2011年03月26日

読書日記263:新参者 by東野圭吾



タイトル:新参者
作者:東野圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。


感想--------------------------------------------------
久しぶりの東野圭吾さんの本です。本作は2009年の「このミステリーがすごい!」のNo1に選ばれた作品です。つい先日まで阿部寛さん主演でドラマも放映されていましたので御存知の方も多いのではないでしょうか。

日本橋署に異動して来た「新参者」の警部補、加賀恭一郎は一人の女性が絞殺された事件を担当する。加賀は事件にまつわる謎を一つ一つ、丁寧に解きほぐしていくー。

本作も「赤い指」同様、寡黙でストイックで剣道の達人の刑事、加賀恭一郎が活躍する作品です。ただ、本作では随分と加賀のイメージが柔らかくなったように感じられます。本作は「第一章:煎餅屋の娘」から「第九章:日本橋の刑事」までの全九章で構成される作品です。各章はそれぞれ煎餅屋、時計屋、料亭、瀬戸物屋といった日本橋界隈で生活を営む人々の視点で語られていき、彼ら、彼女らが抱える悩みや謎を、殺人事件の調査を行う加賀が解きながら殺人事件の真相に少しずつ近づいていく、という物語構成になっています。

まず驚かされるのはその構成の巧みさです。各章で扱われるのはそれぞれ殺人事件の本筋とはあまり関わりのない小さな事件ばかりです。被害者がある洋菓子屋に通い詰めていた理由、被害者の部屋に残されていた人形焼きの謎、時計屋の主人が犬の散歩の途中で寄り道をしていた理由・・・。どれも小さな謎なのですが、それを加賀は丁寧に解きほぐしながら少しずつ殺人事件の真相に近づいていきます。殺人事件に関わる一つ一つの小さな謎を日本橋界隈の人と風情に結びつけ、大きな一つの筋として紡ぎ上げる ー 口で言うのは簡単ですが、この構成の上手さは並大抵のことではありません。そしてこれだけ複雑な構成でありながら、読み手に殺人事件のことを忘れさせずに物語を展開させるその展開力も凄いです。

読みながら、物語を構成する文章はもはや練達の域に達していると私は思いました。複雑な文章は一切ありません。奇をてらったような文も、ややこしい表現も、一切ありません。明瞭簡潔な文ばかりでありながらその実、登場人物の心の奥までを描き、あまつさえ、読み手に「ああ、こんな風に感じることある」と感じさせます。これはもう東野圭吾さんにしかできない技かもしれませんね。複雑な表現を駆使し、相当なページ数を割くことでこう感じさせることのできる作者はいるかもしれませんが、これだけ簡潔な表現でありながら人の心の奥深くを描くことのできる作家さんは東野圭吾さんくらいしかいないかもしれません。読みやすいのに奥が深い。東野圭吾さん、売れる訳です。

本作、物語のまとめ方、終わり方も文句の付けようがありません。最後の刑事の話や、被害者の息子の話など、ところどころに人情を絡めた点もあり、実にいい作品です。ほぼ文句のつけようがありません。一つ難点をあげるとすれば、インパクトの小ささかな・・・。私的には「容疑者Xの献身」の痺れるようなラストが忘れられません。しかし、本作も間違いなく良作です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:書評 新参者
posted by taka at 21:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする