読書日記203:背の眼 by道尾秀介



タイトル:背の眼
作者:道尾 秀介
出版元:幻冬舎
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「レエ、オグロアラダ、ロゴ…」ホラー作家の道尾が、旅先の白峠村の河原で耳にした無気味な声。その言葉の真の意味に気づいた道尾は東京に逃げ戻り、「霊現象探求所」を構える友人・真備のもとを訪れた。そこで見たのは、被写体の背中に二つの眼が写る4枚の心霊写真だった。しかも、すべてが白峠村周辺で撮影され、後に彼らは全員が自殺しているという。道尾は真相を求めて、真備と助手の北見とともに再び白峠村に向かうが…。未解決の児童連続失踪事件。自殺者の背中に現れた眼。白峠村に伝わる「天狗伝説」。血塗られた過去に根差した、悲愴な事件の真実とは?第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。


感想--------------------------------------------------
いまや押しも押されぬ売れっ子作家、道尾秀介さんの作品です。道尾さんは本作で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞されています。道尾さんの作品は本ブログでも「向日葵の咲かない夏」と「片眼の猿」を紹介しています。

ホラー作家の道尾は白峠村の河原で耳にした不気味な声の真実を探りに、霊探求家の真備とその助手の北見とともに再び白峠村を訪れるー。

本作、読み終えての感想ですが、非常によく作り込まれているな、という点が印象に残りました。白峠村に残る伝承「天狗伝説」、未解決の少年の失踪事件、真備の過去や旅館の亭主の過去も含めて、全てが最後には一つにつながっていくストーリー構成の上手さはさすがです。またストーリーの途中で随所に見られる霊に関する蘊蓄や、天狗伝説、白という字の成り立ちなど、よく調べられているなあ、と驚きを覚えました。

ただ、不満点としては、これは巻末の選評にも書かれていましたが、非常に話が冗長な気がしました。おそらく、出版されているのでこれでもそうとう削られているのだと思いますが、それでも冗長な気がします。そしてストーリーが冗長なため、「畳み掛けるような怖さ」というのが本作にはあまり感じられませんでした。最初のうち、道尾が一人で活動している段階ではまだそれも感じられたのですが、真備が出てきてからはあまり感じられなくなりましたね。

あと、この真備というキャラクターが本作で探偵のような役回りを演じるのですが、非常に頭が切れるためホラーでありながら真備が出てくるだけで情景に「安心感」が感じられてしまいます。「ああ、真備がいるから大丈夫だろ」みたいな。そのため、やはりホラーでありながらあまり怖くなくなってしまいます。真備はもっと地味な活躍でも良かった気がしますね。道尾と北見をもっと前面に出すと、怖さが引き立った気がします。

あと少しネタバレになりますが、北見と途中に出てくる子供の主要人物が人間離れした能力を持っています。これもちょっとどうかな?と感じました。物語を進める上で、最後の最後をうまくまとめる上で、必要な能力とは思うのですが、物語が破綻しかねない能力の為、「どうなの?」というところです。

ただ、物凄く力を込めて、丁寧にまとめた作品であることは疑いありません。道尾作品の原点とも言える作品ですかね。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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