読書日記151:親指の恋人 by石田衣良



タイトル:親指の恋人
作者:石田衣良
出版元:小学館
その他:

あらすじ----------------------------------------------
許されぬ愛にもがく二人…。究極の恋愛小説
大学三年生の江崎澄雄は、携帯メールの出会い系サイトでメールのやり取りをかさねたジュリアと恋に落ちる。しかし、二人の経済的な環境は、極端なまでに違っていた。


感想--------------------------------------------------
 何度も紹介している石田衣良さんの作品です。「親指の恋人」とは携帯メールで知り合った恋人のことを指します。タイトルの付け方、上手いですね。さすがです。 本作、冒頭である新聞記事の抜粋が紹介されます。そして物語はその新聞記事の結末に向けて進行して行きます。「現代版ロミオとジュリエット」まさにこの名の通りの作品ですね。

 携帯メールで知り合った澄雄とジュリア。この世界に居場所を見つけられない者同士、恋に落ちるが・・・。

 本作、印象的なのは澄雄の家庭とジュリアの家庭の違いです。六本木ヒルズのレジデンス棟に住み何億もの金を稼ぐ父親を持つ澄雄と、借金にまみれ日々の生活にも困窮するジュリア。この二人の姿は物語の中だけの物ですが、現実にこのような人たちは存在します。
 大きな経済力を持ち欲しい物は何でも手に入れる人がいる一方で、どんなに努力しても這い上がれない人もいる・・・。これが今の社会の一面であることは確かです。

 また本作で特徴的なのは全てが与えられた澄雄でさえも「世の中に自分の居場所が無い」と感じていることです。経済的な要因など関係なく、今の日本に住む人の一部はこのように感じているのでしょうね。空虚な心を抱え、明日への希望を持てない日本人。全てが与えられているのに、明日への希望だけがない・・・。有名な「希望の国のエクソダス」の中の台詞を思い出します。

 今の日本社会は決して平等ではありません。
 努力したくてもそのチャンスさえ与えられない人がいる一方で、初めから全てが与えられている人もいます。このような世の中が改善されない限り本作の中の澄雄やジュリアのような人間は後を絶たないのでしょうね。
 いったい何に希望を見いだせばいいのか、何を糧として明日を生きればいいのか・・・。簡単に答えられそうなこんな問題に対する答えさえ、今の日本社会は提示できません。敷かれたレール、叶わない努力。今の日本は自由な社会などではなく、とても狭く重苦しく、行き場の無い社会であることを実感させられます。そして私だけかもしれませんが、読んでいてこういうことを強く感じました。

 本作、石田衣良さんの作品にしては珍しく軽いだけでは終わらない、いい意味で色々と考えさせられる作品でした。ただ、主人公の二人の名前が澄夫(スミオ)とジュリア・・・。ロミオとジュリエットを文字っているのでしょうが、ちょっとやり過ぎの気もしました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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