2015年12月26日

読書日記572:王とサーカス by米澤穂信



タイトル:王とサーカス
作者:米澤穂信
出版元:東京創元社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?

感想--------------------------------------------------
米澤穂信さんの作品です。このミステリーがすごい!の第一位に選ばれるなど、非常に評価の高い作品です。米澤穂信さんは昨年も「満願」でこのミステリーがすごい!の第一位に選ばれていますね。いま最も面白い本を書く作家さんの一人だと思います。

ジャーナリスト大刀洗万智は滞在中のカトマンズで王族の殺人事件に遭遇する。そして取材を開始しようとした矢先、一つの死体が万智の前に現れるー

まず冒頭のカトマンズの描写からして引き込まれます。街を綿密に描き上げていて、フィクションのはずなのにノンフィクションかと思わせます。ここまで綿密に、舞台をしっかりと描く作品は少なくなったなあ、と個人的には感じます。キャラクターやプロットもそうですが何よりも描写で見せていますね。文章力の確かさもさることながら、綿密な調査を感じさせます。

物語は実際に起きた王族の殺人事件を背景に、一つの死体を巡るミステリーとして展開します。報道とは何か、記者とは何か、そうしたことを読み手に突きつける作品です。タイトルの「王とサーカス」もそうした報道の意味を問う言葉ですね。物語の途中で一度、そして最後に再び現れる言葉ですが、ニュースを伝える事の意味を万智に問いかける言葉です。(詳しくはぜひ読んでください!)

物語の構成は階層的で深いです。示された、と思われた真実と、そのさらに奥に隠された真実、そしてその裏にあるネパールという国の抱える残酷な問題。そうした事柄を一つの殺人事件の背景に潜ませてここまで完成度の高い物語を描く事のできる米澤穂信さんはさすがです。「満願」や「儚い羊たちの祝宴」など傑作の多い作家さんですが、間違いなくそのリストに加わる作品ですね。「折れた竜骨」など、普通と違う舞台や設定を下敷きにしたミステリを書くのが特徴的な作家さんですが、本作もまさにネパールという異国の地を舞台にしたミステリーということで、米澤ワールドの真骨頂だと感じました。


本作の主人公である大刀洗万智は「さよなら妖精」の登場人物です。「さよなら妖精」と直接のつながりはないですのでこの本だけでも楽しめますが、読んでおくとさらに楽しむ事ができますね。

大刀洗万智が活躍する作品は「真実の10メートル手前」が刊行予定です。こちらもぜひ読みたいですね。「氷菓」などに続く新しいシリーズの始まりでしょうか。気がつけばこの著者の作品もかなり読んでいます。次作もとても楽しみです。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2015年12月20日

読書日記571:子どもと食べたい時短おやつ



タイトル:子どもと食べたい時短おやつ
作者:菅野 のな
出版元:辰巳出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
人気オーガニック料理教室を運営する著者が、ママや子どもたちから支持された自然派おやつを一挙公開。小さな子どもにアレルギーが多い、卵・乳製品は一切使いません(半数は小麦も不使用)。素材の味を生かすシンプルなレシピは、ほぼ全てが作業時間20分以下。忙しいママでも簡単につくれます。
食育にこだわる教室の方針を反映し、調理方法だけでなく、おやつに対する考え方を整理できる自己分析シートも収録。おやつ初心者にもおすすめの一冊です。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。

これまで献本いただいた本の多くは自己啓発や政治・経済に関連する本でしたが、今回の本は料理の本です。著者は武蔵小杉で料理教室を開かれている方で、ページを繰るとすぐに様々なおやつのおいしい写真が広がります。

本書の特徴は、おやつのどれもが二十分程度で用意ができることと、アレルギー対策をされたおやつが多い、という二点ですね。各ページの右上には料理を準備するために必要な時間が書かれており、時間の目安になりますし、卵、乳製品は一切使われていませんので、アレルギー体質のお子様にも安心して提供できます。

本書はパートが六つに分かれており、ケーキ・クッキー、ゼリー、といった具合に項目が分かれています。中には「米粉のおやつ」・「和のおやつ」といった他のおやつ本にはなかなか見当たらない項目もあり、それも本書の特徴になっています。バナナケーキやフルーツゼリーといった定番のお菓子からくずきりや塩麹クラッカー、緑黄色野菜バーといったものもあり、バラエティーに富んでいると感じました。

こうしたお菓子のメニューというのは最近ではネットでも手軽に検索できますが、そうしたネットでのメニューの違いとしては、上記の「アレルギー対策済み」「短時間でできる」といったことかと感じました。実際に作ってみたお母さんの声も書かれていたりして、参考にもなりますし、何より写真が大きくて美味しそうに見えます。

私は料理は全くできませんが、、、奥さんに作ってもらおうかとおもいました。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2015年12月13日

読書日記570:天空の蜂



タイトル:天空の蜂
作者:東野 圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。

感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの、かなり前の作品です。福島第一原発の事故があったからでしょうか、今年の夏頃に映画化もされています。

奪取された軍用大型ヘリ『ビッグB』は原子力発電所『新陽』の真上に自動操縦で誘導された。燃料が切れ、ヘリが墜落することを阻止するためにテロリストとの攻防が始まるー。

ヘリの設計士である湯原の視点を中心に、設計士、刑事、原発の操縦院、犯人を追う刑事と物語は様々な人間の視点を交えながら進んでいきます。東野圭吾さんの作品独特の淡々としていながらも簡潔な語り口で物語は進んでいきます。原発の仕組みやヘリを無線操縦する仕組み、そういったものが適切に語られていくのは、もともとが理系の出身である東野圭吾さんだからでしょうね。説明的な部分も読みやすく、軽水炉と増殖炉の違いなどもよくわかりました。

物語ははらはらする展開があり、プロットもしっかりしていて読みやすいのですが、個人的には微妙に山谷がないなあ、と感じました。人の心に迫る物語を多く書いている作家さんですが、SF的なテクニカルな部分の描写が多くなると、なぜか淡白な印象を受けます。個人的にはやはりこの人の作品は「容疑者Xの献身」で有名な探偵ガリレオこと湯川学が活躍する作品か、「新参者」などで有名な刑事:加賀恭一郎が活躍する作品がいいですね。読者の心に迫る作品が多いです。

はずれ、というわけではありません。普通に見ればかなりの秀作です。ストーリーもいいし、終わり方もいいです。ただ、この方の作品全体で見ると、普通の作品と感じました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
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2015年12月06日

読書日記569:ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉



タイトル:ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉
作者:塩野 七生
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
疫病の流行や自然災害の続発、そして蛮族の侵入といった危機的状況が続く中、騎兵団長出身のアウレリアヌスが帝位に就く。内政改革を断行するとともに、安全保障面でも果断な指導力を発揮し、パルミラとガリアの独立で三分されていた帝国領土の再復に成功。しかし、そのアウレリアヌスも些細なことから部下に謀殺され、ローマは再び混沌のなかに沈み込んでいく。のちに帝国を侵食するキリスト教も、静かに勢力を伸ばしつつあった。

感想--------------------------------------------------
「ローマ人の物語」の34巻です。<迷走する帝国>の下巻ということで「三世紀の危機」と呼ばれる蛮族の侵入や帝国三分の危機が描かれています。崩壊一歩手前まで追い込まれている、という印象ですね。

ガリア帝国、パルミラ王国とローマ帝国内に二つの国ができてしまった危機を乗り越えられたのは、皇帝アウレリアヌスのおかげですが、彼もまた謀殺されてしまいます。この時代は本当に皇帝一人の治世の期間が短く、しかもほとんど全員が殺されていくため、皇帝になるのも命がけだったのでは、と思います。

またこの巻では特にローマの「非ローマ化」が進んでいく様がよくわかります。重装歩兵から騎兵を中心に軍を組み替え、攻めるよりも攻め込まれた際の対応を重視するようになってきたあたり、ローマの国力がだいぶ落ちていることがわかります。

迷走する帝国は次第に国力を衰えさせながら、大帝コンスタンティヌスの時代へと近付いていきます。次巻も楽しみです。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
posted by taka at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ローマ人の物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする