2008年07月06日

読書日記69:私の男

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タイトル:私の男
作者:桜庭一樹
出版元:文藝春秋
その他:第137回直木賞受賞

あらすじ----------------------------------------------
お父さんからは夜の匂いがした。
狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂『私の男』。


感想--------------------------------------------------
 ここでも何度も紹介している桜庭一樹さんの作品ですね。直木賞受賞作です。一組の男女、腐野(くさりの)淳悟と、腐野花の物語ですね。父と娘であり、男と女であるこの二人を、様々な人間の視点から描いています。第一章から第六章まで、時間を遡るようにして、各章毎に異なった人の視点から物語は描かれており、少しずつ二人の過去や秘密が明らかになっていく仕組みになっています。

 テーマは桜庭さんの様々な小説の主題である、「女」、「少女」、「家族」のように思えます。(少なくとも私にはそう思えました。)家族であり、男と女である淳悟と花。「家族だから骨になっても離れない」、と言い切る花の姿は娘でありながら女性であり、薄気味悪くどこか壊れているように見えながらも、切なさも感じます。
 
 この作品、桜庭さんの作品の中では最も成熟した作品、と感じました。特にすばらしいと思ったのが、第4章。時間を遡るように描いているため、25歳から始まって、最後は10歳まで花の姿を描いているのですが、第4章、花が16歳の章では「少女」から「女」に変わっていく自分の姿を見つめる花の心情を見事に描いているなあと感じました。
 人間と獣、少女と女、家族と他人・・・。これらの境界がこの小説の中では非常に曖昧に描かれているのですが、その曖昧さを陸との境界が曖昧な冬の流氷漂うオホーツク海の様子に映して描き出しており、その比喩も見事だなあ、と思いました。

 「ブルースカイ」では現代に生きる「少女」という不思議な生き物について描き、「少女七竈と七人の可愛そうな大人」では少女が母親から決別して独り立ちしていく姿を描き、「赤朽葉家の伝説」では時代に翻弄される女性の姿が描かれていました。そして、この「私の男」では「少女」、「女」、「家族」そしてその真ん中を貫く、醜くも熱情的な「愛」を描いています。物語の重厚さでは「赤朽葉家の伝説」に軍配が上がりますが、この作品も間違いなく桜庭一樹さんの代表作と言えると思います。

 ところで、つい最近、次回の直木賞の候補作が揃いましたね。私は三崎亜記さんの「鼓笛隊の襲来」か、荻原浩さんの「愛しの座敷わらし」かな、と思っていますが・・・。さて、どうでしょうね?



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
posted by taka at 00:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 桜庭 一樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする