タイトル:告白
作者:湊かなえ
出版元:双葉社
その他:第29回小説推理新人賞受賞
このミステリーが凄い!4位
あらすじ----------------------------------------------
愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのですー。
我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度。
感想--------------------------------------------------
この本もずっと読んでみたかった本です。1ページ目を読み出してから読み終わるまで、あっという間でした。1日で1冊読む、なんていうことは働きだしてからほとんどなかったのですが、久しぶりに読んでしまいました。それほどまでに圧倒的な面白さの本です。
愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのですー。
我が子を校内で亡くした女性教師が終業式のHRで告白するところから始まる本作は、全6章で構成されています。各章毎に語り手が異なっており、被害者の母である担任の教師から始まり、「級友」「犯人」「犯人の家族」・・・と続いていきます。
圧倒的なスピード感、緊張感ははもちろんのこと、私が凄いと思ったのは登場人物の心理描写です。各人各様の考え方、価値観で事件について様々な角度から語るのですが、それが全て気持ちいいほどにすれ違っています。犯人、被害者の母親、犯人の母親、級友、新しい担任の教師・・・。誰もがお互いを理解し自分の考えこそが正しいと主張しています。でも他の人の視点に切り替わるとあっさりとそれが否定され、その結果さらに残酷な結果へと話が展開していきます。そして、読み手である私にはそこに何の違和感も感じられません。
不登校の生徒を励まそうとする先生は、実はその生徒を苦しめているだけでしかない。信頼してくれた、と思った相手は実は自分を道具として扱っていたに過ぎないー。章を変わる毎に、語り手が変わる毎にそんな事実が「告白」されていき息苦しくなってくるのですが、最終的にどうなるんだ、どういう風に終わるんだ、と展開からは不思議なほどに目を離すことが出来ないのです。そしてラスト。思いもかけない展開でした。
「誰もが相手のことを理解したつもりでいるけど実はすれちがっているだけでしかない。自分で自分の主張がいくら正しいと思っていても所詮は独りよがり。他者によって簡単に否定される。それがこの社会の常なんだ」作者からはそう言われているようです。ここが、実は本作の最も恐ろしいところではないだろうか、と感じました。
しかし凄い作品ですね・・・。この方は新人だそうですが・・・。新人にしてこのミス4位です。筆力や重厚さはともかく、”面白さ”だけ見ると1位の「ゴールデンスランバー」よりも凄いのではないかと思いました。こんな人が突然、新人として出てくるなんてミステリー作家さんも競争が激しくて大変だな、とつくづく思います・・・。新年早々にして今年のベスト?と思わせる作品でした。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
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