2016年09月24日

読書日記611:血と霧 2 無名の英雄



タイトル:血と霧 2 無名の英雄
作者:多崎礼
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ロイスが救った少年ルークはオルタナ王家の王子だった。彼に、4年前に行方不明になった娘ミリアムの面影を見るロイス。一方ルークもまた血の分析官になるという夢を抱きはじめる。そうして穏やかな日々を取り戻したふたりだったが、女王シルヴィアと反勢力の対立に巻き込まれたことで状況は一変する。ロイスとルークの過去に秘められた、残酷な真実とは?血に支配された国で葛藤する者たちを描く、贖罪と祈りの完結篇。

感想--------------------------------------------------
一巻の続きとして読んでみました。本巻で物語は一度完結しています。

ロイスが助けたルークはオルタナ家の王子だった。そしてロイスとルークは再び様々な事件に巻き込まれていくー。

本巻は「無名の英雄」、「血の記憶」、「虹の彼方へ」の三章から構成されています。「無名の英雄」が一つの事件を、「血の記憶」がロイスの過去を、「虹の彼方へ」がまとめ的な意味合いの章となります。本巻で最も印象に残ったのは「血の記憶」です。ロイスの過去、グローリア姫との出会いと別れが描かれた章です。心の機微も含めてこの章は読んでいて心に残る箇所もありました。

他の部分ですが、これは上巻の感想にも書いた事ですが、個人的にはやはりどうしても主人公のロイスに感情移入ができません。ルークの事を可愛がっていたかと思うと、突然、逆上して足蹴にしたりします。理由は説明されるのですが、感情の起伏やスイッチの入る箇所が滅裂で、それでいて思い込みや感情、思考の表現描写は多く、若干壊れ気味のような人に思えてきます。これも上巻にも書きましたが、思考表現の描写が過多なのですね。だから危うい人に思えてしまいます。

あとストーリーも個人的にはあまり好きになれませんでした。結局、誰一人幸せにならず、主人公のロイスだけが自己陶酔して終わっている感があります。こんな終わらせ方しかかなかったんでしょうかね…?それこそ主人公が頭を撃ち抜かないのが不思議なほど悲惨な終わり方のような気がしました。

世界観はいいです。相当に創り込んであって、ファンタジーRPGの王道という感じで、とても好きです。でも登場人物が画一的で、ティルダ、ヴィンセント、ロイスなどみんな似たようないい人なので、キャラが十分に立っておらず、せっかくの世界観が生きていないのが残念です。

本巻で一度終結しますが、この後も続くのでしょうか…?世界観はとてもいいので、この後どうつなげていくのか、少しだけ興味はあります。




総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C
レビュープラス

2016年09月17日

読書日記610:となりの婚活女子は、今日も迷走中



タイトル:となりの婚活女子は、今日も迷走中
作者:大西明美
出版元:かんき出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
年下男に捨てられる女、年下男と結婚できる女。SNSで自爆する女、インスタグラムで男の心をつかむ女…。結婚相談所で起きている本当の話!

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。

本書はそのタイトル通り、結婚相談所に勤める著者が、そこで出会った婚活女子について書いた本です。既婚男性の私が買うことはまずない本ですね。このような本を手に取るチャンスが来るのも、レビューしているからこそだと感じます。

本書では著者が出会った様々な婚活女子の例を「○○女子」という形で紹介しています。「バリキャリ女子」、「学歴女子」、「おごられ女子」といった具合ですね。それぞれの例にかわいい四コマ漫画もついていて、とても読みやすいです。

様々な女子の婚活をめぐるエピソードが描かれていて、最初はうまくいかなかったケースでも、著者(+旦那のひよこさん)の適切なアドバイスで最終的にはゴールを迎えるというケースが多く、読んでいてほっこりするものがありました。最近、こうした柔らかい、温かみのある本を読んでいなかったので、癒される感もありました。いい本に出会えたと思います。

読んでいて特に印象に残ったのは「読書女子」ですね。きちんと女子側も男性のプロフィールに沿った話題を提供できる準備(勉強)をして出会いの場に臨む。これは男性側からしたら非常にうれしいことだと感じます。「婚活」というのは自分を売り込むことだけでなく、相手に興味を持って、相手を理解しようとして初めて成り立つものなんだなあ、としみじみと感じました。

本書は個人的には良書です。まずなにより読みやすくとっつきやすい。そして実際に婚活中の人にとっては役立つ情報が満載です。また婚活を終えた人にとっても、これからの人にとっても、男女の関係性の「あるある」や「常識」や「小ネタ」がわかり、実際の生活でも大いに役立つと思います。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
レビュープラス

----------------------------------------------
posted by taka at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月10日

読書日記609:血と霧1 常闇の王子



タイトル:血と霧1 常闇の王子
多崎礼 (著), 中田春彌 (イラスト)
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
血の価値を決める三属性―明度、彩度、色相―による階級制度に支配された巻き貝状の都市国家ライコス。その最下層にある唯一の酒場『霧笛』で血液専門の探索業を営むロイスのもとに、少年ルークの捜索依頼が持ち込まれた。だが両親だと偽る男女は、事件の核心部分を語ろうとしない。価値ある血を持つと思われる少年に自らの過去の因縁を重ねたロイスは調査を始めるが、それは国家を揺るがす陰謀の序章に過ぎなかった。

感想--------------------------------------------------
この方の著書は初めて読みます。面白いSFやファンタジーを読みたい、と思っていたのと、表紙の絵とハードボイルドっぽい雰囲気に惹かれて読んでみました。

巻貝の最下層で探索者として暮らすリロイスのもとには様々な仕事が舞い込むー。

本作で最も魅力的だと感じられたのはその世界観と設定です。巻貝を中心とした国家群、国を仕切る冷酷な女王、その最下層に住む主人公、血の三属性と血の明度によって明確に区別される住民たち、そして血の属性によって異なる特殊能力などなど。世界観とその設定はロールプレイングゲームのようで、ゲーム好きには堪りません。狼男や暴君竜といった言葉も出てきて、この先の世界の広げ方が非常に楽しみです。

一方で残念なのは登場人物の個性や描き方、その関係性です。残念ながら魅力的だと感じられる登場人物が一人もいません。主人公のリロイスは始終不機嫌で、「自分で頭を吹き飛ばした方がマシだ」みたいなことを言っていたり、よくわからないプライドで怒ったり、かと思えばルークには変にやさしかったり、と全く感情移入できません。

そしてその周囲を固めるヴィンセントやルークといったメンバーも、なぜにそこまで下手に出る?と思うくらいにリロイスに気を使っています。また特にリロイスとヴィンセントの関係性はべたべたしていて、気持ち悪いです。世界観はハードボイルドを目指しているのに、キャラクターが浮いてしまっていますね。

また、これだけの世界設定をしているのに物語はさほど前に進みません。三つの章で構成されていますが、「ちょっとした探し物」が多く、世界観を活かしきれていない気がします。これはこの先に期待ですかね。

あと、最後になりますが、文章がやたらと冗長です。リロイスの心情の独白的な台詞や、ルーク、ヴィンセントとの会話が長すぎ、テンポが悪いです。文章を重ねることで却って読み手に伝わりにくくなっていると感じました。

登場人物の中で唯一、なんとか魅力を感じたのはギィですかね。常に冷静な調血師。彼の物語は読んでみたいと思いました。

ここでも評してきたSFの名作と比べるのは酷ですが、ちょっと厳しいです。でも二巻で一区切りのようなので、次巻も読んでみようと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C
レビュープラス