タイトル:ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵
作者:冲方 丁
出版元:角川書店
その他:
あらすじ----------------------------------------------
ひとつの戦いが終わり、つかの間の休息にひたるベル。戦友である弓瞳族のギネス、水族のベネットと夜通し馬鹿騒ぎ、王家の姫シェリーとは姉妹のように睦み合い、弧剣士アドニスを訪れては人生を語る。触れたもの全てを朽ちさせる宿命を持ったアドニスは、誰とも深く交わらず、世界への疑いが捨てられない。そんな彼とベルの間には、恋にも似た思いが通い始めるがー冲方丁がおくる傑作ハイ・ファンタジー、急転の第2巻!!
感想--------------------------------------------------
「ばいばい、アース」の二巻です。本作、文庫では全四巻です。前作は主人公のベル、孤高の剣士アドニスなど登場人物の紹介的な側面と、カタコームの戦いという大規模な戦闘に終始していました。本巻ではベルとアドニス二人の内面がより強く描かれています。
孤独でありながらも強き剣士であるベルとアドニスの二人はいつしか心を通わせていくが、アドニスは自分の生き様にますます何も見出せなくなっていく—
似たような境遇でありながらも正反対の道へと進んでいくベルとアドニス。読み進めていくと分かるのですが、常に生まれ続ける剣を持つベルと、常に枯れ続ける剣を持つアドニス、二人の激突は必至のようです。二人の生き様がどのように交錯するのか、そしてそれを見るとき読み手である我々は何を感じるのか、非常に興味のあるところでもあります。
相変わらず表現力、描写力、構成力、どれをとっても凄いですね。単純なファンタジーの領域などとうに超えています。ベルとアドニスそれぞれの内面描写の深さ、迫力のある戦闘シーン、独特な世界観、どれも秀逸です。
特に本作では二人の内面描写がうまいですね。何にも楽を見出せず、堕ちて行くアドニスと、ある事件をきっかけに抜け殻のようになってしまったベル。それぞれが求めるものは何なのか、何を欲して生きていくのか—。その根源的な欲求を見出すべく葛藤し慟哭するベルの姿は痛々しいまでです。
ファンタジーでありながら登場人物が生き生きと躍動し、悩み、苦しみ、その苦しみから抜け出そうともがいており、一流の小説のようです。前巻の紹介でも書きましたが、独特すぎる世界も違和感なく仕上げており、見せ場もたくさんあり、実に面白い、一流のエンターテイメント作品だと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
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