2010年09月08日

読書日記225:パークライフ by吉田修一



タイトル:パーク・ライフ
作者:吉田修一
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。


感想--------------------------------------------------
吉田修一さんの作品です。本作は芥川賞を受賞した表題作「パークライフ」と「flowers」の二作から成ります。「パレード」、「悪人」が私的に素晴らしかったので本作も読んでみました。

日比谷公園に通う主人公はふとしたことから同じように公園に通う女性と話をするようになる−。

表題作の「パークライフ」は日比谷公園に通う男の日常を描いた作品です。
ふとしたきっかけで会話をするようになった日比谷公園に通う女性、結婚することになった片想いしていた女性、家にやってきた母親。彼ら、彼女らとの微妙な距離感と、その日常の些細な変化を日比谷公園という舞台を用いて巧みに描いています。この描き方は絶妙です。これはおそらく吉田修一さんにしかできないでしょうね。

吉田修一さんの作品を読んでいて特に最近感じるのですが、この方の作品は文章それ自体が素晴らしいですね。筋書きや登場人物の設定ではなく、文章自体の質が非常に高いため、文章を読んでいるだけで作品に引き込まれていきます。一文一文が割りと長めで段落の切れ目もなく続いていくのに、文章を読んでいて違和感を感じさせません。日比谷公園に通う主人公の日常を描いた「パークライフ」と不思議な男、望月元旦に振り回される配送業の男を描いた「flowers」。どちらも凡庸な書き手では作品にさえならないような些細な出来事なのに、吉田修一さんの手にかかると凄い作品に仕上がります。

「作品に凄みがある」
これも吉田修一さんの作品を読んでいて感じることです。「flowers」、「パレード」、「悪人」。これらの作品では特にそれを感じます。文章表現それ自体が素晴らしい上に、物語の印象を根底から引っ繰り返すような仕組みがこれらの作品、特に「flowers」と「パレード」には仕掛けられていて、読み手に戦慄を感じさせます。作品に文章に、迫力があります。

 いったいどうやったらこんな文章が書けるのでしょうね。吉田修一さんの作品を読んでいると、フィクションのはずの小説なのに、まるで実際に自分が体験しているようなリアルさを感じます。そしてその表現があまりにもリアルなため、表現自体が形を、色を持って目の前に浮かんできます。特に「flowers」の終わり近くのクライマックスの場面は凄いですね。舞い散る花びらの色が鮮やかに眼に浮かんできました。この表現力は凄いですね。リアルであり迫力があり、凄みがある−。作品が面白いわけですね。

 吉田修一さんは最近、私の中で一押しの作家さんです。先日、近くの本屋に行ったら吉田修一さんの本のフェアをやっていました。9/11から「悪人」が映画で公開されますし、今、最も面白い作家さんの一人だと思いました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 22:47| Comment(0) | TrackBack(2) | 吉田修一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「パーク・ライフ」 吉田 修一
Excerpt: 2002年出版。芥川賞受賞作。 読書が億劫になっていたので、手持ちの読めそうな短めな小説でもと思い手持ちから拾って読んだ。 何かが起こるか起こらないか、微妙なところを書いているだろう表題作は、普通..
Weblog: しぇんて的風来坊ブログ
Tracked: 2010-09-09 00:44

『パーク・ライフ』
Excerpt: 吉田修一 『パーク・ライフ』(文春文庫)、読了。 井上ひさしの反動で、薄い本をば。 お初の作家さんです。 Amazonのレビューでは評価が低...
Weblog: 観・読・聴・験 備忘録
Tracked: 2010-09-22 00:48