タラスの涙
エイホン家の居候イギリス人、ヘンリー・スミス。
彼は長らく滞在した土地をはなれ、カラザそしてアンカラへと旅に出かけた。
カラザでは珍しい外国人であるスミスは、町の人並みにもまれ、気がつくと、馬も、荷物も、盗まれてしまっていた!
そして、もう1名、愛馬を盗まれたのが第2の「乙嫁」タラスさん!
いま、スミスは運命の女性に出会う……!
中央アジアの生活文化を、丁寧な筆致で描き上げる、人気絶好調シリーズ第3巻!!
感想--------------------------------------------------
「乙嫁語り」の三巻が出ました。本作はまだたった二巻しか出ていないのに、マンガ大賞候補となり、一位の「3月のライオン」に続くマンガ大賞二位の座を獲得しています。これからが本当に楽しみな作品です。
カルルク、アミルの夫婦と別れたヘンリー・スミスはアンカラに向かう途中、カラザの街で運命の女性と出会う—。
一巻、二巻と同様、舞台となる十九世紀の西アジアの描写が見事です。食べ物、着る物、暮らし、文化、そういったものが物凄く精密にしっかりと描かれています。曖昧なところがほとんどなく、本当に見てきたかのように当時の人々の生活を描いています。相当に調査をされたのでしょうね。本当に頭が下がります。この精緻さは「ローマ人の物語」に通じるものがありますね。ただ、文章だけではなく絵で表現している分、こちらの方が大変かもしれませんね。ローマ帝国の栄えた時代と十九世紀では時代に大きな開きはありますが。
本巻で特に印象的だったのが屋台での食事の場面です。当時の料理をその作り方まで再現しているだけでも凄いのですが、描写が秀逸なのでとてもおいしそうに見えます。屋台で多くの人がそれぞれ材料を持ち寄って食べるこの場面を読んでいるだけで楽しくなりますね。
本作は時代背景の描写が凄まじいですが、それだけではありません。しっかりとした時代背景を基にした人間描写も素晴らしいです。本巻は少し悲しい終わりを見せますが、それでもどこかに優しさを感じさせます。これは厳しい土地、ちょっとしたことで争いごとが起こる状況で暮らす彼らに対する作者の優しさなのでしょうね。スミスとタラス、またいい形で再会してくれるといいです。
本作はイギリス人であるヘンリー・スミスが行く先々のお嫁さんの姿を描いていく作品です。アミル、パリヤ、タラスとこれまでにも多くの女性の生き方を描いてきていますが、これからはどんな女性の姿を描くのでしょうね。これからの展開も楽しみです。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
↓よかったらクリックにご協力お願いします
レビュープラス
この記事へのコメント