読書日記148:ベロニカは死ぬことにした byパウロ・コエーリョ
タイトル:ベロニカは死ぬことにした
作者:パウロ・コエーリョ
出版元:角川書店
その他:
あらすじ----------------------------------------------
ベロニカは全てを手にしていた。若さと美しさ、素敵なボーイフレンドたち、堅実な仕事、そして愛情溢れる家族。でも彼女は幸せではなかった。何かが欠けていた。ある朝、ベロニカは死ぬことに決め、睡眠薬を大量に飲んだ。だが目覚めると、そこは精神病院の中だった。自殺未遂の後遺症で残り数日となった人生を、狂人たちと過ごすことになってしまったベロニカ。しかし、そんな彼女の中で何かが変わり、人生の秘密が姿を現そうとしていたー。全世界四五ヵ国、五〇〇万人以上が感動した大ベストセラー。
感想--------------------------------------------------
「発見。角川文庫 夏の100冊」という角川書店のキャンペーンで100冊に選ばれている本です。このキャンペーンは松山ケンイチさんがイメージキャラクターを勤めていることでも有名ですね。最近いわゆる娯楽小説ばかり読んでいましたので、少し方向性の違う本を読もうと思って買ってみました。
「この先ずっと、日常は何も変わらない」と悲観して自殺しようとしたベロニカは精神病院の中での出会いにより人生の秘密に気付いていくー。
本作、ベロニカが精神病院の中での出会いを通じて変わっていく、という話です。精神病院の中で出会う、ゼドカ、マリー、エドアード。彼らはそれぞれの事情でこの精神病院に入ることになっており、その理由やお互いの事情を理解していく中で各人が生きる意味を見いだしていきます。
本作で一番感じたことは、「他の人と違ったことをすることが狂っているということならば、世の中の人間はみんな狂っている」ということです。他の人の目を気にすること無く、自分の思うように自由に生きれば世界はもっと美しい物になるというこの考え方は、当たり前ではありますが心に刺さります。
いつもと同じ日常が続くことに絶望して死のうとしたベロニカ、映画館で突如パニックに襲われたマリー、親の示す人生と違う人生を望んだエドアード。本作は遠くスロベニアでの話ですが、彼らの姿は今の日本人の姿にも重なります。同じような悩みを抱えている日本人は多いと思いますので、共感を覚える人も多いのではないでしょうか。
ベロニカは自殺未遂の後遺症から「あと一週間程度しか生きられない」と医者に宣告されてしまいます。そして、逆に残り時間が短くなったことで人生の素晴らしさや輝きに気付いていきます。何気なく見ている日常の風景も、見方を変えるだけで輝いて見えるということに、気付かせてもくれます。
本作、内容はいいのですが訳本のため非常に読みにくさを感じました。常々思うのですが海外の作品はその国の文化や言語が作品の根底にあるため、そのまま日本語に訳してもうまく伝わらないことが多い気がします。(理想を言えば、原作のまま読めればいいのでしょうね。)本作も残念ながらそのような本になっていると思います。内容としてはとても良いのでしょうが、日本語としてよくわからないのです。きっと購入した人の何割かはその日本語が理由で読むことを断念しているのではないでしょうか?
こういう状況を打破する為には、原作の意図を理解した上で、誤解を恐れずに読者に意図を伝えることを意識した意訳をするべきなのでしょうね。今後そのような訳本が生まれてくることを期待します。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C
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