読書日記146:まほろ駅前多田便利軒 by三浦しをん
タイトル:まほろ駅前多田便利軒
作者:三浦しをん
出版元:文藝春秋
その他:第135回直木賞受賞作
あらすじ----------------------------------------------
まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.ーありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。多田・行天の魅力全開の第135回直木賞受賞作。
感想--------------------------------------------------
「風が強く吹いている」で紹介した三浦しをんさんの作品です。三浦しをんさんは本作で第135回直木賞を受賞していますね。
まほろ駅前で便利屋を営む多田の元に、高校の同級生の行天が転がり込む。二人の元には今日も様々な依頼が寄せられて・・・。
本作、解説を読むと分かるようにキーワードは「再生」や「修復」ということみたいです。事故で小指の先を切断し、再度つなぎ直した行天、過去に幸せを掴み損ねた多田。語られるエピソードの多くにも、何かで失敗し、そこから立ち直ろうとしたりやり直そうとしたるする人の姿が描かれています。このキーワードは最後まで一貫していますね。「失敗したとしても、人生が続く限りきっとやり直すことができる」という趣旨は読者に勇気を与えてくれます。
でも一方で、私にとっては「風が強く吹いている」に比べると印象の薄い作品でした。主人公が男性の二人組だからですかね?女性の読者にとっては良いのかもしれませんが、いまいち物語が単調に感じてしまいます。行天の突飛な行動にもそんなに強い印象を受けませんでした。
きっと、行天と多田に加えてもう一人、話の本筋に絡んでくる女性主要メンバーがいると話にメリハリがついたのかな?と思います。脇を固める女性メンバーは豊富なのですがやはり脇役の域を出ていませんね。同じ便利屋の話である石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」と比べるとスピード感、切れ味ともに落ちる気がします。内容的には十分面白いのですが「風が強く吹いている」があまりに良すぎたため、これと比べると少し色あせて見えてしまいますね。
本作の舞台である「まほろ市」は町田市付近のようですね。ハコキュー=小田急、八王子線=横浜線って読み替えるとすんなり分かります。町田近辺に住んでいた私に取っては情景が目に浮かび、親近感を持って読むことが出来ました。
あと、本作は全6章で構成されていますが、物語が動き始めるのは4章からです。行天と多田、二人の過去を交えて話が展開されて、お話が俄然面白くなってきます。ここからは一気に読めると思いますよ。
この方の文体は柔らかく、おっとりしていて優しい、というのが私の印象です。まだまだ未読の作品が多いのでまた読んでみようかと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
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