読書日記183:クーリエジャポン3月号



タイトル:COURRiER Japon ( クーリエ ジャポン ) 2010年 03月号
作者:
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
~オバマ大統領就任から1年~
堤未果 責任編集 「貧困大国」の真実

“暗黒の8年”と呼ばれたブッシュ政権が終わり、オバマ大統領が就任したことで、アメリカは「貧困大国」から生まれ変わったのか? ベストセラー「ルポ 貧困大国アメリカ」の著者と読み解く、オバマ政権下のアメリカ。


感想--------------------------------------------------
自由の国アメリカ。
政治・経済・技術・芸術といったあらゆる分野で世界を牽引する超大国であり、人種を問わず誰にでもチャンスが与えられ、"アメリカンドリーム"を掴もうと世界から人の集まる平等の国。
 私が最後にアメリカを訪れたのはもう数年前、まだブッシュ大統領の頃になりますが、西海岸の刺すような陽光の下で私の感じたアメリカの印象は、いわばありきたりな、上に書いたようなものでした。

 今月号のクーリエジャポンの特集のタイトルは「貧困大国(アメリカ)の真実」。何百兆円という負債を抱える日本ならまだしも、なぜアメリカが貧困大国なのか?アメリカを訪れた当時の私の印象からも大きく外れたタイトルのため、まずは表紙のこのタイトルに惹き付けられます。
 そしてぱらぱらとページをめくって目次を見てみると、私が毎号楽しみにしている記事「世界が見たNIPPON」の、特に赤字の「NIPPON」の字が目に入りました。今号からは特にこの二つの記事を取り上げて読み比べながら「アメリカ」と「NIPPON」の共通点・違い・それぞれが抱える問題点などについて考えてみました。

<貧困大国(アメリカ)の真実>
 まずは「貧困大国(アメリカ)の真実」です。この特集では医療や教育といった切り口からアメリカ経済が抱える問題について、現場の目線で語っています。この特集で私が特に驚いたのは「フードスタンプ」という食料配給制度を利用しているアメリカ人が過去に類を見ないほど増えているということと、刑務所がビジネスの場としてなりたっている、ということです。

 「食料配給制度」というと戦時中の日本で行われていた制度だし、まさか世界一の大国アメリカでその制度が現在も使われているなんて思いもよりませんでした。しかもここ数年、経済悪化による失業率の増加に伴い受給者は増加しているそうです。アメリカ経済がそこまでひどいことになっているとは知りませんでした。働く意欲はあるのに働き場がなく食料配給を受けざるを得ないー自分の身に起きたとして考えてみると、受給者はおそらく金銭的な面以上に、誇りや自尊心といったものを深く傷つけられるのではないかと思います。
 「刑務所ビジネス」というのは刑務所内の受刑者を安価な働き手として利用することです。東南アジアよりも安価な労働力としてアメリカでは注目されているらしいです。さらにアメリカでは刑務所の入所時に手数料として多額の借金を負わされるため、出所しても借金のためにまた犯罪を犯し、結局また刑務所ビジネスの働き手として戻ってくることになるそうです。
 囚人でもなんでも、使える物は全て徹底して資本主義の枠組みの中に取り入れて使おうとする・・・なんか発想がとてもアメリカらしくてつい笑ってしまいそうになりました。でもこれって昔の奴隷制度とほとんど変わらないですよね。貧困のために犯罪を犯し、さらに借金を背負いまた犯罪を重ねて行く・・・。ひどい話です。行き過ぎた資本主義の例だと思います。


<世界が見たNIPPON>
 次に「世界が見たNIPPON」です。いくつかの記事の中でも特に、かつて無い不況に襲われカプセルホテルで住民登録する東京の"隠れホームレス"を取り上げた記事と、日本経済の「ガラパゴス症候群」を取り上げた記事、「海外進出できない日本ファッションを取り上げた記事の三つが目を引きました。

 「日本は非常に高い技術と品質を持っているのにビジネスモデルの作り方が下手なため海外で競争できない」ー本誌の記事からの抜粋です。これはこれまで主に製造業で言われてきたことですが、ファッション業界も同様で、非常に高い品質があるのに海外進出のノウハウが無いため結局海外ブランドに真似をされるだけで終わってしまっているそうです。
 海外に誇れる高い技術・品質を持ちながらも内に籠ってしまい世界市場に進出できず、結果としてカプセルホテルで暮らさなければならないような人が増えていくー。なんかもったいないというか、残念な話です。

<二つの記事を通して>
 公的資金の注入により大手金融機関が息を吹き返そうとしている一方で、医療、教育はおろか満足に食べることさえできない人たちも増えているアメリカと、過去の栄光に引きずられて限られた国内市場でのみ競争を繰り広げていつまでも外に出て行けずに下降を辿る日本。
 今月号を読んでいて思ったのですが、もしオバマ大統領や鳩山首相が他の首相に変わったとしても両国のこの大きな流れは変わらないのではないか?と感じました。オバマ大統領も鳩山首相も、過去の大統領、首相と比較しても遜色ないか、むしろ優れていると私は思います。きっと問題はもっと奥深く、特集の最後に堤未果さんが言っているような両国の「政治と業界の癒着」にあるのだと思います。この癒着が原因でアメリカでは一部の金融機関にだけお金が集中して国民に金が流れず、日本では昔と変わらず既得権益層に金が流れて新しいことに取り組めていないように感じます。


 これを解決するにはどうすればいいのでしょうね・・・。「政治と業界の癒着」って普通にどの国でもありますし、逆に「政治と業界が癒着していない国」があったとしたらその方が不気味な気がします。要は程度の問題なのかもしれませんね。アメリカや日本は政治が一部の業界団体の利益実現に走りすぎているのかもしれません。我々国民を置き去りにして。
 「真実」こそが最大の武器になるー
 ーこれも堤未果さんの記事の言葉です。この言葉は、確かにその通りだと思うのですが、目の前で食べる物がなくて、医療が届かなくて死に瀕している人がいるのに、そんな悠長でいいの?とも思ってしまいます。ちょっと具体的ではなくてきれいすぎる言葉に感じてしまいますが、他に何ができるかと聞かれると答えに困ってしまいます。

 私なりに考えた結論ですが、トップが誰になろうが結局のところ政治も産業も全て利権、要はカネが絡むのはしょうがないかとは思います。ただそれが行き過ぎると間違った方向に進んでしまう気がします。要は既存の業界と政治の癒着システムを上回るシステムが、カネの関与無しでコミュニティとして広がればいいわけで、そういう意味では老若男女、貧富の差がなく誰もが平等で、自発的な意志を持って参加して即時性の高い、このブログやSNS、TwitterといったITの世界は一つの可能性ではあるかな、と感じました。

 ネットの世界では参加にお金がいりませんし、国の違いも人種の違いも関係ありませんし、誰でも同じ立場で自由に参加して意見を言うことができて、あらゆる情報が詰まっています。例えば本誌では大学教育に莫大なお金がかかり一般人がなかなか入学できない、もしくは奨学金のために莫大な借金を抱えることになると書かれていましたが、もし入れないのであれば、ネット上で全ての知をオープンにし、望む人間の誰もが大学に通うのと同等の教育が受けられるようになり、それを社会が認知できるようになっていけば、だいぶ変わってくるのかもしれないと思いました。ここでも紹介した「Web2.0」に書かれていましたが、MITなどでは既にこのような試みが始まっているようですね。MITのカリキュラムの中身を公開して誰もが同等の教材を使えるようにしているようです。
 ・・・医療や政治に関しても何かいい方法はないかと考えますが、、、思いつきませんでした。まあ、このあたりが限界かもしれませんね。
 
 今号もレビュープラス様に献本いただきました。クーリエジャポンを始めとして毎回レビュープラス様には刺激になる素晴らしい書籍・DVDを提供いただいています。この場を借りて感謝いたします。
 1月から12月までのクーリエジャポンの背表紙を合わせると世界地図になるのですが、今号でアフリカを越えてロシアに入りました。地図を完成させるまで集めてみようかな?次号も楽しみにしています。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S

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