2015年11月22日

読書日記567:BEATLESS by長谷 敏司



タイトル:BEATLESS
作者:長谷 敏司
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
今から一〇〇年後の未来。社会のほとんどをhIEと呼ばれる人型ロボットに任せた世界。人類の知恵を超えた超高度AIが登場し、人類の技術をはるかに凌駕した物質「人類未到産物」が生まれ始めた。黒い棺桶のようなデバイスを持つレイシア。彼女こそが人類の理解を超えた超高度AIによって作り出された「人類未到産物」だった。17歳の少年、遠藤アラトはレイシアと出会う。人間がもてあます進化を遂げた人間そっくりの“モノ”を目の前にし、アラトは戸惑い、疑い、翻弄され、そしてある選択を迫られる。信じるのか、信じないのか―。「ヒト」と「モノ」のボーイ・ミーツ・ガール。彼女たちはなぜ生まれたのか。彼女たちの存在と人間の存在意義が問われる。そして、17歳の少年は決断する―。

感想--------------------------------------------------
先日読んだ「あなたのための物語」と同じ著者による作品です。六百五十ページオーバーでさらに二段組み、という相当な分量の作品です。ジャンルで言えばSFです。ライトノベル的な要素もありますね。

いまから百年後の未来、人形ロボットhIEが自然に社会に存在する世の中で、遠藤アラトは少女の姿をしたhIE、レイシアと出会う。圧倒的な力を保有する彼女は人類未到産物と呼ばれる、人の知能を超えたAIによって生み出されたhIEだったー。

ボーイ・ミーツ・ガールという台詞でライトノベル色の強い作品かと思えば、必ずしもそうではありません。確かにレイシアとアラトの関係が物語の主軸ではあるのですが、そこには人と、心を持たない”モノ”との関係性に置き換えられて描かれています。心を持たないレイシアに惚れ込むアラトと、世界を破滅に導きかねない力を持つ”モノ”としてレイシアを見る世の中。その描き方は、創り込まれた重厚な世界観をバックに、濃密に描かれていきます。

世界の創り込み、細部にわたるテクノロジーの描写などは半端ではありません。この世界とテクノロジーの描写には相当な分量が割かれており、少女型hIE同士の死闘というライトノベル的な展開でありながら物語を重厚に感じさせます。特に後半の三百ページはどんどんと物語の緊迫度が増していくため、ページを繰る手が止まらなくなります。一方で前段の三百ページは世界や技術、そして各登場人物の生い立ちに割かれているため、やや冗長に感じます。ここを読みきれれば、最後まではあっという間です。

アナログ・ハックという言葉が一つのキーワードとして出てきます。形に意味を与える事で人に特別な感情を持たせる(ハックする)事、という意味合いで、物語中では”モノ”にしかすぎないhIEに少女の形をとらせることで、アラトの心はアナログ・ハックされている、と指摘をされています。しかし将来的にこのような現象は、きっと起きてくるんだろうな、と感じました。本書はライトノベルのようでありながら世界観とテクノロジーの描き込みが尋常ではないため、後々の世はこのようになるかもしれない、と感じさせるリアルさがあります。人の頭脳を遥かに超える超高度AIが操る世界、という未来像は様々な映画や小説で描かれていますが、そのような世界が実際にくる可能性はきっと高いのでしょう。そのような世界で問題となるであろう人と”モノ”の付き合い方について真剣に描かれていると感じました。

本書に出てくる超高度AIの一つは、「人の問いの定義の曖昧さが超高度AIの限界となる」といった趣旨の事を言っています。これもおそらくそうなのでしょう。人の知能を遥かに超えたAIが現れたとき、人はそのAIに対してどのように接するべきなのか、きっと将来にはそのような問題がでてくるのだと思い、この作品はそれを先取りしているとも感じました。

長大な小説であり、描写も複雑で難解で、ライトノベル?にしては相当に読むには時間のかかる小説ですが、ここまで創り込まれた作品は、あまり知りません。そして最後の終わり方も非常に好きです。SFや未来の世界にじっくりと思いを馳せたい方にはお勧めです。

個人的にはこの小説は十代の時間と集中力が十分にある時期に読む小説だと感じました。この年になると、読み切るだけで大変です。。。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス