2016年03月27日

読書日記585:世界への扉を開く“考える人”の育て方



タイトル:世界への扉を開く“考える人”の育て方-国際バカロレア(IB)教育が与えるインパクト
作者:大前研一
出版元:ビジネス・ブレークスルー
その他:

あらすじ----------------------------------------------
皆さんは、既に4半世紀前にかかろうとする、今から23年前に語られた大前研一のメッセージをどのように受け止められるでしょうか?
この書籍の元になっている月刊情報誌:大前研一通信では、グローバルな視点で、日本のみならず、世界の政治・経済などの様々な問題を洞察、分析したメッセージを紹介してきました。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。本書、「”考える人”の育て方」は大前研一通信の特別保存版PartIXとして刊行された書籍で、様々な場での大前研一氏の発言をまとめたものです。今回は電子書籍として献本いただきました。

これまでも大前研一通信についてはこのブログで何度も取り上げていますが、今回の「”考える人”の育て方」の特徴は、”考える人”というタイトルそのままに、教育というものについて多く取り上げている点です。またかなり昔、一九八〇年代や九〇年代の大前研一氏の発言についても多く取り上げられていますね。

大前研一氏が一貫して言われているのは、「自分の頭で考えることの出来る人を育てることが非常に重要」ということです。現在の知識詰め込み型の教育では今後の答えのない問題が多く出てくる社会で生きていく人材を育てることは難しく、もっと”考える”ということに重点を置くことが重要だ、と述べられています。この考えには共感できます。

さらにイーロン・マスクのようなシリコンバレーで活躍している実業家を例に挙げ、「枠にとらわれない、これまでの常識や価値観を壊すような人物を育てることが必要」と述べ、日本はイーロン・マスクやジェフ・ベソスのような傑出した一人の才能に負ける、とも述べられています。また本書の後半は国際バカロレアに関する記事となり、その中ではインタビューを受けた方々が全人各教育の重要性についても述べられていますね。

いつも思うのですが、スティーブ・ジョブスのような傑出した才能を持つ人は、人格的に?と思わされる人が多いのも事実かと思います。自分の思いや理想を最優先し、それを実現するためには他の全てを犠牲にする(本人は犠牲にしていることさえ気付かない)人だからこそ、莫大な成功を収めることが出来るのでしょうね。しかしそう思う一方で、親や社会の眼線としては、莫大な成功など収めなくてもいいから、まともな人間に育って欲しい、と思うのも事実です。社会や家庭で求められる人物像から、成功者というのは大きく離れてしまっているのでしょうね。

このあたりが難しいところかと感じます。日本では、戦後すぐのように「なりふり構っていられず、生きていくことが全て」という時代では上に書いた成功者のような人物像が社会的にも容認されていたのでしょうが、今のようなスマートな時代では、成功する前に「壊れた人間」として排除される可能性が非常に強いと感じています。つまり、今の日本からは大前研一氏が言うような「ストリートスマートな人間」が生まれにくくなっているのでしょうね。簡単なのは海外に出ることでしょうが、そうするとなかなか日本という国の利益には結びつきにくい気もします。

つくづく思いますし、本書にも少しかかれていますが、日本のような横並びが賞賛され、異端を許さないような社会の中ではなかなか上記のような成功者はでにくいと思います。ここは日本流の「成功者」を作り出す仕組みを独自に作ることが必要なのでしょうね。日本にも「成功者」と呼ばれる人は多くいますので、彼らのスタイルを研究することも重要と感じました。

本書はいつもいろいろなことを考えさせてくれて、私にとっては非常に役立つ本だと感じています。また次の号も楽しみです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2016年03月19日

読書日記584:ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉



タイトル:ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉
作者:塩野 七生
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
紀元337年、大帝コンスタンティヌスがついに没する。死後は帝国を五分し、三人の息子と二人の甥に分割統治させると公表していた。だがすぐさま甥たちが粛清され、息子たちも内戦に突入する。最後に一人残り、大帝のキリスト教振興の遺志を引き継いだのは、次男コンスタンティウス。そして副帝として登場したのが、後に背教者と呼ばれる、ユリアヌスであった。

感想--------------------------------------------------
ローマ人の物語の38巻です。最終巻まであと五冊とカウントダウンに入りました。長かったローマ帝国の歴史も幕を下ろそうとしています。

本巻では「大帝」と呼ばれキリスト教の振興に大きな役割を果たしたコンスタンティヌス帝の後を継いだコンスタンティウス帝の治世について語られます。四人の皇帝が分割統治する時代を経てライバルを次々と葬り、トップに上り詰めたコンスタンティヌスは子供や甥による分割統治を遺言として残しますが、粛正と衝突によりコンスタンティウス以外は全員、殺されてしまいます。殺戮により全ての片がついていくこの辺りは時代を感じさせますね。

そして、内戦と蛮族の侵入により弱体化したガリアを再興するべくユリアヌスが副帝として起ちます。このユリアヌスの本格治世が描かれるのは39巻ですが、本巻を読むだけでもこのユリアヌスの生涯は波乱に満ちている事が推し量れます。血の粛清を生き残り、幼少時は幽閉され、かろうじて生き延びてわずかな手勢とともに送り込まれたガリアの地で目覚ましい活躍を遂げるユリアヌス。後世、小説などの題材で表されるのも納得できます。

この時代になるとキリスト教が大きな地位を占め始めますが、この理由には世の中が非常に荒んでいた事も理由としてあげられるのではないかと思います。ままならない世では、頼るもの、救いの手を差し伸べてくれるものを求めるのが人の心情であり、頼る先が宗教に向かうのは自然の流れだと感じます。

コンスタンティウスがペルシャを撃退しようと、ユリアヌスがガリア再興を成し遂げようと、ローマを覆うくらい影は払拭できてきません。坂を転がり落ちるように衰退していくローマ帝国ですが、一度このようになってしまうと、もう復興はできないものなのでしょうか??かつての栄光の影さえないローマの姿を読んでいると、現在の様々な国に当てはめ、いまこの国はどの一にいるのだろうか、とか考えてしまいます。

残るは滅び行くだけのローマ帝国ですが、あと五冊じっくりと読みたいと思います。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
posted by taka at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ローマ人の物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月13日

読書日記583:ジャイロスコープ by伊坂幸太郎



タイトル:ジャイロスコープ
作者:伊坂幸太郎
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
助言あります。スーパーの駐車場にて“相談屋”を営む稲垣さんの下で働くことになった浜田青年。人々のささいな相談事が、驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホントスカ」。バスジャック事件の“もし、あの時…”を描く「if」。謎の生物が暴れる野心作「ギア」。洒脱な会話、軽快な文体、そして独特のユーモアが詰まった七つの伊坂ワールド。書下ろし短編「後ろの声がうるさい」収録。

感想--------------------------------------------------
伊坂幸太郎さんの作品です。様々な書籍に書かれた短編を集めた短編集ですね。この人にしては珍しく、文庫です。

本書には全七編の短編が掲載されていますが、それぞれ伊坂作品らしい作品もあり、チャレンジしているな、と思わされる作品もあり、でもやはりどれも伊坂幸太郎作品らしく、ファンとしては楽しめる作品ばかりでした。

本書の中で最もよかったのは「彗星さんたち」ですね。「彗星さん」とは新幹線の清掃係の方たちのことです。東京駅の東北新幹線のホームに行くとよく眼にしますよね。私もよく新幹線使うので眼にすることが多いですが、彼らの会話が中心で成り立っているこのお話は絶妙です。彗星さんたちの心使いやお互いを思いやる会話、そこに微妙に絡むちょっとした謎。読み終えて少し温かい気持ちになるいいお話です。「一人では無理がある」もいいお話ですね。ほっこりとするお話でした。

チャレンジしているな、と思わされたのは「ギア」ですね。近未来を舞台にした、変な生き物の出てくる話です。この話には続編的な話もあるようで、いつか読んでみたいと思いました。

その他の「浜田青年ホントスカ」や「if」、「二月下旬から三月上旬」は伊坂作品っぽいですね。少し謎があり、伏線があり、ユーモアがあり、と安定の面白さでした。そして最後の「後ろの声がうるさい」が全ての話をまとめるお話、という位置付けです。

本書は短編集ですので、長編ほどの重さやボリュームは感じません。しかし伊坂ファンなら読みでしょうね。また最後にデビューから十五年を迎えた伊坂幸太郎のインタビューが載っていました。様々な作品について触れているのですが、私はそこに書かれている全ての作品を読んだことがありました。読んできたなーという感じですが、飽きは全く感じません。この先も伊坂ワールド、楽しみにしています。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
posted by taka at 18:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 伊坂 幸太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月05日

読書日記582:人魚の眠る家 by東野圭吾



タイトル:人魚の眠る家
作者:東野圭吾
出版元:幻冬舎
その他:

あらすじ----------------------------------------------
娘の小学校受験が終わったら離婚する。そう約束した仮面夫婦の二人。彼等に悲報が届いたのは、面接試験の予行演習の直前だった。娘がプールで溺れた―。病院に駆けつけた二人を待っていたのは残酷な現実。そして医師からは、思いもよらない選択を迫られる。過酷な運命に苦悩する母親。その愛と狂気は成就するのか―。

感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの作品です。書き下ろしで、昨年の11月頃に刊行された作品です。

水の事故で意識を失った瑞穂。脳死に限りなく近い状態となった瑞穂に対して、父の和昌と母の薫子は最先端の医療を施すがー。

重い作品です。「脳死」というテーマがまず重いです。「人の死とは何か、生とは何か」という問題に踏み込まなければならず、実際にこのような方が家族にいる方もいらっしゃることを考えると、余程の覚悟を持ってこのテーマを作品として扱うことを決められたのだろうな、と感じます。

脳死した娘、そしてその娘をなんとかして取り戻そうとする父母、違和感を感じる第三者ー。物語は一人の死を巡り様々な人間の思いがぶつかり、交錯していきます。 各人の抱える葛藤を生々しく描き出す筆力はさすがと、思わされます。

最初は扱っているテーマの重さや各人の思惑の葛藤などから読みにくさを感じたのですが、最後まで読み終えた時には、よい物語を読んだ、と感じられる話でした。ただ、やはり物語だけあってあまりにもきれいすぎる終わり方なので、様々な論はあるかと思い、評価の分かれる作品だとは思います。現実にこのような問題に直面している人からしたら、大きな違和感を感じるかもしれません。ただ、個人的には変に現実的な終わり方よりもよほどよかったかと感じました。

「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして子供のために狂えるのは母親だけなの」

この一文が刺さります。
また本書 にでてきた心臓移植をせざるを得ない子を持つ親の描写にも胸が痛みました。私も小さな子供を持つ親だからかもしれませんが、子供がこのような状況になったらどうするのか。またこのような事故は可能な限り減らすにはどうすればいいのか。そのあたりを真剣に考えさせられました。

上にも書きましたように客観的にみると評価は分かれると思いますが、本書は個人的には東野圭吾さんの作品の中でもかなり良い作品だと感じました。ベテラン中のベテランですが、まだこれだけの本を出すのか、と思わされ、まだまだ東野圭吾も読まなければ、と思いました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
posted by taka at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする