コミック日記44:GUNSLINGER GIRL12 by相田 裕



タイトル:GUNSLINGER GIRL 12
作者:相田 裕
出版元:アスキー・メディアワークス
その他:

あらすじ----------------------------------------------
軍人の道を歩む二人の兄。
将来に思い悩む妹。
兄の婚約者との関係・・・。
そして訪れる永遠の別れ。
『おねがい。ジャコモ=ダンテを殺して』
クローチェ事件ー憎悪と哀しみの原点を綴る第12巻!


感想--------------------------------------------------
GUNSLINGER GIRLの12巻です。この作品はこれまでそんなに面白さを感じていなかったのですが、11巻から格段に面白くなってきました。

両親と妹、婚約者をテロで殺されたジョゼとジャンの兄弟は義体と呼ばれる超人的な能力を持つ少女と共にテロの首謀者、ジャコモ・ダンテに復讐を誓う―

11巻から物語の根幹であるテロ、「クローチェ事件」の真相に迫る話に突入しました。このことにより物語が重みを増し、ますます面白くなってきました。
 ミラノ地検の検事であるジョバンニと企業内弁護士である妻カーラの間に生まれたジョゼとジャンとエンリカの兄弟。年の離れた妹エンリカのことを気にかけつつも軍警察で上を目指すジャンとジョゼ。そしてジャンに一目惚れし、ジャンの婚約者としてエンリカとなんとか仲良くやっていこうとするソフィア。いろいろと瑣末な問題を抱えつつも幸せだった一家は、道路に仕掛けられたジョバンニをターゲットとした爆弾により悲惨な最後を迎えます。通称「クローチェ事件」と呼ばれるこのテロでジョバンニ、カーラ、エンリカ、ソフィアを失ったジョゼとジャンはテロの首謀者ジャコモ・ダンテに復讐を誓います。

11巻でとうとうジャコモ・ダンテが登場し、12巻でクローチェ事件の真相が明らかにされていきます。このクローチェ事件の描き方がうまいですね。事件につながるまでの日常がとても幸せそうに描かれており、逆にその幸せが深ければ深いほど事件の凶悪さが浮き彫りにされていき、ジャンとジョゼの悲しみ、苦悩が深くなっていきます。そして事件の最後は1巻の最初につながっていくのですが、真相を知った後にもう一度1巻を読み返すと、その読み方も変わってきますね。

本巻の最後ではクリスティアーノが再登場します。社会福祉公社に殺されたはずの彼は全身が動かなくなっても復讐を糧にジャコモ・ダンテに資金を提供し、社会福祉公社の抹殺を依頼します。このクリスティアーノが私は結構好きです。身内であるフランコ、フランカ、ピノッキオを公社に殺された彼もまた、ジャンとジョゼと同じように復讐を胸に生きる立場にあるからです。

どこまでも終わらない復讐の連鎖。この連鎖を断ち切ることはできるのでしょうか?次巻からいよいよ本格的にジャンとジョゼの公社とジャコモ・ダンテの五共和国派の最終戦が始まりますね。11巻でも戦闘シーンが展開されましたが、これまでの戦闘とは違い、味方にも多数の犠牲者が出る壮絶な戦闘になってきています。きっとこの先も多数の犠牲を伴う戦闘が展開されるのでしょうね。いよいよクライマックスに向けて物語が動き出した、という感じです。

本作は1巻から10巻までは義体の少女たちの視点で物語が進行することが多かったかと思います。どうもその点が狙いすぎているなあ、という感じがして私は最初、あまり本作を好きになれませんでした。本作の根幹は主人公であるジョゼとジャンの復讐劇と、その復讐の連鎖を二人がどう乗り越えていくかだと思います。なので、もっとこの二人(+ヒルシャーやロベルタ検事)の人間や復讐劇+その復讐劇に翻弄される義体たち、といった切り口で物語を展開していると、もっともっとおもしろかったのでは?と思います。あと、表紙もですね。女の子の表紙絵はあまり好きではないです・・・。もっと物語は硬派なのだから、普通でいいのに、と思っていました。私は11巻の憎しみに顔が歪んだジャンのような、人の心の奥底が見えるような表紙の方が好きです。

次巻も楽しみにしています。あと、個人的にはフランコ、フランカ、ピノッキオの話は好きでした。彼らの話はそのうち番外編ででもまた読みたいですね。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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GUNSLINGER GIRL 12巻
Excerpt: 相田裕「GUNSLINGER GIRL」12巻が発売されまして、ちょくちょく読み返したりしてます。 今回の内容って、 言うなればもう既に結果が分かっている事象を描く内容だった訳で ともすれば衝撃..
Weblog: 超進化アンチテーゼ
Tracked: 2010-05-13 07:13