映画日記25:おくりびと



タイトル:おくりびと
監督:滝田洋二郎
出演者:本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、杉本哲太、笹野高史、吉行和子、峰岸徹、山田辰夫
その他:第81回アカデミー賞 外国語映画賞 受賞
    モントリオール世界映画祭・グランプリ受賞

あらすじ----------------------------------------------
納棺師─
それは、悲しいはずのお別れを、
やさしい愛情で満たしてくれるひと。


感想--------------------------------------------------
 言わずと知れた、日本映画として初めてアカデミー賞外国語映画賞を受賞したことで有名な作品です。WOWOWで放送しているのを見ましたが全編を通して穏やかで優しい雰囲気の漂ういい映画でした。

 オーケストラでチェロを弾いていた小林(本木雅弘)はオーケストラの解散を機に妻のミカ(広末涼子)と故郷の山形に帰ることとなる。小林はひょんなことから遺体を棺に納める納棺の仕事に就きー

 本作、まず出ている役者さんが皆、素晴らしかったです。まず主役の本木雅弘さん、その妻役の広末涼子さんはとても仲睦まじく温かい家庭を感じさせてくれました。この温かさが本作の根底に流れているからこそ、納棺師の仕事の描写が生きてくるのだと思います。
 そして社長役の山崎努さん。相変わらず存在感がありますね。本作に取ってなくてはならない役ですし、もし山崎さん以外の方が演じていたらおそらく全く違った映画になっていたでしょう。山崎さんにしか出来ない演技だと思います。
 さらに脇を固める笹野高史さん、余貴美子さん、杉本哲太さん、吉行和子さん。ベテランらしい安定した確かな演技が光りますね。本作にいい味を与えています。
 最後に山田辰夫さんに峰岸徹さん。お二人とも故人になってしまいましたが、作品に深みを与える素晴らしい演技・存在感を見せています。

 本作は人間であれば誰もが迎える「死」を納棺師という職業からまっすぐに見つめて、生きることの素晴らしさ、家族の絆の深さといったものを描き出しています。この「死」の描き方が素晴らしいなと思いました。避けようがなく、厳然としてそこにあり、受け入れざるを得ない「死」。納棺師の職業についてこの「死」を見つめることで逆に人の、生のぬくもりを求める主人公の姿が私にとってはとても印象的でした。
 「死」があるから「生」がある。この当たり前のことに気付かせてくれる作品でもありますね。作中の言葉で最も印象的だったのが、「死は門です」という言葉です。そこで終わりではなく、「さようなら、また会おう」と温かく潔く送り出すこの姿勢には感動せずにいられません。

 本作、「死」というものをとても丁寧に描いていますね。近年のアニメやマンガ、小説などでは「死」というものが非常に軽く描かれているのですが、それとは対照的です。
 日本では、第二次世界大戦では310万人以上の人が亡くなり、毎年交通事故で数千人の人が亡くなり、さらに毎年三万人以上の人が自ら命を絶っています。統計的な数値でしか表されないこの「死」の裏側にはその数と同じかそれ以上の人が「死」を受け入れるためにもがいています。そういった一つ一つの死をしっかりと見つめ、残された人々のためにしっかりと送り出していく納棺師。彼らに出会えた人は幸せですね。そしてその納棺師の姿を本木雅弘さんは本当によく演じていると思いました。

 「死」の厳然たる存在感、そしてそれを通して見えてくる生の素晴らしさ、家族の絆。そういったものを確かに感じさせてくれ、涙と笑いを織り交ぜながら静かに確かに心にしみる、素晴らしい映画でした。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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