2017年04月22日

コミック日記148:進撃の巨人(22)


タイトル:進撃の巨人(22)
作者:諫山創
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ライナー、ベルトルト、「獣の巨人」との戦いの末、多大な犠牲を払いながらもエレンの生家へ辿り着いた調査兵団。その地下室にて、彼らはグリシャが残した3冊の本を手にする。その本に記されていたのは、グリシャの幼き日の記憶。そして、およそ1800年前、一人の少女が巨人の力を手にしたことから始まる二つの民族の暗黒の歴史。明かされたグリシャの過去と突きつけられた世界の真実を前に、エレンら調査兵団の進む道は…。

感想--------------------------------------------------
進撃の巨人も気付くと22巻目。本当に早いものです。本作はここで一つの区切りを迎え、いま発売中の別冊マガジンでは視点を変えて数年後?の世界の物語が始まっています。

巨人の真実を知ったエレンたち。その後の選択はー。

エルヴィン隊長を含む多数の犠牲の上で鎧の巨人、獣の巨人、超大型巨人を撃退したエレンたち調査兵団。巨人の真実とエレンの父親グリシャの物語が前巻から引き続き語られます。正直、よくここまで緻密なストーリーに繋がったなあ、というのが感想です。意味もわからず巨人に攻められ、壁の内側で暮らさざるを得なかった世界。そこでの巨人同士の凄まじい戦闘と不条理な死が最初は物語の持ち味だったのに、驚くような展開が何度も繰り返され、この世界の残虐な真実へと繋がっていきます。繰り返しになりますが、物語をよくここまで落し込んだなあ、というのが正直な感想です。もはやただ勢いだけの漫画ではありません。完全なる第一級の作品です。

本巻の見せ場は、いろいろあるかと思いますが、個人的には前半のグリシャとクルーガーの会話、そして後半のフロックの言葉です。特に正しいと思ったエレンたちの選択を容赦なく弾劾するフロックの言葉は、この物語ならではだと思います。生と死が隣り合わせの世界ならではの緊迫した状況下でのみ発せられる、答えのない問い、選びようのない選択を弾劾する言葉。こうした言葉は、以前はリヴァイがよく発していましたね。この物語を深く仕上げている一つの要素だと思います。

海、自由、新たな敵。まだ見ぬ新たな敵とどこまで戦い続けるのか、どこまで戦えば戦いは終わるのか。悲劇はいつまで続くのか。次巻以降も楽しみで仕方ありません。正直、一、二巻を読んだ時はここまで壮大に、緻密に物語が続くとは思っていませんでした。脱帽です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス
posted by taka at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 有川 浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月16日

読書日記635:羊と鋼の森


タイトル:羊と鋼の森
作者:宮下 奈都
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

感想--------------------------------------------------
宮下奈都さんの作品です。この方の作品は「誰かが足りない」を読んだことがあります。本書は昨年の本屋大賞受賞作です。今年は恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」でした。

板鳥さんの調律するピアノの音に惹かれ、調律を仕事として選んだ外村。板鳥さんや柳、秋野といった仲間に囲まれ、さらに双子の由仁と和音といった客と接しながら外村は少しずつ成長していくー。

表題の「羊と鋼の森」とはピアノのことを指します。羊毛で作られるフェルトのハンマーが鋼の弦を叩いて音を出すピアノ。ピアノという広大な森に入ることを決めた外村を主人公とした作品です。

読み始めて感じるのはその静けさと穏やかさです。主人公である外村が調律に魅せられ、尊敬する板鳥さんの勤務する楽器店に就職し、そこで学び、成長していく姿が描かれています。周囲にいるのは腕は確かだけど個性的な調律師である柳や秋野、さらに客である双子の女子高生、由仁や和音など。ピアノと調律を通して様々なことを感じ、成長していく外村は素直で葛藤は抱えつつもしっかりと前を向いて進んでいきます。

外村の生き方は、「3月のライオン」の主人公、零を思い起こさせます。真面目で実直な生き方しかできない外村は様々なことで悩みますが、それでも前に進んでいきます。感傷的で、外村の感情が溢れる作品なのに、その根底にあるのは静けさ。外村の故郷である北海道の山奥の零下三十度にもなる山と森の静けさです。そして読み終えると、静けさの奥から感動がこみ上げてきます。


「音楽は人生を楽しむためのものだ」


この言葉が最も印象に残りました。誰かに聞かせるためでも、ましてや競うためでもなく、ただそこにあるだけで人を楽しませる音楽。残念ながら私は音楽とは無縁の生活を送っていますが、音楽に触れている人が読むと、さらに感じるところがあるのではないか、と思います。美しい作品、という言葉がぴったりくる作品と感じました。

独り言ですが、今年の本屋大賞候補作にはそんなに読みたい本がなかったですね。。。「罪の声」は読んでみたいですが、あとはあんまり、、、といった感じです。個人的に好きなミステリー調の作品が少ないからかもしれません。本屋大賞も回を重ねて変わってきたのか、個人的な感覚が変わってきたのか、、、。本屋でも読んでみたいのはラノベ調の本が多くなってきて、携帯小説も増えているし、いろいろと変わってきているのかな、と感じたりします。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
posted by taka at 12:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月08日

コミック日記147:ファイアパンチ4


タイトル:ファイアパンチ 4
作者:藤本タツキ
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ベヘムドルグから逃走する民たちを率いる通称“お頭”は、追手の兵に応戦するが劣勢に。しかし突如現れた謎の槍使いの女と仮面の男が加勢し戦況は一変する。一方アグニは、彼を崇拝する者たちのため再びある行為を余儀なくされ!?

感想--------------------------------------------------
漫画大賞2017第三位にも選ばれた、いま乗っている作品です。でも本屋ではあまり見ません。きっとマニアックすぎるからでしょうね。ぶっ飛んだ作品です。

氷の魔女と呼ばれる存在により氷付けにされた世界。生まれながらに奇跡を有する人間「祝福者」として生まれ、再生の力を持つアグニは、消えない炎に身を包まれながらも殺された妹の復讐の旅に出る。ベヘムドルグで奴隷を解放した事から神として崇拝される事になったアグニはー。

「この世界に負けたくない」
この作品の中心を貫くのはもうこのひと言だけです。氷付けにされ、飢餓に苦しみ、奴隷として差別され、わけもわからず死んでいく世界。そんなところで死んでたまるか、という主人公の思いだけがひたすらに強く伝わってきます。そしてそんな世界をぶっ壊す、対象を燃やし尽くすまで消えない炎に包まれたアグニの必殺技が「ファイアパンチ」。全てをぶっ壊すパンチです。

登場人物にまともな人間はほとんどいません。全身を消えない炎に包まれ、常に燃えながらも再生することで生きていくアグニ、アグニを主人公とする映画を取りたいと願う、変態で凄腕で再生能力を持つトガタ、そして氷の魔女に、アグニの妹そっくりのユナ。本巻では露出狂キャラがふたりばかり増えました。登場人物は変態ばかり、意味不明で残虐な殺戮が繰り返されて、登場人物の言葉はものすごくぶっ飛んでいるのに、ときどきすごくリアルで読み手に迫ります。

「この世界に負けたくない」
この言葉はまさに作者の言葉そのまんまだ、と気付きます。こんな世界ぶっ壊してやる、破壊的な作品作ってやる、そんな凄みと迫力が伝わってくる本です。万人受け、という言葉からは最も遠い作品ですが、すっごい迫力ではまる人ははまります。「進撃の巨人」も最初はこんなだったなあ、とか思い出したりもします。理屈なんか抜き、意味不明で不条理で、ぶっとんでて、でも読み手を、世界をぶっ壊す作品。こういう作品が新しい何かをつくるんだろうなあ、とかって思ったりします。

