2013年03月27日

読書日記406:永遠の0 by百田 尚樹



タイトル:永遠の0
作者:百田 尚樹
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。


感想--------------------------------------------------
本書「永遠の0」は非常に有名な作品です。巷での評価が非常に高く、私も読んでみたいとずっと思っていたのですが、ようやく読むことができました。巷の評判に違わず、読み終えて胸の熱くなる作品です。ここまでの作品は久しぶりに読みました。

自分の祖父が本当の祖父でないことを知った健太郎は、姉の慶子と供に終戦間際に零戦の特攻で亡くなったという本当の祖父、宮部久蔵について調査をはじめる。そして健太郎たちは祖父の素顔を知ることになる−。

本作は、健太郎たちがかつて戦争を戦った人々に対してインタビューするという形式で構成されており、本作の大部分はそうした人々の言葉によって構成されています。健太郎たちの祖父であり零戦のパイロットだった宮部久蔵について知る人々が、当時の宮部久蔵について語り、本当の祖父の姿を浮き彫りにしていきます。

本作のメインのテーマは言うまでもなく戦争です。真珠湾からはじまりミッドウェー海戦、マリアナでの戦い、ラバウル、ガダルカナ…。その名前は聞いたことはあっても、どのような位置づけなのか分からなかった戦場、会戦が一つ一つはっきりと分かるように書かれています。そしてそれだけでなく、上層部の無謀な命令のために若くして命を散らすことになった兵士達の無念さ、潔さ、凄まじさがひしひしと読む者に伝わってきます。

戦争の最も悲惨な側面である「特攻」について、本作では特に真正面からはっきりと描いています。死ぬことが運命付けられた十死零生の作戦のなんと恐ろしいことか。そして本書の中で著者ははっきりとこの特攻を否定し、「特攻に行った人々は誰一人として死にたくなかったはずだ」と言っています。

「戦争」について小説で取り上げるというのは、非常に難しいことだと感じます。戦争というものを体験していない人間が、その苛烈さ、悲惨さを描くのは非常に難しいですし、少しでも表現を間違えるとすぐに思想がかってしまったり、様々な人々の名誉を傷つけることになってしまうからです。しかし本作はそうした問題をしっかりと乗り越え、一人の人間の人間ドラマを通じて戦争の悲惨さ、愚かさをしっかりとしかもわかりやすく描いています。戦争の実情を、分かり易くしっかりと描いているというこの一点だけでも本書は特筆すべき書籍だと思います。本書を読んだ戦争体験者の方々からは「よくぞこうした本を書いてくれた」という声が聞こえてくるそうですが、そうだろうな、と感じます。

しかし、本書を読んでいると軍部上層部には本当に腹が立ちますね…。自分達のことだけを考え戦場の兵士達を使い捨てにして暴走する軍部の上層部。しかし彼らに似た姿の人々は今でも私たちのそばにいるのだろうな、とも感じます。

さらに本書ではメディア、特に新聞に対しても非常に厳しい見方をしています。軍部の暴走を誉めそやし、その軍部による戦争への道を切り開いたのは新聞だと、登場人物の一人は切り捨てています。確かにメディアというものは世の中の雰囲気を作るのに最適な戦略であり、インターネットなどのない当時では新聞によって世論が作られていたといってもいいのではないかと思います。

国のために命を捨てることをよしとした戦時中の日本を指し「当時の日本はおかしかった、狂っていた」と多くの人は言います。しかしこのような問いを発すると、「では、今の日本はおかしくはないのか?」という問いにすぐに行き着きます。戦時中の日本人のなかで自分たちがおかしいと気付いていた人々は僅かであり、多くの人々は何かおかしいと思いながらも「仕方のないこと」と考えていたに違いありません。しかしこの状況は、今の日本にあてはまるところもあるのではないかと考えたりもします。もしかしたら数十年後には、「二十一世紀初頭の日本はおかしかった」と言われているかもしれません。

しかしどのような生活であれ、今の状況は戦時中よりは遥かにましです。このような現在の生活は、家族をはじめとする己の愛する人たちを守るために命を賭した人たちの犠牲に成り立っているのだということを、決して忘れてはならないと本書を読むと感じます。
もうすぐ戦後七十年になり、戦争を実体験として知っている人はもうあと数十年でこの世界からいなくなってしまいます。そうした時代だからこそ、このような本が出版されたことには非常に意義があるとも感じました。本当に日本人必読の書とも言えるような本です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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タグ:永遠の0
posted by taka at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 百田 尚樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする