タイトル:イノセント・ゲリラの祝祭
作者:海堂 尊
出版元:宝島社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
東城大学医学部付属病院不定愁訴外来の責任者で、万年講師の田口公平は、いつものように高階病院長からの呼び出しを受けていた。高階病院長の"ささやかな"お願いは、厚生労働省からの講演依頼。依頼主は、厚生労働省役人にてロジカル・モンスター、白鳥圭輔。名指しされた田口は嫌々ながら、東京に上陸することを了承した。行き先は白鳥の本丸・医療事故調査委員会。さまざまな思惑が飛び交う会議に出席した田口は、グズグズの医療行政の現実を知ることに・・・・。
感想--------------------------------------------------
海堂尊さんのチーム・バチスタシリーズの第四作目です。「チーム・バチスタの栄光
厚生労働省の「医療事故調査委員会創設検討会」に参加することになった万年講師の田口。田口はそこで、解剖至上主義者、法医学者、厚生労働省、各者の既得権益ばかりが優先され現場の声が無視されるグズグズの医療行政の現場を知る・・・。
本作もやはり「チーム・バチスタの栄光」の流れを汲んでいますね。個性的な登場人物、読者を引き込むテンポが良く、ユーモアに溢れた会話構成、こういった点はさすがに手慣れているな、と感じます。また本作の随所で海堂尊さんの「螺鈿迷宮
本作の主な現場は厚生労働省の会議室です。茶番のような会議の中で各人が各人の利益と立場を守る為に現場の声を無視し続けます。異状死解剖の現場に画像診断を取り入れれば格段に異状死の救命は進むー。こういった一見簡単そうに見える意見も、解剖にこだわり続ける解剖至上主義者や導入費用の拠出を拒む厚生労働省、医療行政と癒着した法医学者によって骨抜きにされて行きます。
この会議のやり取りは個人的には非常に面白いと思うのですが、専門用語の並ぶ会話のロジックを全て追い続けなければならないため、読むのは結構大変ですね。またこれまでの作品と違って本作では医療現場の描写がほとんど出てきません。ここが少し残念だと思いました。異状死画像診断の重要性は「チーム・バチスタの栄光」で明らかとなっていますが、本作でも前段でその重要性をうたう事件を描いていれば、後半の会議の場面がもっと生きてきたのではないかと思います。
また本作の最後で大暴れする人がいるのですが、この人の言葉は本作の作者、海堂尊さんの言葉そのものだと思いました。(余談ですが、この人は「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水に似ていますね。)逆に言うと、この言葉をぶつけたいが為に、海堂尊さんは本作を書き上げたのではないでしょうか。本作はサスペンスではなく、医療行政の問題を糾弾する為の作品と位置づける方がいい気がします。ただ、いかんせん、言い過ぎな気がしますね・・・。本作を読んだ関係者は気分を害するのではないでしょうか。ご本人も名誉毀損で裁判沙汰に巻き込まれていますし、いろいろと大変そうです。
あと感じたのはやはり厚生労働省も企業とあまり変わらない印象を受けました。「いろいろな意見を聞いて、ぐちゃぐちゃにしてしっちゃかめっちゃかにして、どうにもならなくなったところで、あらかじめ用意されていた結果をポンと放り込む」。本作で白鳥が厚生労働省のお得意と言っている会議の方法です。
・・・いろいろな人の意見を聞いた挙げ句に収集がつかなくなって結果も出ずに雲散霧消することが常の社内会議に置いて、まあ、まだ結果が出るだけましなのでは?と会社人の私などは思ってしまいます。やはり企業も省庁も会議では何も決まらず実際に動かして行くのは一部の人間であることに変わりはないようです。
いろいろ書きましたが、医療現場の問題を声高に糾弾している本作はかなり面白く読むことが出来ました。ただ、医療現場の描写が無く、見せ場も全て会議室なので、そこが少し万人受けはしにくいかと思います。最後に、本書の主張である「国家は滅びても、医療は滅びない」の言葉には共感を覚えました。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
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タグ:海堂尊 イノセント・ゲリラの祝祭