展開も激しくて、急で、ぶっとんでて、いい感じです。スケールも壮大になってきて、星を巻き込んだ戦いになりそうで、今後の展開がすごく楽しみです。縮こまったり、理屈の帳尻あわせになんて走らないでほしい、このままぶっ壊れたまま、どこまで突っ走れるのか見てみたい、そんなことを期待させる作品です。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
posted by taka at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月01日

読書日記634:大前研一通信_答えのない世界〜グローバルリーダーになるための未来への選択〜


タイトル:答えのない世界〜グローバルリーダーになるための未来への選択〜
作者:大前研一
出版元:ビジネス・ブレークスルー
その他:

あらすじ----------------------------------------------
今回で第10弾となる「大前研一通信・特別保存版」の電子版。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様に献本いただきました。いつもありがとうございます。

本書は大前研一通信の第十弾ということで、大前研一さんが様々な書籍に書かれた記事の抜粋と、国際バカロレア大学の説明から構成された書籍です。特に前半の大前研一さんの指摘は相変わらず鋭いと感じました。

本書に掲載されている大前研一さんのコメントの多くは「教育」に関するものです。特に一章では「21世紀に求められる人材」ということで、教育の必要性について強く解かれています。特に印象に残ったコメントを引用しながら紹介します。

「親が子供の教育にかけたお金と成果は比例しないが、かけた時間と成果は比例する」

塾に放り込んで終わり!ではダメな訳ですね。きちんと寄り添って教える事が必要という事です。


「実質的に中流階級は激減し、低所得者層と高所得者層の2つにピークがある「M型社会」になりつつある。これが意味するのは、成功者になれなければ中流を飛び越えて一気にロウアークラスに転落してしまうという事だ」


日本社会の労働者の流動性のなさにも触れられていましたが、こちらも実にその通りだと感じます。成功者と失敗者の二つしかなく、成功者は誰でもすぐに失敗者となってしまう。そして労働者に流動性がないため、失敗者は成功者になることができない。従って利得を手にしている者はそれにしがみつき、低所得者はいつまでたっても変わる事が出来ない。まさに動脈硬化です。流動性がなく、自由がなく、希望がない。経済が好況で企業はどこも過去にないほどの業績を上げているのに、社会がどこか行き詰まっていて、「こんな時代だから」みたいな言葉が蔓延する時代の理由はここにある気がします。

もっと言ってしまうと、「労働環境に流動性がない(解雇・再雇用が簡単に出来ない)」ということは、いろいろな面で現在の社会にそぐわないと思います。自身の能力を培おうというモチベーションにもつながらないですし、解雇・再雇用が簡単に出来ないため会社の注力領域を切り替える事が簡単には出来ません。有能な社員を集める事も出来ません。まさに経済成長時代の悪しき慣習なのでしょうね。政府の思い切った改善が求められる分野だと思います。本書は常々感じていた生活への不安感をうまく解きほぐしていて、すっきりしました。

「ボーダレス」という言葉が本書ではキーワードとして使われています。才能のある人材を国境を越えて集める、本書で紹介されているように、クラウドソーシングで多様な人材を一度に招集して業務を回す。このような業務形態が当たり前になってきたとき、我々はどのように変わるのだろうか、と感じます。我々の子供世代はもちろんですが、今の四十代以上のまだ現役として働き続けなければならない世代こそ、過去を知っているが故に働きにくさを感じるのではないか、と感じます。

「答えのない社会」という言葉もキーワードですね。私の世代は「答えを探すこと」が前提で、答えがない事にはどこか居心地の悪ささえ感じます。しかしこれからは答えのない事を当たり前として、自分自身で答えを定義し、創っていかなければならないようです。


「21世紀のビジネスでは、コンセプトを持つ者が成功し、豊かな暮らしを享受できるだろう」


「コンセプト」という言葉は「本質」という言葉と近い意味だと本書を読んでいて感じました。本質をどう掴み、それをどのように他人に伝え、自身の能力と紐付けていくのか。これからの時代を生きる人の課題かと感じました。

大前研一通信は毎回刺激的な内容・言い回しで、とてもいい刺激になります。また楽しみにしています。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
posted by taka at 21:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする