2016年01月31日

読書日記577:呼吸で心を整える



タイトル:呼吸で心を整える
作者:倉橋竜哉
出版元:フォレスト出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
イライラ、怒り、緊張、妬み、悲しみを消して、「集中力」「自制心」「継続力」を高める。心を浄化する「マイブレス式呼吸法」

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。

「呼吸で心を整える」という本書は、ストレスや不安を「呼吸」で打ち消そうということで、その方法について書かれた本です。

「呼吸で心を整える」というタイトルだけを見ると、「呼吸だけで心が整うのだろうか?」と思ったりもしましたが、読むと納得です。「不安やストレスを感じている人は呼吸が浅くなり、余裕のある人は呼吸が深い」という言葉には納得できます。

本書で書かれている呼吸法は幾つかあります。「鎮める呼吸」や「歩く呼吸」、「数える呼吸」などですが、それぞれ具体的な呼吸法や呼吸の姿勢が書かれているので非常に分かり易いですね。重要なことは「呼吸」にしっかりと集中することです。呼吸に集中することで他の雑念を振り払い、心を切り替えることが出来る、さらに呼吸することで横隔膜を動かし、新陳代謝を活性化させ、身体を健康にする。本書を読んでいくと、その中身は理論的で分かり易いです。

「呼吸」というのは毎日誰もが当たり前に行っていることですが、この呼吸のやり方を少し変えるだけで様々な効果が得られるのであれば、やってみて絶対に損はないかと思います。呼吸法にこれだけの効果があるということを、この本を読むまで私は知りませんでした。本自体もそんなに厚くなく簡単に読めますので、心を整え、健康になりたいと言う人にはぜひお勧めです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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2016年01月23日

読書日記576:サラバ! 上



タイトル:サラバ! 上

作者:西 加奈子
出版元:小学館
その他:

あらすじ----------------------------------------------
1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに―。

感想--------------------------------------------------
西加奈子さんの作品です。もともと読んでみたいと思っていた作家さんなのですが、本屋大賞の候補にもなっていて、面白そうだと思って読んでみました。上下巻、各三百五十ページほどの本です。

西加奈子さんの本は初めて読みますが、とても読みやすい本です。書き方もそうなのですが、何より読んでいて「わかる、わかる」と頷ける場面がとても多いと感じます。物語は圷(あくつ)家の長男、歩の出生から始まる物語です。存在感の薄い父、母である前に女であろうとする母、変わり者で常に母とぶつかる姉、そしてそんな家で存在感を消しながら過ごす歩。イラン、大阪、エジプト、再び日本、と場所を変えながら歩の出生から高校時代までが上巻では描かれています。

作者は女性なのに、男子の思春期の考え方をよくここまで書けるな、と感動すら覚えました。変わり者の姉の影響を受けまいと存在感を消す歩、エジプトでの運命的な出会い、そして崩壊していく圷家。とんでもない家族の中でうまく存在感を消して居場所を作り生きようとする歩ですが、その描き方には全く悲壮感がなく、むしろ思わず笑ってしまうような描写が多くて、とても楽しく読めてしまいます。普通に読んだらこんな家庭に生まれたら(特にこんな姉を持ったら)悲劇なのですが、それを感じさせません。これは著者の独特な書き方によるものだと思います。

「姉はまたやらかしていた」
↑この描写、好きです。特に同性のリアルな視点で描いているので、特にいいです。

母の離婚をきっかけに女だらけの家に一人住み、姉が怪しげな宗教にはまり始めた歩。…なんか、連ドラにするにしても奇抜な話なのですが、描写がリアルなのに面白くって、目が離せません。なるほど、この作家さんは売れっ子と呼ばれる訳ですね。…同性の目から見ても歩は中高生にしては自意識が低すぎですね…。なんか植物みたいです。

次巻も続けて読む予定です。楽しみです。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2016年01月16日

読書日記575:遠まわりする雛



タイトル:遠まわりする雛<「古典部」シリーズ> (角川文庫)
作者:米澤穂信
出版元:KADOKAWA / 角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
省エネをモットーとする折木奉太郎は〈古典部〉部員・千反田えるの頼みで、地元の祭事「生き雛まつり」へ参加する。十二単をまとった「生き雛」が町を練り歩くという祭りだが、連絡の手違いで開催が危ぶまれる事態に。千反田の機転で祭事は無事に執り行われたが、その「手違い」が気になる彼女は奉太郎とともに真相を推理する。あざやかな謎と春に揺れる心がまぶしい表題作ほか〈古典部〉を過ぎゆく1年を描いた全7編。<古典部>シリーズ第4弾! 

感想--------------------------------------------------
氷菓」、「愚者のエンドロール」、「クドリャフカの順番」に続く、折木奉太郎、千反田える、伊原摩耶花、福部里志の四人が活躍する古典部シリーズの第四弾です。本作は全七編の短編集となっていて、神山高校入学当初から次の四月までを描いています。

「日常の中の些細な謎を解く」というスタンスはこのシリーズの他の作品と変わりないのですが、本作は特に四人の心の動きに沿って描いています。そしてこの心の描写が青春小説っぽくって、とてもいいです。摩耶花と里志、えるとホータロー、この組み合わせがどうなっていくのか、次巻がとても楽しみになります。しかし青春小説としてはその心の動きがとてもゆっくりで穏やかで、読んでいる側としてはじれったくもなったりするのですが、この著者の小説は皆、そういうものであり、また展開も読者が予想していた展開と違ってきたりするので、この速度がちょうどいいようにも感じられます。

省エネモットーのホータロー、好奇心旺盛で唯一、ホータローを動かせる「私、気になります」なえる、自他ともに認めるデータベースたる里志、強気な口調と裏腹に繊細な摩耶花、とキャラがはっきりしていて、それぞれがそれぞれの個性に強いこだわりを持って動くため、物語にメリハリがでてきています。これがとてもよくって、巻を重ねるごとにどんどんと面白くなってきています。特に「クドリャフカの順番」と「遠まわりする雛」は、それまでの二作とだいぶ印象が違って、面白く読みました。

ベストセラー作家さんだけあって、どのような物語でも自在に書いて読ませてしまうあたりはさすがです。ただ、個人的にはこのシリーズは長く続けてほしいな、と感じます。小鳩くんと小山内さんの「春期限定イチゴタルト事件」から始まる小市民シリーズは続作がでてないですし、キャラも古典部シリーズよりブラックなので、こちらには期待大です。

ブラックな終わり方をする作品も多いのですが、文章力がとても高いですし、ミステリーの作りが非常にうまいのでこの方の作品は大好きです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
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2016年01月09日

読書日記574:ローマ人の物語〈35〉最後の努力〈上〉



タイトル:ローマ人の物語〈35〉最後の努力〈上〉
作者:塩野七生
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ローマの再建に立ち上がったディオクレティアヌス帝は紀元293年、帝国を東西に分け、それぞれに正帝と副帝を置いて統治するシステム「四頭政」(テトラルキア)を導入した。これによって北方蛮族と東の大国ペルシアの侵入を退けることに成功。しかし、膨れ上がった軍事費をまかなうための新税制は、官僚機構を肥大化させただけだった。帝国改造の努力もむなしく、ローマはもはや、かつての「ローマ」ではなくなっていく―。

感想--------------------------------------------------
全四十三巻のローマ人の物語も残すところ数巻となってきました。「三世紀の危機」と呼ばれた国が三分される危機を乗り越え、短命の皇帝が続く時代も乗り越え、ローマは皇帝ディオクレティアヌスが治める絶対君主制の時代へと移っていきます。

本巻を読むと、同じ「ローマ帝国」でもカエサルやアウグストゥスの治めていた時代とは大きく変わってきている事がよくわかります。はじめに国民ありきで成り立っていた元首制のローマ帝国が、はじめに国ありきの絶対君主制のローマ帝国へと移行していきます。

本巻を読むと、ずいぶんと帝国自体が住みにくい時代になったのだろうな、と感じさせます。撃退したとはいえ常に蛮族や外国の脅威にさらされ、税金は高くなり、統制や圧力が厳しい世の中になっていったのだから当然でしょうね。四人の皇帝が治める四頭制の時代は外敵から国を守るにはうまく機能しますが、その分、国の維持に金がかかり、小さな政府から大きな政府へと変わっていきます。

過去のローマはもっと曖昧さや自由を許容していた雰囲気があるのですが、もうこの時代になると国も県単位で細かく統治され、非常に厳密な、曖昧さを許さない、システマチックな国になってきていると感じます。…読みながら、なんか最近の世の中に似ているな、と感じました。確かに便利になり、効率的にはなっているのでしょうが、曖昧さを許さない世の中は窮屈で、生きにくさを感じます。

カエサルやアウグストゥスの時代には、税金だけではとても公共整備は成り立たず、公共事業は私人の社会還元とも呼ばれる寄付でまかなわれていた、と書かれています。要するに、大金持ちが自腹を切って国のために尽くす訳ですが、このような慈善事業が当たり前に行われていた点が、生き方に余裕のあった時代だったのだな、と感じさせます。システムを作り、細かく制度を定めて統制してお金を徴収せざるを得なかった時代と、一個人の心にゆだねることで金をまかなう事ができた時代。本書には書かれていませんが、人としての生き方や考え方にも二つの時代では大きな違いがあったのだろうと想像させられます。そしてこれは現在にも通じる考え方ではないかと感じます。契約などに代表される「仕組み」「取り決めごと」「システム」というものは厳然として確かではあるのですが、良くも悪くも人の心の入り込む余地を奪うため、これらが支配する世界は人の心の通わない、どこか冷たい世界になっていきます。まさにこれがこの三世紀末のローマ帝国なのだろうな、と感じます。


人は自分が一度犯した間違いから学ぶ事はできますが、他人の犯した間違いから学ぶ事は、なかなかできないのではないか、とも感じました。それが「歴史は繰り返す」という言葉に繋がっていくのだと思うのですが、この「他人の失敗から学ぶ」ということをできるようになる事が、人類の進歩の目安になるんじゃないか?、なんて考えたりもします。他人の失敗から学ぶ、つまり歴史から学ぶ事で、繁栄と滅亡というスパイラルから抜け出していくことができるのではないだろうか?なんて考えたりもします。ローマ帝国はこの百年あまり後に蛮族により滅ぼされます。繁栄と滅亡は避けられない流れだとしても、悲劇をなるべく回避できる方法を過去の歴史から学べたりしないんだろうか?それが現在の多くの国に求められている事なのではないだろうか?なんて考えたりもした巻でした。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2016年01月02日

読書日記573:ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか



タイトル:ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか
作者:ピーター・ティール (著), ブレイク・マスターズ (著), 瀧本 哲史 (その他), 関 美和 (翻訳)
出版元:NHK出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるか。スタンフォード大学起業講義録。

感想--------------------------------------------------
久しぶりのビジネス書です。ゼロ・トゥ・ワンとはゼロから1を生み出すこと、いまある1をnに増やすのではなく、そこにない新しい何かを創造する企業を生み出すための秘訣について書かれた本です。

著者のピーター・ティールは世界最大のオンライン決済システム”ペイパル”の共同創業者で、現在はエンジェル投資家として活躍している人です。ビジネスの世界で大成功を治めた人の言葉ですので、重いものがありますね。

「賛成する人がほとんどいない、隠された真実はなんだろうか?」

本書を通じて繰り返し問われるティールのこの問いが本書をよく表しています。Facebookしかり、Twitterしかり、誰も見向きもしない、想像すらしていなかったことに価値を見いだせるか、そこに気付けるか、が成功の鍵となる、と著者は言っています。

「独占こそが重要」、「成長に不可欠なのは平均の考え方ではなく、べき乗則」といった本書で示されている考え方は他のビジネス本には見られない独特な考え方です。「Googleのような独占状態にあってこそ、金儲けから離れてイノベーションに注力できる」、「平均的に成長する企業はなく、爆発的に成功する起業か、失敗する企業のどちらかしか存在しない」といったこれらの考え方は、従来のマーケティング理論には当てはまらない考え方ですが、実際の市場を見ていると彼の言う事は誤っていない事がよくわかります。アップルしかり、マイクロソフトしかり市場で大きな地位を占める企業があってこそ、その分野は進歩しますし、様々なイノベーションが進んでいきます。一方で中途半端な地位では競争状態の赤い海(レッド・オーシャン)に飲み込まれてあっぷあっぷとなります。

本書はビジネス書であるとともに、読み手を鼓舞し、勇気を与える書でもあります。

「人と同じ事をして何が楽しい?人と違ったことをしてこそ、新しい価値を生み出せるし、大成功できる。世の中の流れがどうあろうと、誰が何を言おうと、世界に隠された真実はまだまだたくさんある。それを探そうぜ!」

このような著者の言葉が聞こえてきそうです。確かに世界は探検し尽くされたように見えるが、目に見えない隠された真実はやまほどあり、それを探そうとする事が成功への道なのでしょうね。どれだけ気付けるか、探す事ができるか。私はこの本を読んでいてやはり有名なビジネス書である「仕事は楽しいかね?」を思い出しました。書かれた時代や書かれ方は大きく異なりますが、共通点の多い本だと思いました。


また本書はエリック・リースの名著「リーン・スタートアップ」を否定しているということでも有名な本です。しかし本書を読んでいくとわかるのですが、本書と「リーン・スタートアップ」で語られているレイヤーが大きく異なることがわかります。主に新規のビジネスの立ち上げるための方法について書かれているのが本書で、逆に立ち上げた後について書かれたのが「リーン・スタートアップ」ですね。一口に比較はできませんが、全てを否定している訳ではない、と感じました。

・エンジニアリング
・タイミング
・独占
・人材
・販売
・永続性
・隠れた真実

これらはスタートアップのために必要な事として書かれている項目ですが、これらの項目は古くからのビジネス書に記載されている項目によく当てはまります。「人材」では、「誰とともに始めるか、誰をバスに乗せるかが重要」と書かれていますが、これは「ビジョナリー・カンパニー2」を彷彿とさせます。

「この世界に隠された真実に気付くこと」。これは即ち「世界をいかにフラットな目で見て、本質を探れるか」ということです。多くの情報が行き交ういまのような時代だからこそ、自分の価値観を信じて判断をする必要があるし、なによりもその正しい価値観を育てなければならない、と感じました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス
posted by taka at 09:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする