2014年04月23日

読書日記479:そして戦争は終わらない 〜「テロとの戦い」の現場から



タイトル:そして戦争は終わらない 〜「テロとの戦い」の現場から
作者:デクスター フィルキンス (著)、
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ハルバースタムの再来と絶賛された若きジャーナリストは何を見たのか?ファルージャでは、若い米軍兵士のあとについて銃撃戦の中を走り回り、カンダハールでは、地雷原を楽しげに飛び跳ねる子どもたちに大声を張り上げる。非常事態と日常が交錯する戦地で、米軍兵士、住民、宗教指導者、反政府軍兵士などを丹念に取材。時代、国境、宗教を超えた人間の本質に迫る。全米書籍批評家協会賞、「ニューヨーク・タイムズ」紙年間ベストブック。


感想--------------------------------------------------
本書の著者はアメリカ人ジャーナリストの方です。ニューヨークタイムズ紙の海外特派員としてアフガニスタン、イラクに駐在し、戦火の中で取材を続けたその結果がまとめられたのが本書になります。米軍と行動を供にした時の状況が多く書かれていますので、視点はやはりアメリカ的ではありますが、それでもかなり中立的な立場で書かれていると感じました。本書は全米書籍批評家協会賞など数多くの賞を受賞した、極めて評価の高い本ということで読んでみました。

本書には著者がアフガニスタン、イラクに駐在した際に出会った事件や、人々の生の声が書かれています。そこに私的な感情は無く、米軍兵、イラク市民、武装兵力、統治者の声が分け隔て無く書かれています。そしてそこに描かれている人々は至って普通の人間です。

本書を読んで最終的に思うことは、まさに表題の通り「そして戦争は終わらない」ということです。このような状況にどうしたら終止符を打つことが出来るのか、たとえ世界の一つの地域での戦争が終結しても他の箇所でまた別の戦争が起きる、それだけではないか、と考えさせられます。

本書を読むと、「戦争」というものに対する意識が大きく変わります。戦争というと「○○軍と××軍が戦う」というイメージが強いですが、本書で描かれている戦争はそんなに簡単なものではありません。米軍に敵対する武装勢力は銃を置くことで簡単に市民に紛れ込み、市民を疑って彼らの住居を捜索するたびに市民の米軍への敵対意識は増幅し、さらに武装勢力が拡大していく−そんなことがずっと続いています。また本書を読んでいて違和感を覚えるのは、イラクやアフガンでは「話していることの中身が、本当である保証が全くない」ということです。相手の話していることが本当なのか、相手が本当のことを言うことで何か得があるのか、そんなことを考えながら常に会話を続ける、こんなことは日本ではまず考えられないことです。そして何より恐ろしいのは、周囲の人間のほとんどが自分達を憎んでいる地域を統治しなければならないことがある、ということですね。絶対に一人で徒歩で外出などできず、常に防護用の車の中にいる必要があるそうです。

本書に書かれている「戦争」は、少なくとも私の知っている「戦争」とは大きく異なります。私の知っている戦争は画面の向こうで大局観や要約が語られるものですが、本当の戦争の恐ろしさとは上記のような「混沌」といつ訪れるかもしれない死に怯えつつ暮らす生活にあるのだ、ということがよくわかります。誰が敵なのか、どうすれば争いが終わるのか、誰が何を求めているのか、そんなことさえ全くわからないまま暮らさなければならない戦地の人々の悲惨さは想像を遥かに越えます。

路上に転がるいくつもの死体、身代金を払ったのに死体となって帰ってくる誘拐された子供、常に狙撃の危機に直面している行政庁舎、人だかりに突っ込み自爆する車、爆弾テロの音で目覚めるイラクの朝。まさに狂気の世界であり、著者も書いていますがこうした世界に住んでいると、それが狂気であるかどうかさえもわからなくなるそうです。自分が恐怖を感じているのか、死のすぐ側にいると視野が狭くなりすぎてそれさえも分からなくなるようです。著者もタリバンに誘拐されたり、激戦地の戦闘に同行したり、危うく法廷に連れされれて処刑されそうになったりと、命を危険に曝し続けていますが、それでも戦地に留まり続けているようです。

本当に凄まじい本です。戦争を現実として、自分たちのすぐ隣にあるものとしてここまで描いた本と言うのは他に無いのではないかと思います。四百六十ページと分厚い本でありますが、読む価値のある本だと思います。そして読み終えると「戦争」というものに対する意識が、きっと変わっているのではないかと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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posted by taka at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする