タイトル:製鉄天使
作者:桜庭 一樹
出版元:東京創元社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
辺境の地、東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操るという不思議な能力を持っていた。荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース“製鉄天使”の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出すーあたしら暴走女愚連隊は、走ることでしか命の花、燃やせねぇ!中国地方にその名を轟かせた伝説の少女の、唖然呆然の一代記。里程標的傑作『赤朽葉家の伝説』から三年、遂に全貌を現した仰天の快作。一九八×年、灼熱の魂が駆け抜ける。
感想--------------------------------------------------
直木賞作家:桜庭一樹さんの代表作「赤朽葉家の伝説」。本作は赤朽葉家の三代の女性の生き様を描いたこの作品のスピンオフ的な作品で、赤朽葉家の二代目、赤朽葉家毛鞠を主人公としたお話です。(本作では赤緑豆小豆という名前になっています。)ですので「赤朽葉家の伝説」をあらかじめ読んでおくととても話がよく分かります。
本作、童話のようなお伽噺のような作品ですね。女子暴走族「製鉄天使」を率いる無敵の女総長:赤緑豆小豆が少女から大人の女性になっていくまでを描いた作品です。桜庭一樹さんは少女が大人の女になっていく過程を多くの作品で描いていますね。「少女には向かない職業」、「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」、「荒野」などなど桜庭一樹さんの小説のメインテーマと言っていいかと思います。
本作では中学入学と同時に暴走族「製鉄天使」を小豆が立ち上げるところから話が始まります。「今日が楽しければ明日死んでもかまわない」そう言ってハイウェイをひたすら走り抜ける小豆とその友人:すみれ。物語はこの二人を中心として展開されて行きますが、ある出来事をきっかけとして小豆は子供から大人へと成長して行きます。
いつまでも楽しいことだけが続く「永遠の国」。本作では青春時代の最高の一時をそんな言葉で表現しています。これは凄くよく分かります。誰しもが青春時代に「こんな一瞬が永遠に続けばいいのに」って感じたことがあるのではないでしょうか。
本作も桜庭一樹さんの他の作品と同様に青春時代から大人への成長を描いた作品ですが、いかんせん主人公が島根の女子暴走族の総長という特異な設定であることもあいまって、なかなか感情移入しにくい人が多いのではないかと思います。私的には少女から大人の女性への成長を描いた作品としては「荒野」の方が面白かったかな、と思いました。
本作は桜庭一樹さんのファン、もしくは「赤朽葉家の伝説」を既に読まれている方向けの本ですね。私はそれなりに楽しく読めました。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
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