2009年11月15日

読書日記164:クーリエジャポン12月号




タイトル:COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2009年 12月号
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
創刊4周年記念号!
宇宙人的NIPPON

大特集「世界が見た日本」
鳩山由紀夫、村上春樹、イチロー、宮崎駿 etc



感想--------------------------------------------------
レビュープラス様より献本いただきました。ありがとうございました!レビュープラス様は企業とブロガーの橋渡しをしている会社で、ブロガーの方が登録すると書籍のレビューに応募できる仕組みを展開しています。余談ですがこれからのweb2.0の時代、こういう形態の会社はどんどん増えて行のくでしょうね。

 このクーリエジャポンという雑誌ですが名前は何度か聞いたことがありましたが読むのは初めてです。フランスのクーリエ・アンテンショナルという雑誌と提携し、世界中のメディアから記事を抜粋し、政治・経済・サイエンス・アート・エンターテイメントと様々な分野の話題をカバーする雑誌です。ページ数は140ページ程度と、読み応えは結構ありますね。

 今号の特集は「世界から見た日本」ということで鳩山首相に始まり作家の村上春樹さん、イチロー選手、宮崎駿監督などが続きます。
 この「世界から見た日本」というものには私もとても興味があります。たまたまではありますが、こういった特集を行っている号を読むことができたのはラッキーだったなと思いました。約30ページの特集ですが、日本の注目されている点がまとまっていて、なるほど、とうなずきながら読みました。

 出張や旅行で海外、特に欧米に行くと、例えばCNNのようなニュース番組を見ても日本のことはほとんど取り上げられません。一日見て一回か二回取り上げられればいい方ではないでしょうか。日本は全く世界から注目されていないのではないか?と思う一方で、スシバーやイチローなどの盛り上がりは凄く、きっと日本が注目されるのは食やスポーツといった文化面が中心で、その次が経済面、最後が政治だろうなと考えていました。
 今回の特集でも、取り上げられている十人あまりの「海外で注目を浴びる日本人」の中で政治家は鳩山首相のみ、あとはスポーツ選手や芸術家が多く、やはり日本は文化面での知名度は高いけれど政治面はいまいちなのだな、と改めて実感しました。

 またこの特集のなかで特に私がうれしかったのは映画監督の是枝裕和監督が取り上げられていたことです。以前、この監督の「ワンダフルライフ」という映画をビデオで見てその自然な演技、秘めた想い、切なさにとても感動した覚えがあります。柳楽優弥さんがカンヌを取った「誰も知らない」も見ましたがやはり自然な演技が生きている考えさせられる作品でした。そんな少し思い入れのある人が世界で活躍しているという記事が載るのはやはりうれしいものです。

 一方で日本という国は「日本人」と「外国人」、「日本」と「世界」の間にまだまだ大きな壁をつくってしまうのだな、という印象も持ちました。例えばアメリカやロシアでは自国と世界の間にある壁は無いに等しいのではないでしょうか?「世界の中の日本」という言葉がありますが、日本も世界の一部なのだから、あえてなぜ日本を区切る必要があるのだろうか?と感じてしまうこともあります。

 ・・・これはやはり日本が島国であり独特の文化体系を持った国だからでしょうね。この点がいい意味でも悪い意味でも日本らしさを育んでいるのだろうとも感じます。本号の中で「モノヅクリ大国」として日産の社長であるカルロス・ゴーン氏が日本のモノヅクリ技術はNo1だと言っていますがこれも日本独特の文化の影響だろうと思います。ただ、個人的にはもう少しこの壁を低くして、どんどん日本人も外に出て行くべきかな、と思ったりもします。

 本号では海外で活躍する日本人を特集していましたが、こういった日本人と他の国の人の"母国"や"外国"、"世界"といったものに対する考え方の違いなんかにも触れていただくとより記事に深みが出てくるのではないかとも考えました。
 また、ゴーン氏の記事についてもそうですね。「日本のモノヅクリは素晴らしい」とは以前から言われています。しかし一方で中国やインドの価格攻勢、リーマンショック以降の不景気にに以前ほどの自信をなくしつつあるのも事実です。先日のNHKスペシャルでも日産の電気自動車の話は出ていましたが、やはり中国やシリコンバレー、インドなどでどんどん電気自動車に関連した新しい技術が生まれており、そこと熾烈な競争を行っているそうです。このことについてどう考えているのか?そういったところもぜひ知りたかったです。

 本誌を読んでの感想ですが、世界のニュースを雑誌として届ける、という意味ではNEWSWEEK(日本語版)に似ているかな、と思いました。ただ、月刊ということで本誌の方が分厚く読み応えはあります。また政治色はNEWSWEEKより押さえ気味ですね。本号だけかもしれませんが文化面に力をいれているのかな、と思いました。読む人はどんな人が多いのでしょうね。NEWSWEEKは出張のときに駅のホームで買って鞄にいれて、とできますが、本書はそれには分厚すぎますね。やはり定期購読されている方が多い気がします。月一で海外に何が起こっているか、現場の声をリアルに知ることができるという意味ではお勧めです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2009年11月11日

読書日記163:贖罪 by湊かなえ



タイトル:贖罪
作者:湊かなえ
出版元:東京創元社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
誇るべきところは空気のきれいさ、夕方六時にはグリーンスリーブスの音色。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺人事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせることになるーこれで、私の罪は、償えたのでしょうか? 衝撃のベストセラー『告白』の著者が贈る、新たな傑作。



感想--------------------------------------------------
本屋大賞受賞作「告白」の作者、湊かなえさんの作品です。「告白」、「少女」に次ぐ三番目の作品ですね。読んだ印象としては「告白」に近い作品かと思いました。ただ、「告白」より後に出ている作品ですので、その分、インパクトは薄いと感じました。第一作目としてこの作品が発表されていたとしたら、「告白」ほどではないにせよ、かなりのインパクトがあったのではないかと思いました。

 穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺人事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた被害者の母親の言葉、「お前たちは人殺しだ、罪を償うか、時効までに犯人を捕まえろ」ー。この言葉が彼女たちの運命を大きく狂わせることになる。そして繰り返される悲劇と明らかになる真犯人の素顔ー。

 相変わらず湊かなえさんの作品らしい作品です。本作は「フランス人形」、「PTA臨時総会」、「くまの兄妹」、「とつきとおか」、「償い」そして「終章」の六つの章から構成されており、章毎に異なる人物の視点から一つの殺人事件の背景とその後が語られて行きます。ーこの構成は「告白」と同じですね。
 相変わらず凄いな、と思うのが登場人物の心理描写の巧みさと、決して相容れることのない各登場人物の心情の描き方です。一つの殺人事件とその母親の悲嘆にくれた言葉によりねじれてしまう各登場人物の気持ち、そして繰り返される悲劇の連鎖ー。「告白」でも十分堪能しましたがやはり凄いです。
 この方の作品を読んでいると常に思うのですが、この人は人間の心の"暗黒面"を描くのがとてもうまいですね。憎しみ、嫉妬、うぬぼれ、恐怖ー。こういった感情が深く描かれていて、読み手はその虜となっていきます。

 本作で特に凄いと感じたのは「PTA臨時総会」の章です。水泳の授業中に学校に侵入してきたナイフを持った不審者を、担任教諭が撃退したー。美談で終わるはずのこの話が嫉妬やちょっとしたネットへの書き込み、中傷でおかしな方向へと進んで行きます。結局はどんなに美しい話でも、完全なる美談として終わることはない、いくらでも見ようと思えば悪く見ることが出来るー。そう言われているようです。

 本作は物語の中心に殺人というインパクトのある事件が置かれています。そのことで物語全体に締まりが生じています。これが「少女」との違いだと思います。また物語の構成も一つの殺人事件を中心にその関係者の話で各章が構成されているため「告白」よりもまとまっていると感じました。ただ、よくも悪くもまとまっているため、逆に「告白」ほどのインパクトは感じませんでした。

 読んでいて常に思うのですが、先にも書きましたが、この作者は人の負の感情を描くのが本当にうまいです。幸福な人々が何かの事件をきっかけに破滅して行くー。こんなストーリーを書かせたら並ぶものはいないのではないでしょうか。誰しもの人の心の奥に眠るこういった負の感情は、自分のものであれば眼を背けたくなりますが他人のものであれば覗き込んでみたい、と思うのが人情です。そういった感情を上手く突いているな、と感じました。

 最終的に明らかとなる犯人はあまりにも意外で、そして悲しみをさらに深めます。ただ、終わり方は「告白」とは違って少しすっきりしていますね。次回作はどんな作品を書くのでしょうか?これまでの傾向では、「学校」、「プール」、「殺人」、「少女」、「決して理解し合えない心」といったところが湊かなえさんの作品のポイントになっているようですが・・・。次回作にも期待です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2009年11月08日

コミック日記33:クレイモア17 by八木教広



タイトル:CLAYMORE 17
作者:八木 教広
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ヘレンとデネヴは南の地でイースレイと遭遇。死を覚悟する二人だが、「深淵喰い」が現れイースレイを倒す。一方、西ではラファエラの覚醒を図るリフルに、組織はアリシアとベスを派遣。この地でクレア達は・・・!?


感想--------------------------------------------------
大剣(クレイモア)を背に妖魔を切り裂く女性剣士クレアが主人公の作品です。ようやく最新巻がでました。だんだんと物語も佳境に入ってきており、展開から眼が離せません。

 組織・リフル・イースレイの三竦みで保たれていた均衡がイースレイの死により崩れ去る。リフルを消す為に「深淵喰い」の大群とアリシア・ベスの双子を西の地に放つ組織。一方でルシエラとラファエラの融合体は最強の破壊者として覚醒するー。

 面白いです。どんどん続きが読みたくなりますね。本作、最初は妖魔を倒す白銀の魔女:クレイモアの活躍のストーリーだったのですが、妖魔を超える存在:覚醒者の登場、妖力解放により極限まで強くなったクレア達七人のクレイモア、そして最強の覚醒者であるリフル、イースレイ、ルシエラ、プリシラの4人の"深淵のもの"の登場、そして本巻で登場する"深淵のもの"さえ超えるルシエラとラファエラの融合対と、強さにどんどんインフレがかかっていきますね。(・・・ドラゴンボール現象ですね。)クレア達七人のクレイモア、深淵のものリフル、「深淵喰い」とアリシア・ベスを擁する組織、ラキとプリシラ、そしてルシエラとラファエラの融合体・・・。三つ巴どころか五つ巴の状況ですが、誰と誰が手を組むのか、どことどこが戦うのか、今後のストーリー展開から眼が放せません。物語はこれから一つのクライマックスを迎えそうです。

 本作は「銀眼の魔女」と呼ばれるクレイモアたちが主人公です。ただし本作はこのクレイモアたちをほとんど女性としては扱っていません。昨今流行している"萌え"とは対局にある果てしなく強い女たちとしてクレイモアたちを描いています。彼女達をこのように描いたのが本作の最も成功したポイントではないかと私は思います。
 男性が大剣を持って異形のものと戦う作品としては既にここでも紹介した「ベルセルク」があり、同じ路線になってしまっていたかと思います。また可愛い女性を主人公にした作品は昨今では同じく数多く出版されています。しかしここで可愛らしさを極限まで削ぎ落とした強い女性達を主人公にすることで新しい基軸の作品として大きく受け入れられたのではないかと思います。また女性たちを主人公にすることで、やはりどことなく妖艶な印象が作品全体に生まれている気もして、それが作品の雰囲気を独特なものに仕立て上げていると思います。

 妖魔や覚醒者、深淵のものたちを人間タイプではなく物凄く不気味な異形なものとして描いたのも成功の一因かと思います。そのことで主人公のクレイモアたちや人間とはっきりと差別化でき、大きなアクセントが生まれていますね。

 次はどんな展開を見せるのでしょう。クレアはまだまだリフルやプリシラ、ラファエラとルシエラとの融合体よりは弱いですが、どうなるのでしょう。早く次巻が読みたいところです。
 

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2009年11月04日

読書日記162:村上春樹の『1Q84』を読み解く



タイトル:村上春樹の『1Q84』を読み解く
作者:村上春樹研究会
出版元:データ・ハウス
その他:

あらすじ----------------------------------------------
なぜこれほど面白いのか?
村上春樹の最新ベストセラー長編をさまざまな角度で読む。物語を追うスリル、知る快感、共感する喜び、考えることの楽しさ。



感想--------------------------------------------------
ベストセラー「1Q84」の解説本です。読み終えてなお多くの謎が残されていましたので、試しに読んでみました。

 本作、構成が全三部に分かれています。各部で筆者が異なります。そして、各部で1Q84に登場する様々な謎や要因の背景を解き明かそうとしています。言うまでもないことですが、1Q84を読み終えた人を対象としている本です。

 本作を読んでの感想ですが、本作を読んでもやはり謎は謎として残されたままです。各部では断片的に1Q84で描かれているポイントの背景を書いて行くだけであり、決して謎解きはされていません。例えばヤナーチェックのシンフォニエッタが作成された背景やジョージ・オーウェルの「一九八四年」の背景などです。
 またいい意味でも悪い意味でも筆者の1Q84の世界観が本作では語られるため、1Q84を自分なりの解釈で読み進めた人には注意が必要です。その解釈が良くも悪くも変更することになるはずです。私はどうも本作の筆者の見方には共感を覚えることが出来ず、なんとなく余計な本を読んでしまった印象を持ってしまいました。
 本作で私が共感できたのは"1Q84は総合遊戯施設である"というくだりです。あらゆる要素が詰め込まれた非常に幅広く深い作品が1Q84であると私も思います。

 村上春樹さんの作品はどれも謎を残したまま終わり、その謎を読者が想像で埋めて行く過程がまた醍醐味なのでしょうね。1Q84に現れる様々な謎も人によって解釈が異なるとは思いますが、そのどれもがおそらくその人にとっては正解なのでしょう。
 このような曖昧さ、漠然とした部分を持たせることができるのは本だからでしょうね。また一つ読書の面白さを知った気もします。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C


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タグ:1Q84 書評
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2009年11月01日

読書日記161:イノセント・ゲリラの祝祭 by海堂尊



タイトル:イノセント・ゲリラの祝祭
作者:海堂 尊
出版元:宝島社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
東城大学医学部付属病院不定愁訴外来の責任者で、万年講師の田口公平は、いつものように高階病院長からの呼び出しを受けていた。高階病院長の"ささやかな"お願いは、厚生労働省からの講演依頼。依頼主は、厚生労働省役人にてロジカル・モンスター、白鳥圭輔。名指しされた田口は嫌々ながら、東京に上陸することを了承した。行き先は白鳥の本丸・医療事故調査委員会。さまざまな思惑が飛び交う会議に出席した田口は、グズグズの医療行政の現実を知ることに・・・・。


感想--------------------------------------------------
海堂尊さんのチーム・バチスタシリーズの第四作目です。「チーム・バチスタの栄光」が心臓外科、「ナイチンゲールの沈黙」が小児医療、「ジェネラル・ルージュの凱旋」が救急救命の現場を描いているのに対し、本作の舞台は医療行政の根元、厚生労働省です。

 厚生労働省の「医療事故調査委員会創設検討会」に参加することになった万年講師の田口。田口はそこで、解剖至上主義者、法医学者、厚生労働省、各者の既得権益ばかりが優先され現場の声が無視されるグズグズの医療行政の現場を知る・・・。

 本作もやはり「チーム・バチスタの栄光」の流れを汲んでいますね。個性的な登場人物、読者を引き込むテンポが良く、ユーモアに溢れた会話構成、こういった点はさすがに手慣れているな、と感じます。また本作の随所で海堂尊さんの「螺鈿迷宮」、「極北クレイマー」といった作品との関連を感じさせますね。これらの作品も未読ですが読んでみたいと思いました。

 本作の主な現場は厚生労働省の会議室です。茶番のような会議の中で各人が各人の利益と立場を守る為に現場の声を無視し続けます。異状死解剖の現場に画像診断を取り入れれば格段に異状死の救命は進むー。こういった一見簡単そうに見える意見も、解剖にこだわり続ける解剖至上主義者や導入費用の拠出を拒む厚生労働省、医療行政と癒着した法医学者によって骨抜きにされて行きます。

 この会議のやり取りは個人的には非常に面白いと思うのですが、専門用語の並ぶ会話のロジックを全て追い続けなければならないため、読むのは結構大変ですね。またこれまでの作品と違って本作では医療現場の描写がほとんど出てきません。ここが少し残念だと思いました。異状死画像診断の重要性は「チーム・バチスタの栄光」で明らかとなっていますが、本作でも前段でその重要性をうたう事件を描いていれば、後半の会議の場面がもっと生きてきたのではないかと思います。

 また本作の最後で大暴れする人がいるのですが、この人の言葉は本作の作者、海堂尊さんの言葉そのものだと思いました。(余談ですが、この人は「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水に似ていますね。)逆に言うと、この言葉をぶつけたいが為に、海堂尊さんは本作を書き上げたのではないでしょうか。本作はサスペンスではなく、医療行政の問題を糾弾する為の作品と位置づける方がいい気がします。ただ、いかんせん、言い過ぎな気がしますね・・・。本作を読んだ関係者は気分を害するのではないでしょうか。ご本人も名誉毀損で裁判沙汰に巻き込まれていますし、いろいろと大変そうです。

 あと感じたのはやはり厚生労働省も企業とあまり変わらない印象を受けました。「いろいろな意見を聞いて、ぐちゃぐちゃにしてしっちゃかめっちゃかにして、どうにもならなくなったところで、あらかじめ用意されていた結果をポンと放り込む」。本作で白鳥が厚生労働省のお得意と言っている会議の方法です。
 ・・・いろいろな人の意見を聞いた挙げ句に収集がつかなくなって結果も出ずに雲散霧消することが常の社内会議に置いて、まあ、まだ結果が出るだけましなのでは?と会社人の私などは思ってしまいます。やはり企業も省庁も会議では何も決まらず実際に動かして行くのは一部の人間であることに変わりはないようです。

 いろいろ書きましたが、医療現場の問題を声高に糾弾している本作はかなり面白く読むことが出来ました。ただ、医療現場の描写が無く、見せ場も全て会議室なので、そこが少し万人受けはしにくいかと思います。最後に、本書の主張である「国家は滅びても、医療は滅びない」の言葉には共感を覚えました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2009年10月28日

映画日記28:ジャンパー



タイトル:ジャンパー
監督 ダグ・リーマン:
出演者: ヘイデン・クリステンセン, サミュエル・L・ジャクソン
その他:

あらすじ----------------------------------------------
『Mr.&Mrs.スミス』のダグ・リーマン監督がヘイデン・クリステンセン主演で贈るSFアクション。世界中のどこへでも瞬間移動できる“ジャンパー”のデヴィッドが、もうひとりのジャンパーと手を組み、彼らの抹殺を使命とする組織と熾烈な戦いを演じる。


感想--------------------------------------------------
 「スター・ウォーズ」のアナキン役で有名なヘイデン・クリステンセン主演のSFアクション映画です。公開当時は日本でも凄い勢いでプロモーション活動が展開されていたのを今でも覚えています。

 世界中どこへでも瞬間移動できる能力を持つジャンパーの"デヴィッド"は、ジャンパーの抹殺を企む"パラディン"たちとの壮絶な戦いに巻き込まれて行くー。

 見終わっての印象ですが、非常に密度の濃い作品だと思いました。90分程度と短い作品なのですが、あっという間に感じます。そして、映画の中では世界各地のシーンが使用されており、見ていて飽きが来ませんでした。ロンドンでコンサート、バリでサーフィン、そしてエジプトで昼食・・・。なるほどジャンパーは楽しそうだな、と感じます。

 一方でストーリーは安っぽいかなと思いました。ジャンパーとパラディンが戦っていくわけですが・・・、なぜか普通の人間であるパラディンのローランド(サミュエル・L・ジャクソン)が超人的な強さを見せます。特殊な武器を使っているとはいえ、普通の人間がジャンパーに敵うはずもないと思うのですが・・・。ここは少し腑に落ちませんでした。

 本作、アクションが好きな方にはお勧めできると思います。難しいことを考えること無く見ることが出来る、良質なB級映画、といったところでしょうか。本作の魅力はなんと言っても世界各地を瞬間移動しながら繰り広げられるアクションでしょうね。東京、チェチェン、洋上、空・・・。いたるところでCGを駆使して繰り広げられるアクションはスピード感がありいいですね。教訓めいたものが全くなく、ひたすらアクションが繰り返されるとことも割り切れていていいかと思いました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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タグ:ジャンパー
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2009年10月25日

読書日記160:広告の基本



タイトル:この1冊ですべてわかる 広告の基本
作者:波田 浩之
出版元:日本実業出版社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
効果的な戦略の立て方、各媒体の料金のしくみ、プロモーションの進め方、ブランディングの定石、広告効果測定の方法、AIDMAからAISAS理論への変遷、外資代理店の日本進出+すぐに使える用語集。広告ノウハウを一冊に凝縮。


感想--------------------------------------------------
 先日「ウェブ進化論」を紹介しましたが、広告業界にWeb2.0がどのような影響を与えているのか、Web2.0と広告を組み合わせることでどのような可能性が生まれるのか、といったところを知りたくて本書を読んでみました。

 本書は読み物ではなく、参考書形式の本です。一項目について1ページないし2ページで広告業界に関する様々なことを説明しています。内容は多岐に渡ります。広告業界について、広告業界各社の特徴、4マス媒体と呼ばれるテレビ・ラジオ・新聞・雑誌への広告の出し方、広告料の決まり方、今後の広告業界の課題・・・。まさに広告に関する基本参考書です。

 本書によると、やはり近年ではインターネットの普及による影響が従来の広告のあり方を大きく変えているようですね。4マス媒体による広告効果は減少しつつあり、インターネット広告の影響が非常に大きくなってきているそうです。広告各社もインターネット広告への取り組みを重要課題として精力的な取り組みを始めている一方で、インターネット専門の広告会社もいくつも立ち上がってきているそうです。

 従来の、ユーザーが一方的に情報を受け取るだけだった時代に対して、昨今ではユーザーが情報を受け取るだけでなく、自らが情報を発信し双方向的なやり取りを行うようになってきました。SNSやAMAZONに代表されるこの流れの中で広告はどのように進化して行けばいいのか?その答えはまだ出てはいないようですね。インターネットの世界の可能性がほぼ無限にあるように、その可能性も無限にあるのではないでしょうか?これからどのようなアイデアが、どこから生まれてくるのか、非常に楽しみです。現在は米のグーグルがこの業界で一歩リードしているようですが、日本企業にもぜひ頑張ってほしいと思いました。

 本書、参考書としてとても使えそうです。図書館で借りて読みましたが、本書は手元に置いて使った方が効果的かとも思いました。ちなみにあらすじに書いてあるAIDMAとAISASですが、AIDMAは"Attention(注意)"、"Interest(関心)"、"Desire(欲求)"、"Memory(記憶)"、"Action(行動)" AISASは "Attention(注意)"、"Interest(関心)"、"Search(検索)"、"Action(行動)"、"Share(情報共有)"を指します。広告を見てから購買するまでのユーザーの行動を表す言葉ですが、従来はAIDMAだったのに対し、Web2.0時代ではAISASになってきているそうです。
 

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:広告
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2009年10月21日

映画日記27:地球が静止する日


タイトル:地球が静止する日
監督:スコット・デリクソン
出版元:キアヌ・リーブス、 ジェニファー・コネリー
その他:

あらすじ----------------------------------------------
NYのセントラルパークに巨大な球体が出現。降り立った宇宙からの使者クラトゥが現れた。アメリカ政府は危機対策チームを発足。幼い義理の息子を育てる生物学者ヘレンも召集されるが、地球静止へのカウントダウンは始まっていた!厳重な警備網をいとも簡単に破って街へ出たクラトゥは、ヘレンとその息子に接触。二人は衝撃の事実を知る。クラトゥは宇宙から人類へ向けられた最終警告だったのだ。クラトゥの目的は地球を救うこと。そのために彼が成し遂げようとしている衝撃の計画とは?

感想--------------------------------------------------
マトリックス」で有名なキアヌ・リーブス主演のSF作品です。最近、出たので借りてみました。

NYのセントラルパークに出現した巨大な球体から現れた宇宙からの使者クラトゥ(キアヌ・リーブス)は人類への最終警告を発する。

 本作、SF作品なのですが非常に静かな雰囲気の作品です。同じSF作品でも「マトリックス」や「スターウォーズ」とは大きく異なりますね。作品もアクション中心ではなく、人間の美しさといったものが中心です。
 この作品で凄いのはやはりCGをふんだんに使用したSFXでしょうか。世界各地に飛来する球体、世界を滅ぼすマイクロマシンの洪水、これらの画像はやはり凄いです。しかし一方で、球体の守護者として登場するロボットはいまいちですね・・・。安っぽすぎます。
 本作では球体を方舟、マイクロマシンの群れを洪水として現代版ノアの方舟の物語に仕立てています。そして、神の使いならぬ宇宙からの使者がクラトゥというわけですね。日本はともかく、キリスト教の浸透している国ではわかりやすい内容かと思います。

 見ての感想ですが・・・、悪くはないのですが、物語に盛り上がりが欠ける気がします。終始淡々として話が進み、メリハリのないまま終わります。「え?これで終わり?」と言った感じでした。あとは・・・女性科学者:ヘレンの息子がやたらと鼻につきますね。さんざん反抗した挙げ句、この態度の変わり方はなんだ、という気がしました。
 

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2009年10月18日

読書日記159:1Q84 Book2 by村上春樹



タイトル:1Q84 BOOK 2
作者:村上春樹
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。
そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。
Book 2
「こうであったかもしれない」過去が、その暗い鏡に浮かび上がらせるのは、「そうではなかったかもしれない」現在の姿だ。



感想--------------------------------------------------
 前回紹介したBook1の続きです。これもあっという間に読むことが出来ましたが、やはり何を言いたいのか、残念ながらよく分かりませんでした。でも読み終わった後には確かな読後感と、すっきりとした充実感が残ります。不思議な作品です。

 10歳の時に手を握り合ってからお互いのことを忘れられない天吾と青豆。二つの月が浮かぶ世界で、二人の世界は交わるのか・・・?

 Book2ではBook1の謎がさらに深まって行きます。リトル・ピープルとは?なぜ空には二つの月が浮かぶのか?マザとドウタとは?ふかえりの書いた「空気さなぎ」とは・・・?
 
 本作、冒頭からどんどん話に引き込まれて行きます。上述の謎を残したまま、天吾と青豆のお互いを思う気持ちを背景に物語は徐々に徐々にと進行して行きます。最後の最後まで読んでも、結局、よく分からずに終わりました。しかし、一つの物語が終わった、という確かな感触は残りますね。

 本作、終盤にかけてフィクションと現実の境界が徐々に徐々にあいまいになっていきます。どこまでが現実で、どこまでが物語の中なのかその境界があいまいになるなかで目の前に見える、まぎれもない「現実」(例えそれが月が二つ浮かぶ現実でも)を受け入れることで青豆も天吾も前に進もうとします。

 私なりの解釈ですが・・・結局言いたかったのは「この世界で生きて行くしかないんだ」ということかと思いました。1984年だろうが、1Q84年だろうが、今生きている世界とは違う世界に移って生きることを望むのではなく、現実の世界で色々なことを忘れたり、清算したりしながら生きて行くべきだ、と言っているように感じました。例え、その世界がその人にとってどのように見える世界であったとしても。その人にとっては月が二つ浮かぶ世界であったとしても。

 また青豆と天吾の関係も心に感じるものがありました。お互いがお互いのことを何年も想い続け、例えその世界で交わることがなくても、心はつながりあい、いつも側に寄り添っているー。Book1ではこのお互いを想う気持ちが全く描かれていなかったので唐突な気がしましたが、Book2で描かれているこの想いの強さの描き方は、さすがにうまいと感じました。

 終わり方も新しい生き方を暗示させる村上春樹さんの作品らしい終わり方でした。続編のBook3が出るという噂もありますが・・・どのようにつなげるのでしょうね。やはり主人公は青豆と天吾なのでしょうか。まだ憶測の段階ですが、出るのであればぜひ読んでみたいと思いました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2009年10月14日

読書日記158:1Q84 Book1 by村上春樹



タイトル:1Q84 BOOK 1
作者:村上春樹
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。
そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。

感想--------------------------------------------------
 もう説明の無いほど有名な、今年最も売れている作品です。この不況の中、100万部を突破しているそうですね。本作はBook1とBook2の二冊に別れていますので、二回に分けて紹介します。今回はBook1です。

 マーシャルアーツのインストラクター青豆は自分の生きる"1984"年が、実際の"1984"年とは微妙に異なる"1Q84"年であることを知る。現実と非現実の世界の境界を生きる青豆と天吾。二人の世界は交わるのか・・・?

 本作は"青豆"を主人公とした奇数章と"天吾"を主人公とした偶数章から構成されます。読んですぐに村上春樹さんの作品だな、と分かる作品ですね。相変わらず不思議な世界が描かれていて、その意味の多くを読者の想像力で補う必要があるのですが、密度が濃く、いつの間にか引き込まれて行きます。

 読み始めたとき、この作品はどこに向かうのだろう?と少し不安に感じられました。行き先の見えない物語にページを繰る指も進まず、正直少し不安でした。でも徐々に徐々に話が進むに連れてどんどん読むスピードがあがりました。全500ページ強でさらに文章の密度が濃いためかなりの文字の量ですが、さして気にもなりませんでした。

 「スプートニクの恋人」が恋愛、「海辺のカフカ」が少年の成長を主題にしていると私は考えています。そうすると本書の主題は何でしょうね・・・?Book1を読み終えたところまでの印象では、本書の主題は世界や社会といったもののように見えます。
 本書の中に出てくるジョージ・オーウェルの「一九八四年」では1984年をビッグ・ブラザーという存在が治める全体主義の国として扱っています。そしてその中で主人公は過去を書き換えていきます。本書ではビッグ・ブラザーならぬリトル・ピープルという存在が現れます。そして月が二つ存在し、月面基地の建設が進み、本栖湖で銃撃戦が発生し、警官の装備が変わった"1Q84"年。この不思議な世界の意味はなんなのでしょう?謎は膨らむばかりです。
 1Q84年と1984年の違いは?違ってしまった理由は?"1Q84"年に生きる青豆と"1984"年に生きる天吾はどこかで交わることがあるのでしょうか?

 本書の特徴は筋だけではありません。至る所で様々な象徴的な作品が使われています。ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」、「平家物語」、チェーホフの「サハリン島」・・・。おそらくこれらの作品に対して並々ならぬ造詣がある作者だからこそ、こういった作品を自作の中で使っても生きてくるのだと思います。
 本作を読んでつくづく感じたのは、このような作品は村上春樹さんにしか書けない、ということです。他の人が同じような文体で真似しようとしても、同じ作品は決して書けないでしょうね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:1Q84 書評
posted by taka at 21:05| Comment(2) | TrackBack(0) | 村上春樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする