読書日記145:インシテミル by米澤穂信



タイトル:インシテミル
作者:米澤穂信
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
バイト雑誌を立ち読みしていたビンボー大学生・結城は、ひとりの少女から声をかけられて……。この夏、究極の殺人ゲームがはじまる


感想--------------------------------------------------
 初めて読む作家さんのミステリーです。抜群に面白く、最後まで一気に読んでしまいました。ここまで熱中して読んだのは「告白」以来かもしれません。ページをめくる手が止められませんでした。

 求人雑誌の片隅に掲載されていた破格の報酬のバイトに応募した結城は、他11人の応募者と共に地下の閉鎖施設「暗鬼館」に連れて行かれる。バイトの内容はここで7日間過ごすだけ。しかし結城はその夜、自分の部屋の枕元に置かれた箱の中から「殴殺」と書かれたメモと金属の棒を見つける。その晩から究極の殺人ゲームが始まった・・・。

 本作、閉鎖された地下施設の中で12人の男女が一人、また一人と殺されていくお話です。「犯人は誰なのか?」、「次に殺されるのは自分かもしれない」、そういった疑心暗鬼の中、また一人、また一人と減っていき、残された人々はさらに追いつめられていく・・・。ミステリ好きの方はよくご存知かもしれませんが、この設定自体はアガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」をモチーフにしています。ただ、やはり現代風に作られていますので、「そして誰もいなくなった」よりは大分軽いですね。

 本作、作者が相当なミステリ好きらしく、至る所に名作ミステリの話がでてきます。「まだらのひも」、「Xの悲劇」、「僧正殺人事件」などなど。本作自体は「ガード」と呼ばれるスーパーロボットの登場に代表されるあり得ない設定が多くちりばめられていて、かなり現実離れした感はありますが、それでもミステリ部分はよく出来ているなあ、と感心します。

 最近の多くの作家さんの作品は登場人物の人間性や感情表現が非常にうまく、ミステリーであっても「人間ドラマ」になっている作品が多い気がします。一方で本作ではあまり人間性や感情表現には深く踏み込んでおらず、本来の「ミステリー」としての面白さだけで勝負している気がします。この潔さ、簡潔さが逆に面白さを引き立てていると思います。
 閉鎖された地下の施設に閉じ込められた12人の男女、一人に一つずつ与えられた凶器、不思議な雰囲気を醸し出す少女、高額な報酬・・・。これだけあれば余計な物はいりませんね。上手くこれらの設定を料理して作り上げた傑作と呼べる一品かと思います。

 でも、あまり本作は有名ではないですね・・・。やはりミステリ好き以外には受けないのかな?ちなみにタイトルの「インシテミル」はThe Incite Mill・・・「煽動された殴り合い」みたいな意味みたいです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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インシテミル (米澤 穂信)
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Tracked: 2011-01-15 20:40