2010年07月24日

読書日記217:悪人(上) by吉田修一 



タイトル:悪人(上)
作者:吉田修一
出版元:朝日新聞出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
九州地方に珍しく雪が降った夜、土木作業員の清水祐一は、携帯サイトで知り合った女性を殺害してしまう。母親に捨てられ、幼くして祖父母に引き取られた。ヘルス嬢を真剣に好きになり、祖父母の手伝いに明け暮れる日々。そんな彼を殺人に走らせたものとは、一体何か-。


感想--------------------------------------------------
吉田修一さんといえば、私の中では大ヒットだった「パレード」がすぐ思い浮かびます。人物描写の凄さ、人間というものの弱さや怖さをしっかりと描ききるその力は凄い、本当に実力のある作家さんだという印象です。本作も前々から読んでみたかった作品です。9月からは妻夫木聡さんと深津絵里さんで映画化されるそうですね。二人とも演技力の高い役者さんですので、こちらも楽しみです。

土木作業員の清水祐一は偶然出会った保険外交員:石橋佳乃を殺してしまう。朴訥な青年だった彼を殺人に走らせたものは何なのかー

本作についても上巻と下巻の二回に分けて書評を載せようと思います。上巻では夜の公園で清水祐一や石橋佳乃、下巻でメインになるであろう馬込光代の生い立ちが、どちらかというと淡々と描かれていきます。老いた祖父母の面倒を見て、ヘルスに通い、工事現場で働く祐一。言葉少なく朴訥としたどこにでもいる青年のような彼の姿はどうやっても殺人事件とは結び付いていきません。そして、これが本作の最も恐ろしいところだろうな、という予感めいたものを感じます。

 どこにでもいる朴訥とした青年を殺人に走らせたものはなんなのか?その真相は下巻で明かされるのでしょうが、私的には祐一の背後の社会背景がなんとも不安を誘います。老父母の世話を焼き続ける祐一、出会い系サイトで男たちと遊ぶ佳乃、金持ちのぼんぼんの増岡、娘と疎遠になった佳乃の両親、いかがわしい業者に騙されて金を巻き上げられる祐一の祖母ー。この物語に描かれているのは今の日本のあちこちで普通に見られる風景です。当たり前の日常を送っている人たちの姿と言ってもいいかもしれません。なのに心の奥に広がっていくこのやるせなさはなんなのでしょうね。そしてそのやるせなさこそが祐一を殺人へと走らせた一因ではないかと思ってしまいます。

 「悪人」。このタイトルにも考えさせられるところがありますね。「悪人」。その定義は?悪人とは誰なのか?どうして悪人なのか?生まれついての「悪人」なんていない、という風潮が今の日本では大半を占めていますが、この物語の中で語られる「悪人」とは何なのか、とても興味のあるところです。

 下巻では上巻では少ししか出てこなかった馬込光代の話がメインになってくるはずですね。下巻も楽しみです。




総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):


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タグ:書評 悪人
posted by taka at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 吉田修一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする