2010年09月30日

読書日記231:ばいばい、アース1 by冲方丁



タイトル:ばいばい、アース 1 理由の少女
作者:冲方 丁
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
地には花、空に聖星、人々は猫や蛙、鼠などさまざまな動物のかたちを纏う。この世界に、ラブラック=ベルはたったひとり、異形のものとして生まれた。牙も毛皮も鱗もない“のっぺらぼう”の彼女は、自分と同じ存在を探す旅に出る。放浪者の資格を購うため、剣士となって“都市”と“外”との戦いに臨むベル。そこで彼女を待っていたのは-。異能の世界構築者冲方丁、最初期の傑作が待望の文庫化。



感想--------------------------------------------------
天地明察」で本屋大賞を受賞した冲方丁さん。「天地明察」は図書館で予約しているのですが予約数が多くてまだまだ来そうに無いですので、他の作品を読んでみようと思い、本作を手にとってみました。過去には水野良さんの「ロードス島戦記」や田中芳樹さんの「アルスラーン戦記」などを読みましたが、最近はめっきりファンタジーは読まなくなり、こういうファンタジー小説を読むのは本当に久しぶりです。なのでかなり期待して読んでみました。

大剣「唸る剣」と共に、旅人になるために師匠の下を離れて「剣の国」を訪れる少女剣士ベル。ベルはやがて大きな戦いに身を投じていく−。

読み始めてまず驚くのは、その世界設定です。
猫瞳族、弓瞳族、長耳族、水族といった数多くの種族、自分だけのスペルが刻まれた自分だけの剣を育て上げていく剣士たち、演算魔法、飲食魔法といった数多くの魔法、刻を表す様々な色と、その色で刻を告げる時計石、神を楽しませるための剣楽と楽しめなくなった者が陥る飢餓同盟。そしてそんな世界にただ一人、人間として生きるベル−。
 既存のどのファンタジー小説、RPGゲームとも異なる独特な世界設定です。様々な種族や、魔法、剣が入り交じり、そのどれもに非常に精緻な設定があります。読み方の複雑な語、謎だらけでありながら先を案じさせるストーリー、神の樹が中心の国など、この世界が非常によく考えられて構築されていることがわかります。この作品の世界設定には、大作RPGの世界設定と同じくらいの労力がかけられているのではないでしょうか。

 そして次に驚くのは、それだけ独特な世界設定でありながら、キャラクターもストーリーも全く浮いていない、ということです。これだけ独特な設定だと作者の独りよがりでストーリーが進んでしまい、読み手が全くついていけなくなることもあるのですが、そういう点が全くありません。読めば読むほど物語の世界に引き込まれていきます。これは独特なストーリーでありながらそのストーリーをきちんとした物語にするだけの文章力、構成力があるからでしょうね。冲方丁さん、さすがです。本屋大賞を受賞するだけのことはあります。

物語の前半はベルと師匠の別れ、長耳族のキティや猫瞳族のアドニスやガフといった仲間との出会いが中心に描かれています。そして後半では壮絶な戦闘シーンが描かれています。RPGをやりこんだ人やファンタジー好きの人にはたまらない展開ですね。長耳族(うさぎ)のキティと一緒に旅する辺りを読んでいると、私は不思議の国のアリスを連想してしまいました。

物語の中にはこの世界独特の考え方や言葉があるため、やや難解に感じられるところもありましたが、それも全てこの世界の設定をより深めるための設定であり、決して物語りに破綻をきたしたり、読み手がついていけなくなるようなものではありません。物語を読んでいて、終始読み心地の良さを感じる作品でした。

この作品は 冲方丁さんの初期の作品で、2000年に書かれた作品です。10年も前にこれだけの作品を書くとは凄いですね。本作は文庫ではあと三冊あります。表紙の絵も文庫はいいですね。ベルをうまく描いていると思いました。あと三冊も順次紹介して行きたいと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 00:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 冲方 丁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする