読書日記232:キング&クイーン by柳広司



タイトル:キング&クイーン
作者:柳 広司
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ある事件をきっかけに警察官を辞めた元SPの冬木安奈。六本木のバー「ダズン」で働いていた彼女に、行方をくらましていた元チェス世界王者の“天才”アンディ・ウォーカーの警護依頼が舞い込む。依頼者の宋蓮花は、「アメリカ合衆国大統領に狙われている」というが…。『ジョーカー・ゲーム』シリーズでブレイクの柳広司が満を持して放つ、絶品書き下ろし。


感想--------------------------------------------------
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ジョーカーゲーム」、「ダブルジョーカー」のヒットで一躍有名になった柳広司さんの作品です。「ジョーカーゲーム」、「ダブルジョーカー」がかなり面白かったので、期待して読みました。

ジョーカーシリーズとは趣を変えて、舞台は現代です。女性でありながら元SPの主人公安奈、チェスの世界チャンピオンであるアンディ・ウォーカー、さらに9/11テロなどいろいろな要素を交えながら物語は進展していきます。アンディが何故狙われるのか、狙うのは誰か、過去と現代が交錯しながら謎は次第に深くなっていきます。

本作を読んでの感想ですが、残念ながらジョーカーシリーズには遠く及ばないですね……。色々な要素が詰め込まれていますがそのどれもがよく練りこまれておらず、深くないです。色々な要素を並べることで目移りしては行くのですが、それだけですね。主人公のSPとしての過去、アンディのチェスの世界チャンピオンとしての生き様など、どれか一つでももっともっと深く掘り下げられていればまだ面白かったのですが、残念ながらそれもありません。

また、登場人物にもほとんど共感を覚えられません。特にチェスの世界チャンピオンのアンディはわがままで気難しく、むしろ嫌な人間としか捕らえられません。脇役のリコやバーのマスター、バーの客のヒロさんなどの言葉もいかにも棒読みだったり、説明文を読んでいるようで、本当に面白くない。リアルな人間が喋っているように聞こえてきませんね。これが本当にジョーカーシリーズと同じ作者の書いた本なのか?と疑いたくなるほどのできです。

チェスに関する薀蓄や、チェスの世界の厳しさ、チェスのチャンピオンがどれだけ変人ぞろいかといったこともいろいろと書かれていますが、あまりチェスについて好意的とはいい難い書き方をしています。チェスの世界を描いた作品としては、ここでも紹介した小川洋子さんの「猫を抱いて象と泳ぐ」があります。チェスの名手リトル・アリョーヒンの生き様を書いた名作ですので、チェスに興味のある方はむしろこちらを読まれた方がいいかと思います。

本作は本当に残念な出来ですね……。講談社100周年記念の本の一作だそうですが、それに間に合わせるために、未完成のまま出したのでしょうかね?次回作こそ、ジョーカーシリーズを上回るような出来の作品を期待したいと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C


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