2009年11月11日

読書日記163:贖罪 by湊かなえ



タイトル:贖罪
作者:湊かなえ
出版元:東京創元社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
誇るべきところは空気のきれいさ、夕方六時にはグリーンスリーブスの音色。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺人事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせることになるーこれで、私の罪は、償えたのでしょうか? 衝撃のベストセラー『告白』の著者が贈る、新たな傑作。



感想--------------------------------------------------
本屋大賞受賞作「告白」の作者、湊かなえさんの作品です。「告白」、「少女」に次ぐ三番目の作品ですね。読んだ印象としては「告白」に近い作品かと思いました。ただ、「告白」より後に出ている作品ですので、その分、インパクトは薄いと感じました。第一作目としてこの作品が発表されていたとしたら、「告白」ほどではないにせよ、かなりのインパクトがあったのではないかと思いました。

 穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺人事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた被害者の母親の言葉、「お前たちは人殺しだ、罪を償うか、時効までに犯人を捕まえろ」ー。この言葉が彼女たちの運命を大きく狂わせることになる。そして繰り返される悲劇と明らかになる真犯人の素顔ー。

 相変わらず湊かなえさんの作品らしい作品です。本作は「フランス人形」、「PTA臨時総会」、「くまの兄妹」、「とつきとおか」、「償い」そして「終章」の六つの章から構成されており、章毎に異なる人物の視点から一つの殺人事件の背景とその後が語られて行きます。ーこの構成は「告白」と同じですね。
 相変わらず凄いな、と思うのが登場人物の心理描写の巧みさと、決して相容れることのない各登場人物の心情の描き方です。一つの殺人事件とその母親の悲嘆にくれた言葉によりねじれてしまう各登場人物の気持ち、そして繰り返される悲劇の連鎖ー。「告白」でも十分堪能しましたがやはり凄いです。
 この方の作品を読んでいると常に思うのですが、この人は人間の心の"暗黒面"を描くのがとてもうまいですね。憎しみ、嫉妬、うぬぼれ、恐怖ー。こういった感情が深く描かれていて、読み手はその虜となっていきます。

 本作で特に凄いと感じたのは「PTA臨時総会」の章です。水泳の授業中に学校に侵入してきたナイフを持った不審者を、担任教諭が撃退したー。美談で終わるはずのこの話が嫉妬やちょっとしたネットへの書き込み、中傷でおかしな方向へと進んで行きます。結局はどんなに美しい話でも、完全なる美談として終わることはない、いくらでも見ようと思えば悪く見ることが出来るー。そう言われているようです。

 本作は物語の中心に殺人というインパクトのある事件が置かれています。そのことで物語全体に締まりが生じています。これが「少女」との違いだと思います。また物語の構成も一つの殺人事件を中心にその関係者の話で各章が構成されているため「告白」よりもまとまっていると感じました。ただ、よくも悪くもまとまっているため、逆に「告白」ほどのインパクトは感じませんでした。

 読んでいて常に思うのですが、先にも書きましたが、この作者は人の負の感情を描くのが本当にうまいです。幸福な人々が何かの事件をきっかけに破滅して行くー。こんなストーリーを書かせたら並ぶものはいないのではないでしょうか。誰しもの人の心の奥に眠るこういった負の感情は、自分のものであれば眼を背けたくなりますが他人のものであれば覗き込んでみたい、と思うのが人情です。そういった感情を上手く突いているな、と感じました。

 最終的に明らかとなる犯人はあまりにも意外で、そして悲しみをさらに深めます。ただ、終わり方は「告白」とは違って少しすっきりしていますね。次回作はどんな作品を書くのでしょうか?これまでの傾向では、「学校」、「プール」、「殺人」、「少女」、「決して理解し合えない心」といったところが湊かなえさんの作品のポイントになっているようですが・・・。次回作にも期待です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 21:36| Comment(2) | TrackBack(3) | 湊かなえ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする