2009年05月13日

読書日記131:さよなら渓谷 by吉田修一



タイトル:さよなら渓谷
作者:吉田修一
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
どこまでも不幸になるためだけに、私たちは一緒にいなくちゃいけない・・・。

きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れた記者が探り当てた、 15年前の"ある事件"。長い歳月を経て、"被害者"と"加害者"を結びつけた残酷すぎる真実とはー。『悪人』を超える純度で、人の心に潜む「業」に迫った長編小説。



感想--------------------------------------------------
 この方の作品は初めて読みます。テレビドラマ化もされた「東京湾景」の作者だそうです。全体で200ページ程度と割と短い作品です。

 隣家で起きた幼児殺人事件。その事件をきっかけに若夫婦の隠された過去が明らかになっていく・・・。

 本作を読んでの感想ですが、「重い」というのが率直なところです。舞台は真夏なのですが、真夏の湿った空気、登場人物の流れ落ちる汗、欲望、といったものが前面に押し出されて描かれていて、言いようのないドス黒さ、重さ、男の生の感触、といったものが感じられてきます。まさに男性の作者が書いた作品だな、と納得させられます。

 本作、若夫婦と雑誌記者の視点から描かれているのですが、どの視点にも共通しているのは「行き詰まっている」、「どこにも行けない」ということでしょうか。結婚して、同居して、様々な理由でそこで行き詰まってしまい、どこにも行けなくなってしまった男女の姿が重々しく描かれていて、少し哀れさを感じさせます。

 200ページという割と短い中で、必要最小限の言葉を使って的確に心情を、背景を描写していくその筆力は素晴らしいと思います。しかしいかんせんストーリーが重すぎますね。ラストもすっきりしたラストではなく、苦行の上に苦行を重ねるような終わり方ですので、正直、読んでいる方がしんどくなってきます。芥川賞候補に選ばれる作品も書いている方ですので、描写力やストーリーの書き方に間違いはありませんし、不思議な男女のありかたについてうまく描かれている作品です。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by taka at 21:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 吉田修一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする