読書日記115:山魔の如き嗤うもの



タイトル:山魔の如き嗤うもの
作者:三津田信三
出版元:原書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
忌み山で人目を避けるように暮らしていた一家が忽然と消えた。「しろじぞうさま、のーぼる」一人目の犠牲者が出た。「くろじぞうさま、さーぐる」二人目の犠牲者ー。村に残る「六地蔵様」の見立て殺人なのか、ならばどうして…「あかじぞうさま、こーもる」そして…。六地蔵様にまつわる奇妙な童唄、消失と惨劇の忌み山。そこで刀城言耶が「見た」ものとは…。『首無の如き祟るもの』に続く渾身の書き下ろし長編。


感想--------------------------------------------------
三津田信三さんの作品です。「首無の如き祟るもの」がとても後味悪く怖かったので、どうしようかと悩んだのですが、作品的には素晴らしいできでしたので読んでみることにしました。

 山魔(やまんま)が住むと言われる忌み山。そこに迷い込んだ青年は恐怖の一夜を過ごすことになり、果ては連続殺人へと発展する・・・。

 本作も前作同様、横溝正史さんの金田一シリーズを踏襲するような雰囲気が作品全体に流れています。昭和初期の舞台設定、山間の閉鎖的な村落、その村落の中で支配的な地位を確立する旧家、そこに残るおぞましい伝承・・・。作品全体に漂うおどろおどろしい雰囲気は横溝作品以上かもしれません。この雰囲気が好きな人にはたまらないでしょう。

 そして前作「首無の如き祟るもの」が「犬神家の一族」を意識しているとすると、本作は「悪魔の手毬唄」を意識していますね。村に残る童歌になぞらえて殺人事件が発生していく点などそっくりですし、本作の第一の被害者の状況など、「悪魔の手毬唄」を読んだことがある人なら思わずニヤリとしてしまうのではないでしょうか。(あと、「八ツ墓村」も少し入ってますね・・・。)この方は本当に横溝作品が好きなのでしょうね。作中の類似点を探してみるのも面白いのではないでしょうか。

 本作、ホラーとしての怖さは「首無の如き祟るもの」ほどではないな、と思いました。前作の方がホラーとしての恐ろしさは上だったとは思います。特に物語を読み終わっても残る後味の悪さは、いい意味で最悪でした。でも、本作も初読の人に取っては十分怖いと思います・・・。
 ミステリーの部分も前作の方が上かな、と思いました。前作を読んだからだとも思いますが、本作はかなり謎解きを意識して読んだので途中で決定的なトリックに気づいてしまい、ある程度まで犯人を絞り込むことができました。前作のトリックには全く気づかなかったのですが・・・。やはり初読と二作目、という違いがあるのかもしれません。

 いろいろと書きましたが、このミスのトップ10以内にランクインしていますし、ホラーとしてもミステリーとしても、相当な完成度の作品であることは間違いありません。そして、何よりも横溝正史ファンにとっては待望していた作家さんなのではないでしょうか。あの横溝正史さんの雰囲気の作品が現在進行形で体験できる、これからも作品が作られてくる、これは本当に嬉しいことです。次回作も楽しみです。きっと読むと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック