2010年02月06日

読書日記180:パレード by吉田修一



タイトル:パレード
作者:吉田修一
出版元:幻冬舎
その他:第15回山本周五郎賞受賞

あらすじ----------------------------------------------
都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。



感想--------------------------------------------------
以前、「さよなら渓谷」で紹介した吉田修一さんの作品です。この方の作品は「横道世之介」が本屋大賞にノミネートされていますね。今が旬な作家さんの一人です。本作も映画化されるそうですね。藤原竜也さんに香里奈さん、貫地谷しほりさんなどが出演するそうです。山本周五郎賞も受賞されているとのことで本屋に平積みにされている本を手に取ってみました。

 本作、舞台は四人の男女が暮らすマンションの一室が舞台です。そしてそこに新たなメンバー:サトルが加わることで四人の暮らしに小さな変化が起き始めます。物語は四人+一人の視点から順番に語られていきます。四人は大学生、フリーター、サラリーマンとそれぞれ立場は異なりますが、共通しているのはマンションの中では各人、上辺だけの付き合いを繰り広げている点ですね。

 「上辺だけの付き合い」というと言い方が悪いですが、各人とも非常にマンション生活を楽しんでいます。そして各人ともそれぞれ心の中に表に出せない物を抱えています。それは何も特別な物ではなく、今を生きる人なら誰もが抱えている種類の物です。何者でもなく、どこに行くか、帰るのかも分からない自分から目をそらす為に必死に他人の目に映る自分の姿を演じているー私には本作の登場人物はみんなそのように映りました。そしてその姿は今を生きる我々日本人に共通しているものかもしれません。

  本作、冒頭はまさに「パレード」=交通渋滞の場面から始まります。そして五章でそのパレードに小さな異変が起きます。そしてそのことに端を発して、本作は四章までの印象と五章を読み終えた印象が大きく変わります。みんなが「他人の目に映る自分を演じている」のだと思っていましたが、「他人の目に映る自分を演じることから逃げられない」のですね。どこまでも続く日常、そしてそんな日常に慣れてしまい、そこから抜け出そうとしても抜け出すことが出来ず、他人の本当の姿も見て見ぬ振りをし、自分の本当の姿も偽って生きざるを得ない・・・。そんな悲しくも滑稽な人間の生き様が見えてきます。

 本作のタイトルである「パレード」ですが、パレードとは祭りなどで行列を組んで楽しそうに町中を歩くことを言いますね。誰もが楽しそうに練り歩きお祭り騒ぎをしているように見えながらもその中には一定の規律があり、お互いの距離をとって歩いています。その様はまさにこの本に出てくる五人の生き様です。

 自分の本当のことを偽りながら、他人と上辺だけの付き合いをしつつ、他人の深いところに入り込まないようにし、見てしまった他人の真の姿には目をつむって生きていく・・・。こんな生き方をしている人は今の世の中多いのではないでしょうか?というか、社会に出て生きていく以上、誰もがこの「パレード」に加わらざるを得ません。そして自分に真摯に生きようとして「パレード」に加わらないようにする為には逆に一人で生きていくしかありません。・・・もしかしたら今の世の中、ひきこもりと呼ばれる人の何割かはこういった自分に真摯な人たちなのかもしれない、とも思いました。

 それにしても本作、人物の描き方がうまいですね。人間に奥行きがあり、実在の人物のように感じました。解説で川上弘美さんが「そこにそのものが実際にあるように、文章だけで表すこと。それができたとき、小説の魔法がはたらく。この小説には、そういう魔法が随所に発揮されている」と書かれていますがまさにそう感じました。

 本作、映画化されるということですが、どうなのでしょうね・・・。本のイメージを忠実に映画化することは非常に難しいと思いますが、、、どんな仕上がりになるか楽しみです。本作、本屋さんで何気なく手に取った本ですが、私にとっては大当たりでした。





総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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posted by taka at 18:36| Comment(2) | TrackBack(1) | 吉田修一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする