2010年06月26日

読書日記212:1Q84 Book3 by村上春樹



タイトル:1Q84 BOOK 3
作者:村上 春樹
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。
そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。


感想--------------------------------------------------
言わずと知れた超大ヒット作「1Q84」のBook3です。並んで買った人も多いのではないでしょうか。本書はまず間違いなく今年上期、第一のヒット作になるでしょうね。ようやく読むことが出来ました。

マンションに閉じこもる青豆と、猫の街で寝たきりの父親に語りかけ続ける天吾。二つの月が浮かぶ世界で二人は巡り会うことができるのだろうかー。

正直、本作のような作品は書評を書くのがためらわれる部分もあります。これだけの大ヒット作で、しかも村上春樹さんの作品だけあって、内容には読み手の解釈に委ねられているところが多々あるからです。読む人によって、感想は実に様々になるでしょうね。まあ、そこは割り切って、自分なりの感想を書いてみたいと思います。

本作は約600ページとただでさえ分厚い本なのですが、一つの段落が非常に長く、ページ数以上の分量を感じさせる、密度の非常に濃い作品でした。先日、紹介したばかりの「Another」の方が700ページ弱とページ数だけで比べると多いのですが、「Another」は割と一つの段落が短いため、さらさらと読むことが出来ますね。一方でこちらの作品はじっくりと読むことができ、読み終わった後に「読んだなあ」という感傷に浸れる作品です。・・・何しろBook3だけでこの分量ですからね。三冊合わせると1500ページ以上になるのではないでしょうか。おそらく分量的にはもっと読んだと感じるかもしれませんね。

 Book1、Book2では青豆と天吾の視点からストーリーが展開されていきましたが、本作ではさらに牛河という青豆を追跡する第三者の視点も加わり、三人の視点が入れ替わりながら物語が展開していきます。任務を遂行し、マンションの一室でじっと息を潜める青豆、寝たきりの父にかたりかけ続ける天吾、青豆を追跡する牛河。そして、彼らの頭上には二つの月が輝きます。
 ただ、本作のみならず村上春樹さんの作品を読んでいると常々思うのですが、この方の作品ではストーリーそれ自体にははあまり意味を持たないのではないかとさえ思えてきます。ストーリー以上に重要なのは何かを象徴するように現れる様々な不思議な存在たちのような気がします。本作では、空気さなぎ、リトルピープル、マザとドウタ、猫の街、NHKの集金人、そして空に浮かぶ二つの月ですね。これらが何を意味して何を象徴するのか?それは最後まで読んでもはっきりとは理解できません。また、理解する必要さえない気がします。それらはただそこに存在する、というだけで十分なのだと思います。

 物語の進みは決して速くはないのに、不思議と読んでいても飽きがくるということはありません。それは読み進めていくうちに物語の世界に、村上春樹の世界にどっぷりと浸れるからでしょう。小説というものが書き手の内なる世界を、文章を通して読み手に伝えるものだとするならば、読み手が触れる村上春樹の内面世界は深く、濃密で、精緻で、表情豊かで、独特で読み手を魅了します。それは書き手が手を抜くことをいっさいせずに、丁寧に丹念に自分の内面の世界を文章を通して読み手に伝えようとしているからに他なりません。そう言う意味では実に上手く自分の内面世界を我々読み手に伝えてくれます。そしてこれも本作に限らず村上春樹さんの全ての小説に共通するのですが、読み終わった後に、不思議と清々しい感動を感じることが出来ます。

 このような不思議な作品を書くことが出来る人は、おそらく村上春樹さんしかいないでしょう。賛否両論、さまざまな意見の出る小説だとは思いますが、読むべき本であることは間違いありません。また読み終えた後に、Book2で終わらずに、Book3を出してくれたことを作者には感謝したくなりました。少しでも長く村上春樹の世界に浸ることができ、そして物語の本当の「終わり」を読むことができたのですから。

 本作はあまり「速読」には向きませんね。じっくりと丁寧に丹念に読んで、作者の内面世界に深く触れていくのがいいのではないかと思いました。

 ・・・あと、Book4が出ると言ううわさもありますが・・・。どうでしょうね。でると確かにちょうど一年分の長さになりますが・・・。まだまだ未回収の謎も多いですしね。出てもおかしくないとは思いますが。ちょっと、いやかなり、気になりますね。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:1Q84 書評
posted by taka at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 村上春樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする