読書日記158:1Q84 Book1 by村上春樹



タイトル:1Q84 BOOK 1
作者:村上春樹
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。
そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。

感想--------------------------------------------------
 もう説明の無いほど有名な、今年最も売れている作品です。この不況の中、100万部を突破しているそうですね。本作はBook1とBook2の二冊に別れていますので、二回に分けて紹介します。今回はBook1です。

 マーシャルアーツのインストラクター青豆は自分の生きる"1984"年が、実際の"1984"年とは微妙に異なる"1Q84"年であることを知る。現実と非現実の世界の境界を生きる青豆と天吾。二人の世界は交わるのか・・・?

 本作は"青豆"を主人公とした奇数章と"天吾"を主人公とした偶数章から構成されます。読んですぐに村上春樹さんの作品だな、と分かる作品ですね。相変わらず不思議な世界が描かれていて、その意味の多くを読者の想像力で補う必要があるのですが、密度が濃く、いつの間にか引き込まれて行きます。

 読み始めたとき、この作品はどこに向かうのだろう?と少し不安に感じられました。行き先の見えない物語にページを繰る指も進まず、正直少し不安でした。でも徐々に徐々に話が進むに連れてどんどん読むスピードがあがりました。全500ページ強でさらに文章の密度が濃いためかなりの文字の量ですが、さして気にもなりませんでした。

 「スプートニクの恋人」が恋愛、「海辺のカフカ」が少年の成長を主題にしていると私は考えています。そうすると本書の主題は何でしょうね・・・?Book1を読み終えたところまでの印象では、本書の主題は世界や社会といったもののように見えます。
 本書の中に出てくるジョージ・オーウェルの「一九八四年」では1984年をビッグ・ブラザーという存在が治める全体主義の国として扱っています。そしてその中で主人公は過去を書き換えていきます。本書ではビッグ・ブラザーならぬリトル・ピープルという存在が現れます。そして月が二つ存在し、月面基地の建設が進み、本栖湖で銃撃戦が発生し、警官の装備が変わった"1Q84"年。この不思議な世界の意味はなんなのでしょう?謎は膨らむばかりです。
 1Q84年と1984年の違いは?違ってしまった理由は?"1Q84"年に生きる青豆と"1984"年に生きる天吾はどこかで交わることがあるのでしょうか?

 本書の特徴は筋だけではありません。至る所で様々な象徴的な作品が使われています。ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」、「平家物語」、チェーホフの「サハリン島」・・・。おそらくこれらの作品に対して並々ならぬ造詣がある作者だからこそ、こういった作品を自作の中で使っても生きてくるのだと思います。
 本作を読んでつくづく感じたのは、このような作品は村上春樹さんにしか書けない、ということです。他の人が同じような文体で真似しようとしても、同じ作品は決して書けないでしょうね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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この記事へのコメント

  • Charlie

    はじめまして。
    この大ベストセラー…未だ読んでいないので参考になりました!!
    『サハリン島』が話題になっていると聞きましたが、この本で取上げられていたからなのですね。因みに『サハリン島』に原案を求めた新作舞台劇がサハリンで始まっています。
    2009年10月25日 17:16
  • taka

    Charlieさん、コメントありがとうございました。
    1Q84ではサハリン島に出てくるギリヤーク人というのが中心的に取り上げられていました。

    >因みに『サハリン島』に原案を求めた新作舞台劇がサハリンで始まっています。

    そうなんですね。情報ありがとうございます。
    『サハリン島』もベストセラーになっているのですね。
    本書を読む限りでは少し難しそうな本ですが、機会があれば読んでみたいと思います。
    またぜひコメントお願いします。
    2009年10月25日 18:17
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