タイトル:ユージニア
作者:恩田陸
出版元:新潮社
その他:日本推理作家協会賞受賞
あらすじ----------------------------------------------
「ねえ、あなたも最初に会った時に、犯人って分かるの?」こんな体験は初めてだが、俺は分かった。犯人はいま、俺の目の前にいる、この人物だ-。かつて街を悪夢で覆った、名家の大量毒殺事件。数十年を経て解き明かされてゆく、遺された者たちの思い。いったい誰がなぜ、無差別殺人を?見落とされた「真実」を証言する関係者たちは、果たして真実を語っているのか?日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー。
感想--------------------------------------------------
「六番目の小夜子
恩田陸さんの作品のイメージというと私にとっては「水」ですね。雨、川、街の中を巡る水路・・・。本作でも海や川が出てきますね。ただ、本作では他の作品ほど重要なファクターにはなっていないと感じました。
地方の旧家で発生した大量毒殺事件。時効となったその犯人は誰なのか?自殺した青年と、盲目の少女の関係は・・・?
本作、恩田さんの作品にしては珍しく血なまぐさい事件が中心となっています。そしてその事件についての本を書き残した女性、彼女のアシスタントなど、事件を取り巻く人物達の眼を通して事件の全体像を見直していきます。果たして犯人は誰なのか?章が切り替わるたびに切り替わる視点、そして新たに浮かび上がる謎。構成自体は少し湊かなえさんの「告白」に似ていますね。ただ本作は過去の事件を見直している、という設定ですので、「告白
本作の中心となる人物である盲目の少女:青澤緋紗子。各人物から語られ次第に浮き彫りにされていくその素顔。直接的に表現するのではなく、いろいろな周囲の人物にその素顔を語らせることでその素顔を浮き彫りにする方法は実に効果的です。
また各人の話の中には一見、事件と関係のない話に感じられる物もあります。でもそういった話のちょっとした部分が話の解決の糸口になっていたりするのですね。この構成の妙。さすがです。
恩田さんの文章を読むといつも思うのですが、人物や情景の描写が本当に上手いですね。無駄の無い文章で情景を的確に表現しているので、読んでいて眼の前に情景が浮かんできます。これはやはり才能なのでしょうね。プロの作家さんはやはり凄いと感じました。
恩田さんの作品らしく終わり方はやはり少し漠然としています。「真実は一つではない」という恩田さんなりの考えがあっての終わり方なのでしょうね。本作は他の作品ほど終わり方に違和感を覚えませんでした。こんな終わり方でもいいかと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
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