読書日記214:ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想” byマルコム・グラッドウェル
タイトル:ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想”
作者:マルコム・グラッドウェル
邦訳:勝間和代
出版元:講談社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
本書のテーマは「Minor Genius」。
一見小さな世界で、世界を変えるほどの大きな仕事をした人々の物語です。
昨年のベストセラー『天才! 成功する人々の法則』でおなじみ、“アイデアの魔術師”ことマルコム・グラッドウェル。
『ニューヨーカー』誌掲載の歴史的名コラム6本を収録。
「グラッドウェル×勝間和代」のスーパー・プロジェクト第二弾!
感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。
今回は本として出版される前の原稿の状態で提供いただきました。こんな状態で作品が読めることは普通はないのではないでしょうか?ご提供いただいたのは作品全体の半分ちょっとの分量でしたが、いつもの読書とは違った雰囲気で楽しく読むことができました。ちなみに評価も読んだところまでの評価になります。
「ケチャップの謎―世界を変えた”ちょっとした発想”」。おもしろいタイトルですね。一昔前にベストセラーになった「チーズはどこへ消えた?」を思い出します。著者はマルコム・グラッドウェルという知らない人ですが、勝間和代さんが邦訳されています。「カツマー」という言葉まで生み出すほどの著名な人です。
最初に書いてしまいますが、本書は普通のビジネス書ではありません。「はじめに」で著者も書いていますが、本作でテーマにしているのはいろいろな分野で特出した成果を出した人物の見方や考え方を、その人物の生い立ちや普段の生活、仕事の仕方といったものを通して理解していくことです。「あのような偉大な仕事をした人はどのような考え方をして、どのような価値観を持っているのか」。これを理解することは確かに世界を変える発想の引き出し方を学ぶことに通じるかとも思います。
本作では三つのケースでその流れを説明しています。まず初めが「TVショッピングの王様」としてキッチン用品を売りまくったロン・ポピール。その次がタイトルにもなっているハインツのトマトケチャップ、そして三番目がナシーム・タレブというトレーダーです。
当然のことながら、私は三人のうちの誰も知りません。メジャーな成功者ではなく、マイナーな世界の成功者をあえて選んだ理由は、その方が人間らしい面をしっかりと描けるからでしょうか?しかし、最初の二ケースはあまりにもアメリカ的な話のため、なかなか理解しにくいかったですね。(アメリカのキッチン周りの様子は日本とだいぶ違うようです。)ただ、三番目のケース、ナシーム・タレブの話は知らない人ながらも理解し易かったですので、この話を中心に書きたいと思います。
ナシーム・タレブの率いる投資会社エンピリカ・キャピタルはオプション取引の、特に買いを専門に行なう投資機関です。詳細な説明は省きますが、これは通常は僅かずつ損を出し続けますが、市場が高騰するなどの特殊な状況で大儲けをする可能性がある、というものです。つまり毎日僅かずつ損を出し続けながら、市場が高騰するというわずかな確率の大きな勝ちに賭け続ける、というものです。これは普通の人間の心理とは逆で、滅多にとらない方法だそうですね。普通の人間は僅かなリスクには眼をつむり、毎日僅かずつでも利益を得る方を選択するそうです。
なぜ、タレブは普通の人が行なうことと逆の手法を選んだのか?その背景として、ナシーム・タレブという人物がどのような人間か?といった説明を読むことで、どうしてそのようなオプション取引を始めるようになったのかが分かります。
株で大儲けした人のほとんどは、実はただ運がよかっただけではないのか?そんな疑念がタレブには市場は理解し難いもの、人の予想を裏切って動くものという認識を与え、結果として、毎日少しずつ損は出すけれども、大きな負けを引くことは絶対にない、このような手法を選んだそうです。この手法はリスクは少ないですが、非常に忍耐を強いられますね。いつの日か大当たりすることを夢見て、毎日毎日少しずつ自分の資産が削られていくのを座して眺めているしかないのですから。ただ、最後にはタレブはその僅かな可能性を引いて大きな勝ちを手にしたそうです。また自身がかかる人の少ない咽頭ガンにかかったこともその一つの理由だそうです。「人生、何が起こるかわからない」ということで、リスクを常に考える人だということが伺えます。
この例のように、本書を読んで分かるのは、「ある画期的な方法を最初に始めた人はどのような人だったのか、どのような資質が、家系が、性格が、その成功を導いたのか」ということです。理論や教訓よりも生々しい、成功者の素顔が垣間見れる珍しい書籍かと思いました。
このタレブの例が最も顕著だと思うのですが、このような世界を変えた“ちょっとした発想”を思いついた人は、思いつくべくして思いついたのではないか、というのが私の考えです。その人の人生的な背景や性格、そういったものが後押しをして導かれるようにその発想を思いついた、と、三つの例を通して強く感じました。あと一つ付け加えるとしたら、「それが心底好きだ」ということでしょうか。例えば最初の例でロン・ポピールは常に自分の会社の製品を試作していたようですね。優秀な頭脳ももちろん必要ですが、それ以上に性格や嗜好、そのことに賭ける執念といったものの占める割合の方が高いのではないかと思います。
結論として「世界を変えた“ちょっとした発想”は、それを思いついた個人の人格や人生経験に基づいて生まれるべくして生まれたのだ」といったら格好良すぎでしょうか。ただ、三つの例どれを見ても、「発想を生むべく努力した」という跡は微塵も見られません。
最初にも書きましたが、今回は提供いただいた三つの例について記された部分を読んだだけですので、やはりちょっと物足りないです。「はじめに」を読むとこれは全体で三部構成になっている中のまだ第一部の途中だそうです。おそらく二部、三部で一部で紹介した各例の分析が行われていくのかな、と思っています、もし本書を全部読む機会が得られたならば、また全体を通しての感想を書いてみたいと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
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レビュープラス
この記事へのコメント
タカダヨシヒコ
私もこの本献本していただきました♪
人物をつかんでいくのが大変でした。
実は今回コメントさせていただいたのはアンケートにご協力いただきたいからなんです。
現在私のブログにて「勝間和代の目的は?」というテーマでアンケートを集計中なんです。
最近の勝間さんの著書には酷評が多いと思います。
しかし、勝間さんはそれら酷評で書かれているような人には思えないんです。
なのでこのようなアンケートを利用し、皆さんの意見を聞いてみようと思った次第です。
いきなりこんなコメントをしまして全く失礼だとは思いますが、ご協力お願いできたらなあと思っております。
URLはこちらです。
http://osusume-business.livedoor.biz/archives/51740662.html
よろしくおねがいします。