2016年06月25日

読書日記598:一瞬で心をつかむ文章術



タイトル:一瞬で心をつかむ文章術
作者:石田章洋
出版元:明日香出版社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
あなたは、3行以内で心をつかむ文章が書けますか?企画書・提案書、ラブレター、小説、どんな文章にも通用するパターンを教えます。みんながよく知っている「起承転結」は忘れたほうがいい!たった3つの要素だけ覚えれば、短い文章も長い文章も速く書ける。3倍速く書ける、最後まで読ませるメール、ブログ、提案書、DM。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様に献本いただきました。いつもありがとうございます。

本書はここでも「企画は一言」、「スルーされない技術」、「インクルージョン思考」、などで紹介している放送作家の石田章洋さんの著書です。ブログを書く者として文章の書き方というのは非常に気になりますので、楽しみに読んでみました。二百ページほどの厚さの読みやすい本です。


『文章とは「書くためのもの」ではなく、「読んでもらうもの」である』


この一言に本書の中身は尽きるかと思います。目の前にいない読み手をどこまでリアルに想像して文章を書けるのか、その中でもどのような人をターゲットと考えるのか、詳細をイメージして書くことができるか、ここが一番のポイントなのだろうと感じます。

本書は個人的にはかなり役立つ本でした。文章の書き始め方、序論・本論・結論の構成方法やその具体的な中身の書き方、資料の集め方、書き方などが丁寧にまとめられています。数々のヒット番組を出してきた方なので、その内容はどれも体験に裏打ちされていて説得力がありますね。文章の書き方をラーメンを題材に取り上げて説明されているあたりなど、読み手に理解しやすくなる工夫も随所でされており、とても読みやすかったです。

「読む・書く・見直す。これを繰り返すしか文章上達の道はない。」本書に書かれている内容ですが、当たり前のことですね。本書にはその書き方、見直し方のポイントが丁寧に書かれていて、本書を読むと「読む・書く・見直す」をより高度なレベルでできるようになると感じました。

「文章を書く」というスキルは、いろいろなところで役立つと私は感じています。拙文ですが、このブログを定期的に書くことで文章を書く癖、読み直す癖がつき、それは様々な場面で役に立っている、と感じます。いきなりは難しいかと思いますが、この本に書かれている文章を上手に書く要点をうまくこのブログにも反映していきたいと感じました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2016年06月18日

読書日記597:ねじまき少女 上



タイトル:ねじまき少女 上
作者:パオロ・バチガルピ
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。遺伝子組替動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物ンガウを手にする。ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。彼とねじまき少女エミコとの出会いは、世界の運命を大きく変えていった。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞など主要SF賞を総なめにした鮮烈作。

感想--------------------------------------------------
とある書店でポップが飾られているのを見て、読んでみようと思った本です。数々のSFの名だたる賞を受賞している一方で、日本版は誤訳が多いとの噂もある作品です。ちなみに私が読んだのは第四刷です。

利権を握ろうとする白人たち、利権を奪おうとする中国人、賄賂を潰そうとする虎の異名を取る白シャツ隊の隊長、そして遺伝子改変された新人類であるねじまき少女のエミコー。エネルギーが失われ、疫病の流行と水没の危機におびえる混沌の未来都市バンコクを舞台に、物語ははじまるー。

期待を裏切らない作品です。SFというものが今そこにない何かを真実として読み手に提供する者であるならば、この物語は間違いなく、その試みに成功しています。翻訳SF小説に独特の読みにくさを最初のうちこそ感じますが、慣れてしまえばどうということもなく、どっぷりと未来のバンコクにはまることができます。

本書の主人公はだれか?と聞かれると、非常に難しいのですが、敢えて答えるとするとこの未来都市バンコクなのかと思います。それほどこの都市の描き方が半端ないです。ディテールにこだわった街の描写、街のエネルギー源として働く遺伝子改変された象の一種メゴドント、人類を滅びに追い込みかねない数々の疫病や害虫、猥雑でありながら活気に溢れたバンコクの人々ー。普通に読むだけだと少し読みにくいSF小説くらいにしか感じないかもしれませんが、書き手の事を想像しながら読むと、ここまでの世界を作り上げた著者の想像力と構成力は並大抵の者ではなく、「ここまでできるのか」と感じさせられます。

国、企業、軍ー。お互いに利権を求めてぶつかり合う様々な立ち位置の人間たちの物語は、徐々に徐々にと加速を始めます。しかし、確かに登場人物の内面描写もありますが、和製SFと違ってそこまでの強い悩みや自己に関する葛藤などはありません。あくまでも主人公はエネルギッシュな街、バンコクですね。この街を舞台に選んだのがこの物語の鍵かと感じます。

物語は窮地に陥ったバンコクの虎、の描写で終わります。もちろん下巻も読む予定です。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス

2016年06月11日

読書日記596:世界堂書店 by米澤穂信



タイトル:世界堂書店
編集:米澤 穂信
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
世界堂書店にようこそ。米澤穂信が心から愛する傑作小説たちを、アメリカ、イギリス、フランスはもちろん、中国、フィンランド、ギリシアなどなど、世界中から選び抜きました。不思議な物語、意地悪な話、恐ろしい結末、驚愕の真相…まさに珠玉のアンソロジー。

感想--------------------------------------------------
本書は米澤穂信さんの著作ではありません。一流の作家であると同時に多くの作品を読まれていることでも有名な米澤穂信さんが、古今東西、様々な国の短編を選び、編集した作品です。含まれている作品は十五編で、日本、中国、アメリカ、ベルギー、オーストリア、ウルグアイ、ギリシア・・・と著者の国籍も様々、時代も十七世紀の作品からつい最近の作品まで様々、とまさに多種多様です。

本書に含まれている作品を読んでつくづく感じることは、「小説とは決してストーリーだけを楽しむものではない」ということです。行間にあるその時代その場所の雰囲気、精緻に練られた文章の美しさ、小説世界に生きる人々の息づかい、そうしたもの全てが小説なのだ、と感じます。

十五編の小説は長いものでも五十ページ程度、短い作品に至ってはほんの数ページのものもあります。そしてそのプロットも様々で、ストーリーだけを追っていくと「?」と感じる小説もありますが、上に書いた点を意識するとどの作品にも読み手に感じさせる何かが含まれていることがよくわかります。過ぎ去った過去、なかなか行くことのできない世界の彼方を感じる方法は映像だけではない、時に小説の方が映像よりも多くを伝えてくれることがあるのだ、ということがよく分かります。

もう一つ感じたことは、どの作品も訳が抜群にうまいことです。本書に収録されている作品のほとんどが海外の作品であり翻訳を必要とされるのですが、どの作品もとても日本語が美しいです。特に海外作品は、作者の力量はもちろんですが、翻訳家の力量も多分に必要とされるのだ、と実感します。

最後に、本書収録の作品はそのどれもが全く筋が読めません。プロットのうまさも、卓越していると感じます。読み手に何かを感じさせる作品が多く、確かに名作です。ただ、人によっては読みにくさや、意味が感じ取れない作品も多いかと思います。読書の玄人である米澤穂信さんの選であることも意識しておくべきですかね。。。

私にとってはなかなか触れることのない海外の短編名著にわずかですが触れることの出来る良作でした。最後の米澤穂信さんの解説も秀逸です。私個人としては、本書の中では「黄泉から」のストーリーと描写の美しさ、「東洋趣味」の魔都 上海を髣髴とさせる爛熟した時代、場所の描写、「石の葬式」の途中からがらりと変わるストーリー、「連鎖」の昔話のようなプロットなどが印象に残りました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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2016年06月04日

読書日記595:ローマ人の物語〈41〉ローマ世界の終焉〈上〉



タイトル:ローマ人の物語〈41〉ローマ世界の終焉〈上〉

作者:塩野七生
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
テオドシウス帝亡き後、帝国は二人の息子アルカディウスとホノリウスに託されることになった。皇宮に引きこもったホノリウスにかわって西ローマの防衛を託されたのは「半蛮族」の出自をもつ軍総司令官スティリコ。強い使命感をもって孤軍奮闘したが、帝国を守るため、蛮族と同盟を結ぼうとしたことでホノリウスの反感を買う。「最後のローマ人」と称えられた男は悲しい最後を迎え、将を失った首都ローマは蛮族に蹂躙されるのであった…。

感想--------------------------------------------------
ローマ人の物語文庫版、全43巻の41巻です。この巻からいよいよ最後の章「ローマ世界の終焉」に入ります。テオドシウス帝により東西二つに分割されたローマ帝国の国力は衰え、いよいよ滅亡に向かって突き進んでいきます。

この章の主人公は西ローマ帝国の無力な皇帝ホノリウスを支えた軍総司令官のスティリコです。孤軍奮闘するスティリコは、この巻を読むと相当に有能な章であった事は疑いようもありません。少ないローマ軍を率いて、多数を誇る蛮族の将アラリックとの幾度もの戦闘を制し、西ローマ帝国の最後の砦として奮戦します。滅び行く国を支える最後の将ー三国志で言うと孔明亡き後の蜀を支えた姜維のような存在ですかね。英雄や伝説的な名将が登場するのはどの国においても国の興亡の時がほとんどです。特に滅亡の寸前に現れる名将は悲劇的な要素を多分に持っていますが、スティリコもそうした将の一人と感じました。

かつて栄華を誇ったローマ帝国の滅び行く様を描いた本巻には、いろいろと考えさせられる文が多いです。


「人間の運・不運はその人自身の才能よりも、その人がどのような時代に生きたか、のほうに関係してくる」

「人間社会とは、活力が劣化するにつれて閉鎖的になっていくものでもある」


千五百年以上の時を隔てて見るからこそスティリコの真っ当さがわかりますが、同じ世代に生きていた場合には滅び行くローマに誰もが暗い気持ちになっていたでしょうし、その中で蛮族出身の武人の言う事に胡散臭さを感じていたとしてもおかしくはありません。世の風潮や時代の流れというものはどれだけ偉大な力を持っていたとしても一人の人間の力ではあがないきれない者なのだという事を感じます。(「スティリコの真っ当さ」も著者の目線を通じて我々が感じているに過ぎないかもしれませんが。)

衰退と滅亡。
これを繰り返す人の世の歴史の流れの中で感じるのは、「人は知識は受け継ぐことはできても経験を受け継ぐ事は並大抵のことではできない」ということです。技術はどんどん進歩するのに歴史は繰り返すということがそれを如実に表していると感じます。受け継がれた知識により技術はどんどんと進歩するのに、戦争の悲惨な経験は忘れ去られ、いつしか同じ事を繰り返すのですね。その流れからはいかに大国ローマであっても逃れられないようです。

国のために奮闘したスティリコの命を奪ったのは蛮族ではなく、スティリコをよく思わない人々による謀略でした。そして皮肉な事にスティリコの忠臣たちは彼の死後、敵である蛮族アラリックの下に走り、ローマの侵略に加勢します。「見限った」という表現がよくあてはまります。「それみたことか」とはこの時代の一読者だから思う心情でしょうね。あと二巻でこのシリーズも終わりますが、その後の地中海世界の行く末も見てみたい、歴史がどのように流転していくのか見届けたい、と思わせる巻でした。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
posted by taka at 12:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ローマ人の物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする