2008年09月24日

読書日記87:塩の街



タイトル:塩の街
作者:有川浩
出版元:メディアワークス
その他:第10回電撃大賞<大賞>受賞作

あらすじ----------------------------------------------
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。男の名は秋庭、少女の名は真奈。静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。それを見送りながら、二人の中で何かが変わり始めていた・・・。
 第10回電撃大賞<大賞>受賞作にて有川浩のデビュー作でもある『塩の街』が、本編大幅改稿、番外編短編四篇を加えた大ボリュームでハードカバー単行本として刊行される。


感想--------------------------------------------------
 「図書館戦争」シリーズ、「空の中 」で紹介した有川浩さんの作品ですね。「自衛隊三部作」の陸自編にして、電撃大賞受賞作でデビュー作です。

 「塩害」と呼ばれる、人が塩の結晶となってしまう現象により崩壊した世界。一組の男女、真奈と秋庭の二人を軸に、その崩壊した世界で生きる人々の姿を描いています・・・。とはいっても、やはり有川浩さんの作品らしく、主題は恋愛です。明日には自分が塩の結晶となってしまうかもしれない、そんな極限の世界の中で、通常の世界ではすれ違うだけだったかもしれない男女がお互いを想い、愛し合うようになっていく・・・。そんな話です。有川浩さんの作品に共通することですが、登場人物の心理描写が深く、抜群にうまいです。特に恋愛している男女の描き方は冴えているなあ、とうなってしまいます。
 一方で、塩害による崩壊した世界の描き方は少し物足りなさを感じました。あえて避けているのかもしれませんが、「明日には自分が塩になってしまうかもしれない」なんて世界では誰もが圧倒的な恐怖を覚えるのが普通だと想いますが、その「恐怖」や「混乱」がまだ少し物足りないなあ、と想いました。・・・まあ主題は「恋愛」ですしね。

 この本を読んでいて伊坂幸太郎さんの「終末のフール」(読書日記で紹介)を思い出しました。
 この本は隕石の衝突により三年後には世界が滅びることが確定している世界で暮らす人々を描いた作品です。崩壊した世界を描いている、という点が「塩の街」と共通している点ですね。こちらの作品では恋愛に限らず、普通の人たちが最後の時を静かに待ち、その残された時間で何が出来るかをじっくり考えながら今出来ることをして行こう、という作品です。

 明日自分がどうなるか分からないから、伝えられなかった想いを伝えようとする恋人たちを描いた「塩の街」。そして残された時間が少ない中で、お互いを許したり、恋人を作ったり、今出来ることをしようとする人々を描いた「終末のフール」。
 どちらも描き方は違いますが、極限状態での人間の優しさみたいなものを描いた点は共通していると思いますし、どちらも非常にお勧めの作品です。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:書評 塩の街
posted by taka at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 有川 浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする