2012年05月19日

読書日記346:麒麟の翼 by東野圭吾



タイトル:麒麟の翼
作者:東野圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
寒い夜、日本橋の欄干にもたれかかる男に声をかけた巡査が見たのは、胸に刺さったナイフだった。大都会の真ん中で発生した事件の真相に、加賀恭一郎が挑む。


感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの作品である本作は「赤い指」や「新参者」と同じように刑事:加賀恭一郎が活躍するシリーズです。本作は阿部寛さんや新垣由比さん出演で映画化もされていますね。図書館では千人を超える順番待ちの作品でしたが、ようやく読むことができました。

日本橋の麒麟像の前で殺されていた男。その男を殺したと目される被疑者は交通事故により意識不明の重態に陥る。二つの事件の裏に隠された真実とは−?

相変わらず東野圭吾さんの本は完成度が高いですね。本当にこの方の作品ははずれがありません。最初から最後まで一気に読めてしまいます。特に本作や「新参者」に代表される刑事:加賀恭一郎の活躍する作品と、「容疑者Xの献身」に代表される大学教授:湯川学ものは、安定して楽しむことができます。

本作を読んでいくと分かるのですが、一文一文の完成度が本当に高いです。ページ数こそ三百ページを超えているのですが、さほど文が多いイメージはありません。だから簡単にどんどん読み進めることができてしまうのに、読者の心をしっかり掴んでしまいます。一文一文が非常に良く練られており少ない文で、テンポを損なうことなく、必要な情報を過不足無く読者に提供し、さらに各登場人物の心情を的確に表現していきます。

もはや練達の極みですね。宮部みゆきさんの作品が多くの文でしっかりとした情景描写、心情描写を組上げて行くのとは対極にある気がします。並みの作家では書けないようなこういった文章を普通に書けてしまうからこそ、日本No1のベストセラー作家なのでしょうね。

本作は加賀たち刑事側と、被害者:青柳武明の家族、さらに被疑者:八島冬樹の恋人、中原香織の側の三つの視点が切り替わりながら描かれていきます。この視点の切り替えるタイミング、各キャラクターの心情、そして舞台となる日本橋の描写とそこに隠された謎の描き方、最後の結末までの描き方、どれもが非常に秀逸です。

また本作には過去の加賀が主人公として活躍した「赤い指」、「新参者」との関りも少し描かれていますので、この二作をあらかじめ読んでいると、さらに楽しめるかと思います。しかし著者は相当に日本橋に惚れ込んでいるのでしょうね。本作と「新参者」を読むとそれが凄く良く分かります。

さて東野圭吾さんの本は他にも「マスカレード・ホテル」や「ナミヤ雑貨店の奇蹟」などが出ていますが……。人気が凄まじいので、なかなか読むのは難しいかもしれないですね。これだけの質の作品を絶え間なく出し続けることが出来るということが、また凄さの一つでもありますね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2012年05月16日

コミック日記88:乙嫁語り by森薫



タイトル:乙嫁語り 4巻
作者:森薫
出版元:エンターブレイン
その他:

あらすじ----------------------------------------------
第3の乙嫁、ライラとレイリが登場!

英国人スミスは、タラスと別れたあとも目的地アンカラへの旅を続けていく。
旅の疲れなのか、馬の上から水面にドボンと落ちてしまったスミスを助けに向かったのは……!?
現在のウズベキスタンにある巨大な塩湖"アラル海"近郊、漁村に暮らす人々の生活と文化を描き上げる『乙嫁語り』第3シーズン。
本巻は作者・森薫の新たな魅力が大爆発する一冊です。


感想--------------------------------------------------
「乙嫁語り」の四巻です。この作品はストーリーが地味な印象があるのですが、その作りこまれ方といったら半端ではないですね。本巻も楽しく読むことができました。

アラル海のほとりの街まで辿り着いたスミスとアリ。この街では騒々しくも元気な双子の少女ライラとレイリが理想の婿を探して今日も騒動を引き起こしていた−。

本巻はこれまでの巻と少し勝手が違いますね。ライラとレイリという双子の婿探しがちょっとラブコメちっくで、物語に活気を与えています。前作「エマ」もそうだったのですが、この作者の作品は当時の時代背景を綿密に調査されていて、さらにその描き方も半端なくて、一こま一こまに芸術的価値があるんじゃないかと思うほどに描きこまれているのですが、一方でそのストーリーが地味な印象があります。個人的には変に浮ついたストーリーにされるよりはこの方が好きなのですが、万人受けはしないかな、なんて心配したりもしてしまいます。

なので、本巻のように活気があって騒々しいキャラクターが前面に出てくると、物語が盛り上がりますね。婿探しとその結末はまあ、ありきたりと言えばありきたりですが、でもとても温かい結末になっていて、読む側にはとてもいい印象を与えます。

ライラとレイリ、二人の嫁達の物語が進む一方で、最初の嫁でカルルクに嫁いだアミルの実家の動きは不穏ですね。まだまだきな臭さが漂います。また本巻の最後、四ページだけ番外編のように付け加えられたページも気になりますね。スミスが投げ捨てた懐中時計を拾う男。この男は引き裂かれたスミスとタラスにどのように関ってくるのでしょうか。語り部的な役割を担うイギリス人、スミスはとてもいい人だけに、うまくタラスと結ばれて欲しいものです。

さて次巻はライラとレイリの結婚式のシーンから始まるようですね。物語もだんだんと進み、恋愛も争いも徐々に佳境へと進んできています。今後の展開が楽しみです。次巻も必ず買う予定です。しかし本巻は今年はマンガ大賞にノミネートされていなかったのですね…。規定から外れているのですかね?ノミネートされれば大賞を受賞してもおかしくない作品だと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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2012年05月13日

読書日記345:決断できない日本 byケビン・メア



タイトル:決断できない日本
作者:ケビン・メア
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「沖縄はゆすりの名人」などとレッテルを貼られ更迭された米国務省元高官が明かした事件の真相。対日政策三十年のキャリアをもつ外交官が見た「トモダチ作戦の内幕」「沖縄基地問題の迷走」「日本の政治家たちへの評価」などアメリカ政府の本音を激白する。


感想--------------------------------------------------
ケビン・メアという名前を聞けば、沖縄に関する「ゆすり発言」を思い出す人も多いかと思います。沖縄総領事を勤め、長きに渡って日米の橋渡し的な役割を担ってきた、このケビン・メアの書いた本が本作です。

「決断できない日本」というタイトルの本作ですが、その内容は著者であるケビン・メアの日本との長い付き合いの歴史と、ケビン・メアから見た日本の政治、特に沖縄の基地問題に関するものです。外から見た日本がどのようなものなのか、興味深く読むことができました。

本を読み通して感じることですが、著者の視点がしっかりと定まっていることが感じられます。「抑止力のない平和はありえない」「日米同盟は何よりも重要」そういった起点からスタートし、理路整然と沖縄の基地問題や、日米関係のあり方と言ったものについて述べられています。海外の方の文章や著書を読むといつも感じるのですが、非常に論理的であり、なおかつ非常にシンプルに考えを述べていきますね。日本式の本音や建前がなく、明快に筋道を立てて考えを述べているので、非常に読みやすいです。


「抑止力のない平和はありえない」
「日米同盟は何よりも重要」
先にも述べたこの二点を、著者は繰り返し本書の中ではっきりと述べています。中国の脅威が迫る中で沖縄から米軍が撤退すれば紛争の火種はますます大きくなりますし、東アジアの脅威に対抗するに当たり日米同盟が大切なのは言うまでもありません。

この本を読んでいると、我々日本人がいかに平和ボケしているのかがよくわかります。常に外敵との戦いを想定し、「平和とは抑止力の上に成り立っている」という確固たる信念を持っている米国出身の著者にとって、日本の政治家たちの考え方や官僚主導の考え方は意味不明に移るのでしょうね。お役所仕事に熱心な日本に業を煮やしたこともはっきりと書かれています。

また一方で、米国というのは日本にとってかけがえの無い隣人なんだ、ということもよく分かります。日本は米国の発言にいちいち過敏に反応しますが、日本は米国にとってよき友好国であることを著者は明言しています。しかし一方で、日本の政治には改善すべき点が数多く存在することもはっきりと述べられています。

「日本の和の文化は、過剰なコンセンサス社会に堕落してしまった」
「『一度失敗するともう終わり』という恐れが強すぎる」
本書の中で著者が語っている言葉ですが、二つとも正確に的を得ていますね。これは政治だけでなく、経済の世界でも言えることです。特に最初の言葉は常々良く感じますし、多くの本にも同様の趣旨のことが書かれていますね。「コンセンサスを得る」ことではなく「決断する」こと。これができるようにならない限り何処にも相手にされないでしょうし、何も進まないでしょう。これは「議論して決断する」ということを日本が正しく学ぶことが無かったからかもしれない、と最近は良く感じます。正しい「議論」の仕方を学んでいないため、感情論に陥ったり、本質とはなれた議論に終始したりといったことに、日本ではよく陥りがちです。まだまだ未成熟なんだろうな、と感じますね。

「ゆすり発言」で有名な著者ですが、本書を読むとその人となりがはっきりとわかり、決してそのような発言を意図的にする人ではないことがよくわかりますね。外から見た日本、沖縄について関心のある方にはお勧めです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2012年05月09日

映画日記41:タイタンの戦い



タイトル:タイタンの戦い
監督:ルイ・ルテリエ
出版元:ワーナー・ホーム・ビデオ
その他:

あらすじ----------------------------------------------
サム・ワーシントン主演によるアクションアドベンチャー。古代ギリシャ。反乱を企てた人間の王に激怒した天上の創造主・ゼウスは、冥界の王・ハデスと魔物を解き放つ。


感想--------------------------------------------------
 「タイタンの戦い」という映画は、もう二十年以上も前に映画化された同名の映画のリメイク作品になります。まだCGが今ほど進んでいなかった当時でも、かなり面白く見た覚えがあります。

 伝説の怪物クラーケンによって壊滅させられる運命となったアルゴスの都。都を救うための生贄として差し出されることになった皇女アンドロメダを救うために、神の血を引くペルセウスは魔女達の住む山へと向かう−。

三人の魔女、大蠍、メデューサ、クラーケン…。ストーリーは以前と変わらないまま、CGをフル活用して当時と比較して大迫力の作品に仕上がっていますね。また登場人物やストーリーもアクセントが効いていて、見せ場の多い仕上がりになっています。またキャストも名優の揃ったいいキャストです。ペルセウスに大神ゼウス、冥府の神ハデス。彼らの人間(神?)関係もいいです。

ストーリーもアクションシーンも豊富で、よくできた映画だとは思うのですが、昨今のCGの溢れたハリウッド映画の中ではさほど目立つ印象はないですね。このレベルのCGを使用した映画はいまやいくらでもありますし、過去の作品のリメイクと言うことで外れる心配はないのですが、大当たりする可能性も高くはない映画だと思いました。良くできたB級映画、という印象です。

見せ場はやはりクラーケンとの戦いの箇所でしょうか。ここはCGをフル活用していて以前の作品と比較しても大々的にスケールアップしていますね。超巨大魔獣との戦い。いいですね。こういう話は個人的には大好きです。

こういう作品を見ていると「ゴッド・オブ・ウォー」を思い出しますね。神、魔物、タイタン。三者入り乱れての戦いを大迫力で描いたこの作品は秀作ゲームかと思います。また本作の続編、「タイタンの逆襲」も公開されていますね。巨人クロノスが現れる本作も楽しみです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2012年05月06日

読書日記344:虐殺器官 by伊藤 計劃




タイトル:虐殺器官

作者:伊藤 計劃
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。



感想--------------------------------------------------
先日読んだマルドゥックスクランブルの流れでSFを読みたいと思い、本書に辿り着きました。伊藤計劃という人は、34歳という若さで亡くなっていますが、本書や「ハーモニー」など優れた作品を残した方です。

世界各地で勃発する虐殺の影に見え隠れする男、ジョン・ポール。米軍大尉のクラヴィスはジョン・ポールを追ってチェコ、インド、アフリカへと潜入する。虐殺を引き起こす"虐殺の器官"とは何なのか…?

物凄い作品です。
サラエボが熱核攻撃により消滅した近未来の世界の創造力・構築力、武装や兵器のテクノロジー、さらには言語と脳の関りあいに関する深い洞察力、人を殺した罪に対する許しと罰を背負う覚悟−そういった様々な要素がどれももの凄く深く描かれています。

言語によって規定される脳(思考)、思考によって規定される現実。それらの関り合いと生と、死、そしてある世界を救うための虐殺。自分の母を殺したのではないか、という心の痛みから抜け出すことができないクラヴィスと、その心を理解しようとしてくれたルツィア。そして虐殺の器官を操り世界各地で虐殺を引き起こす虐殺の王、ジョン・ポール。題材は凄まじいのに、その描き方は非常に繊細であり、理知的です。誰もが深い思索の底で言語と思考と現実の関係性について考え、悩み、様々な結論を導き出しているように感じられます。暴力的な題材で、暴力的な描写もとても多いのに、それをあまり意識させません。現実を超えた、もっと深い思索の中で繰り広げられる現実と個人の意識の葛藤のようなものを感じさせます。

この物語は、クラヴィスという大尉が主人公ですが、物語は"ぼく"という一人称で語られていきます。これが物語に独特な印象を与えていきます。最後の解説にも書かれていますが、これは主人公が成熟していないからであり、そしてこの成熟していない主人公によって戦争が、虐殺が語られているため、戦争や虐殺の持つ意味が、客観的な意味と少しずれてきているのですね。個人の眼を通して語られる戦争と虐殺。そこには社会的な意味はあまりなく、より現実的な、死体に関するいくつもの描写で語られるような戦争と虐殺があります。この描き方が巧で、世界的な問題であるはずの戦争や虐殺がどこか私事のように描かれ、それがクラヴィスの父と母に対する個人的な経験と重なり、様々な化学変化を起こしていきます。

個人とその対局に横たわる世界。その二つの間に横たわる様々な、膨大な、死。その中から、成熟しきっていない主人公が導き出す、様々な結論と行動。本作はこの描き方がとても秀逸ですね。特に最後、エピローグで語られる主人公の行動。あの行動を持ってして、本作は完結しているのでしょうね。

本作は間違いなく、傑作です。しかしその内容は簡単ではなく、理解し、読み下すのにはとても時間と忍耐がかかります。本に読み慣れていない人やSFに馴染みのない人にとっては非常に難解な本かと思います。また重く胃の底にずっしりと溜まるような本でもあり、決して万人受けする本ではないですが、私にとってはとても面白かったです。もう一つの傑作、「ハーモニー」もいつか読む予定です。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2012年05月02日

コミック日記87:進撃の巨人(7) by諫山 創



タイトル:進撃の巨人(7)
作者:諫山 創
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
エレンの生家に眠る「巨人の謎」を求め、壁外調査に乗り出した調査兵団。その前に知性を持った「女型の巨人」が現れた。兵団壊滅の危機に陥りながらも「女型の巨人」を捕らえたエルヴィンは、女型の巨人の正体に迫る‥‥


感想--------------------------------------------------
「進撃の巨人」の第七巻です。女型の巨人の捕獲に成功したエレンたち調査兵団。しかし調査兵団は、今度は巨人達に「覚悟」を見せ付けられます。

壁の外で任務に当たる調査兵団たちは、多くの犠牲を出しながらも女型の巨人の捕獲に成功する。しかし、女型の巨人には全てを捨てる覚悟があった−。

物語がだんだんと深化してきていると感じられますね。女型の巨人と、巨人化できる調査兵団の装備を搭載した謎の人間。そして次々と倒れて行く調査兵団−。巨人化できる隊員とは誰なのか?巨人達がエレンを襲う理由は何なのか?そして、彼らの目的は何なのか−。最初は巨人達が暴れ、それを巨人化できる人間、エレンが止める、というストーリーかと思っていたのですが、だいぶ展開が異なってきましたね。巨人同士の激突以外にも、この漫画には見所がたくさんありそうです。

「何かを手に入れるためには、何かを捨てる覚悟が必要だ」「選択と、それにより生じる結果」そういったものが本巻では語られていますね。常に命の危険の伴う壁外任務で生じる命のやり取り。その中で、無駄なものは全てそぎ落とされ、生きるために、壁内の人間達を守るために本当に必要とされる言葉だけが残っていきます。相変わらず、この言葉の使い方はうまいですね。本書の中で、戦いの中で刹那的に発せられているような声の多くが、普遍的な真実を語っています。

物語は、結局のところは悲惨な結果を辿り、調査兵団は壊滅的な打撃を受けてしまうわけですが、この先の展開が見ものですね。エレンとミカサ、アルミンたちの行方はどうなるのか、特に巨人化できるエレンの行方がどうなるのか、見ものではあります。また各コマの絵も、コマ割りも、だいぶこなれてきている気がします。時折り見せる二ページぶち抜きでの大迫力のコマなどは本作の魅力を余すところなく伝えていますね。いいです。次巻も楽しみにしたいと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:進撃の巨人
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2012年04月28日

読書日記343:日本の未来について話そう byマッキンゼー・アンド・カンパニー



タイトル:日本の未来について話そう
作者:
出版元:小学館
その他:

あらすじ----------------------------------------------
世界をリードする65人が執筆

2011年3月11日に日本を襲った東日本大震災、津波被害、そして福島第1原発問題。現在、世界中の目が日本に向けられている。日本は復興に向け動き出したが、震災以前から抱える数々の問題は依然日本の将来に影を落としている。国内政治の混乱や巨額の負債、高齢化、硬直化した教育制度と若者の意欲喪失に加え、技術や革新の分野での国際競争力の低下や外交問題など、憂事は尽きない。本書は、世界的な経営コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーが、世界のオピニオンリーダーに日本が直面する問題について、それぞれの視点での提言を求め、それをまとめた1冊である。著者の方々はその優れた洞察力のもと、時折ユーモアも交えながら、日本への愛情に満ちた筆によって日本の過去、現在、そして最も重要な未来を描き出している。グローバル企業のCEO、ピューリッツァー賞受賞作家、ゲームクリエイター、サッカー監督、民間人校長、漫画家、建築家など、幅広い顔ぶれの寄稿者がそれぞれの視点で日本を語るというユニークな企画により編まれた本書は、いまの日本を読み解くための手がかりとなるだろう。



感想--------------------------------------------------
本書、「日本の未来について話そう−日本再生への提言−」はマッキンゼーカンパニーの責任編集による小論文集のような本です。ページ数は四百ページあまり、全九章で構成され、各章それぞれ五編超の論文から構成されています。各章には「日本の再生へ向けて」、「国際化への鍵」、「技術と思考のイノベーション」といったタイトルがつけられており、シンクタンクの研究員や企業のCEO、作家など様々なメンバーが日本の過去、現在、未来について語り、日本の明るい未来に向けて今成すべきことについての提言を行なっています。

著者として名を連ねるのはソフトバンクの孫正義代表取締役社長、日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼CEO、ユニクロブランドで有名なファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長などそうそうたるメンバーです。本書は先に書いたように海外のシンクタンクや研究所の研究員による日本の分析記事の他に、経済界を代表する人間や作家や雑誌編集者などの文化人が独自の眼線で日本について考えた記事も掲載されているのですが、後者の方が圧倒的に面白いですね。日本の分析記事はどの記事もだいたい同じ結論に至っているのですが、後者は様々な視点で描かれており、「こういった見方もあるのか」と驚かされます。

前者の日本に関する分析記事で、ほとんどの方が日本社会について必要と言っている内容として、例えば以下の項目があります。

・グローバル化の推進
 →様々な規制によって日本はまだ鎖国の延長のような状態である。自由化を推進し、本当の意味での国際競争にさらされることで、日本経済はさらに成長する。
 →教育面でも日本から海外への留学生の数は年々減少しており、海外留学の経験は日本社会ではプラスどころかマイナス要因として扱われることも多い。これは改善すべき

・人口減少への対策
 →高齢化・人口減少の傾向から見ても、今後は移民を受け入れなければ日本社会は成り立たない。
 →日本の女性活用度は世界的に見ても非常に低い。もっと女性が働き易い環境を提供することで、日本は大きく活性化する。

・起業し易い環境の構築
 →日本では海外と比較して起業がしにくく、しかも一度失敗すると二度目のチャンスは与えられないことが多い。

これらのほとんどの項目は指摘を受けるまでもなく、以前から大きな問題として日本では取り上げられていますね。そしてこれらに加えて今の日本に必要なものとして、「リーダーシップ」と多くの人が挙げられています。この「リーダーシップ」という項目は確かに層なのですが、実際には「リーダーシップを持った人間が力を発揮できる環境がない」ことが最大の問題では無いかと感じられます。今の日本ではたとえリーダーシップを持った人間が出てきても、既得権益層を保護するシステムが非常に強固なため、すぐに潰されてしまうでしょうね。三十年前に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という大ベストセラーを書いたエズラ・F・ヴォーゲルが本書で「日本には政治家が長期視点に立って考えることのできる制度が必要なのにそういう制度が存在しない」と言っていますが、まさにこれですね。これは政治でも経済でも同じですね。

短期視点でしか考えることができない

長期にわたるような抜本的な改革ができず大きな結果が生まれない

結果が出ないとすぐにリーダーを変える

変えられないために、リーダーはすぐに結果を出す必要がある

短期視点でしか考えることができない

という負のループに陥っているように思われます。「リーダーシップを持った人間をリーダーとして選んだら、その人に思い通りにやらせてみる」ということは重要かとも思われます。「私に一任して欲しい」と言った政治家がいますが、このようなリーダーシップを持った人間が政治を主導的に進めて行く方法は必要でしょうね。いつまでも全員の合意を取って進めていくやり方をしていると日本の政治は何も変わらないのでしょう。


本書で面白いと思った小論文はいくつかあるのですが、それらのほとんどは本書の後半にある、日本の文化や伝統について書かれたものですね。「秋田犬の系譜」といったユニークなタイトルの小論文では作家のマーサ・シェリルが秋田犬の繁殖を続けた一人の日本人を通じて日本人の気性について語っていますし、「Tシャツか着物か」というタイトルの論文では着物という堅苦しい衣服を脱いで、すぐに着脱できるTシャツに着替えないと日本はやっていけない、といった趣旨の論が展開されています。また「パーフェクトブレンドを求めて」というタイトルの論文では世界的なコーヒーチェーン店、スターバックスのCEOが自身のスターバックスでの経験を踏まえて日本の未来について想いをはせています。

本書の中で、私の最も印象に残ったのは「外交力のない国、ニッポン」というブルッキングス研究所フェローの書かれた論文です。日本の外交力のなさ、世界会議での地位の低下振りを鋭すぎる論調で語っています。ここまで明確に、鋭く、日本の外交政策のことを批判してくれると、日本人でありながらもすっきりしますね。

本書は東日本の震災後に出版された本であり、震災に関する言及も数多くあり、そのどれもが「日本は確実に立ち直ってくる」と言っています。各国の期待に答え、日本という国をさらに、さらに、発展させるためにも本書のような本を読む人が多く増えることが必要なのでしょうね。論文集のような本なので読むのにそれなりの労力はいるのですが、読むといろいろなことがすっきりと分かる本だとは思いました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2012年04月25日

コミック日記86:銀の匙 Silver Spoon 3 by荒川弘



タイトル:銀の匙 Silver Spoon 3
作者:荒川弘
出版元:小学館
その他:

あらすじ----------------------------------------------
夏休みの間、クラスメートの御影アキの実家の牧場でバイトをしていた八軒勇吾は、いろんな悩みを解消できないままエゾノーの寮に戻ってきた。そして、八軒につきつけられる現実…実習で可愛がっていた豚の“豚丼”が、ついに肉になってしまうことに…そして、八軒がくだした驚きの決断は…!!


感想--------------------------------------------------
新刊が多く出ているため、コミック日記が続きますが、お付き合いください。


さてマンガ大賞受賞作「銀の匙」の三巻です。相変わらずおもしろいですね、この作品は。各登場人物のキャラクターが固まってきて、ますます勢いに乗りそうです。

御影の家で一夏のバイトを経験した八軒。様々な経験を通じて大きくなった八軒を待っていたのは、世話をしてきた豚、「豚丼」との別れだった−。

まだ三巻ですが本作を読んで思うのは、「本当によくできたマンガだなあ」ということです。主人公である八軒の成長、酪農を通じて学ぶ命の大切さと重み、友人達との絆、家族との関係。そういったものが全て詰め込まれていて、しかもどれもおろそかに描かれていないのが素晴らしいです。

しかし読んでいて思うのですが、主人公の八軒はよくできた人間ですね。
真面目でいて、頼まれると断りきれない。それでいて楽をせずに何事にも正面からぶつかっていく。本巻の中にも書かれていますが、こんな人がいたら確かに周りに人が集まるだろうな、と感じます。

凄く飛躍した考え方なのですが、今の世の中、八軒とその友達みたいな関係を築けるところが少ないのかもしれませんね。友達と家族と真剣にぶつかって意見を戦わせる。そして、その中から自分なりの答えを導き出して、決断を下す。こうしたプロセスを経ることで議論を戦わせることを自然と学び、自分で決断して責任をとることを学ぶのですが、今の世の中、何でも一人でできるようになっているためこういったプロセスを経ることができず、結果として未成熟な大人が増えてしまうように感じます。結果として、議論しているとすぐに感情的になる、他人の考えを表面的にしか受け入れられない、咀嚼できない、といった事態になってしまいます。

他人との関りを通じて自分の意見を磨き、それをまた他人にフィードバックする。こうしたプロセスを、実は我々は少年、青年時代から学んでいるのでしょうね。このプロセスを経ないと独りよがりの大人になってしまいそうです。そういった意味で、八軒君は理想的な環境にいそうです。

しかし八軒君はすごくいい友達に恵まれていますね。これも重要なポイントです。よい友達によい環境。北海道の大自然をバックに、凄くいい世界が描かれています。正直、この世界に入りたいくらいですね。なにより御飯がどれも本当においしそうです。

本巻の最後では、いよいよ「豚丼」が出荷され、豚肉に加工されてしまいます。誰もが生きるために食べる他の生き物の「命」。その「命」と正面から向き合っている本作は、それだけでも凄い作品だなあ、と感じます。

あとはあれですね。御影のじいちゃんの一言。
やっぱり、子供にはいいもの食べさせてあげたいな、って思いました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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タグ:銀の匙 書評
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2012年04月21日

コミック日記85:銀の匙 Silver Spoon 2 by荒川弘



タイトル:銀の匙 Silver Spoon 2
作者:荒川 弘
出版元:小学館
その他:

あらすじ----------------------------------------------
大人気酪農青春グラフィティ第2弾・夏編!

都会育ちの八軒勇吾は、戸惑いながらも大自然に囲まれた大蝦夷農業高校での日々に馴染んでいく。そして季節は、命ほとばしる夏へ。美味しかったり…
臭かったり…今年の夏は、ただ暑いだけじゃない…
日本中で大反響!大人気酪農青春グラフィティ 待望の第2巻!!


感想--------------------------------------------------
以前に紹介した「銀の匙」の二巻です。つい最近、山間が出ましたね。一巻ではまだまだ始まったばかりで物語の全体像と登場人物の紹介程度のイメージだったのですが、二巻では少しずつ物語が進んでいきますね。

ピザパーティー、工業高校との対抗戦、夏休みのバイト−。いろいろな体験を通じて、八軒は酪農のこと、命のこと、自分のこと、友人のこと、と様々なことに気が付いて行く−。

だんだんと深まって行く各キャラクターの個性と、八軒を中心とした人々の繋がりがいいですね。読んでいて少しずつ引き込まれていきます。中心になってピザパーティーを企画する八軒とその周りに集まる人々、そしてバイト先で鹿をさばくことになる八軒。本巻のポイントはこういったところでしょうか。北海道の大自然をバックにした物語の展開がとってもいいですね。

友情、命との触れ合い、命を食すということ、酪農農家の厳しい現実。そういったものをユーモアを交えながらうまく描くことに成功していると思います。一巻よりもかなり内容が面白くなってきています。

駒場の実家が経営する小規模農場、タマコの実家が経営する大規模農場。それぞれに対照的な経営理念があり、牛達への接し方も違ってきます。農業の直面している現実の厳しさと、それぞれの命との接し方、直面する人生の岐路とその選択。いろいろなテーマを著者独特のユーモアを交えながら、相変わらずうまく描いているなあ、と思います。次巻も楽しみです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2012年04月18日

読書日記342:恥知らずのパープルヘイズ ージョジョの奇妙な冒険よりー by上遠野 浩平



タイトル:恥知らずのパープルヘイズ ージョジョの奇妙な冒険よりー

作者:上遠野 浩平 (著), 荒木 飛呂彦 (著)
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
舞台は第5部完結の半年後。“裏切者”パンナコッタ・フーゴのその後どうなったのか。


感想--------------------------------------------------
ジョジョの奇妙な冒険」と言えば、荒木飛呂彦さんの名作です。作家さんの中にもファンが多いようで、乙一さんや西尾維新さんが外伝的な作品を書いていますが、その中でもAmazonでの評価が高かったのが、上遠野浩平さんによる本作です。

ボス:ディアボロの脅威に怯え、ジョルノやブチャラティたちを裏切ることになったフーゴ。そのフーゴにジョルノがボスとなった新生「組織」が裏切り者である「麻薬チーム」の壊滅を命令する−。

本作の舞台はジョルノ・ジョバーナが主人公となる第五部の、その後です。組織のボスの娘トリッシュを守りきり、ボス:ディアボロを倒すことで新しい組織のボスとなったジョルノ。そして物語の途中でジョルノたちを裏切ることになったフーゴ。原作ではフーゴはジョルノたちを裏切ったところでそのまま消えてしまい、確かに読者としてもその後が知りたいところでしたので、着眼点はいいなあ、と思います。

本作にも幾人ものスタンド使いが出てくるのですが、そのほとんど全てが本作のオリジナルです。スタンドの能力も物語自体の構成も原作に負けず劣らず独創的であり、舞台となるイタリア、シチリア島の風景なども含めていかにもジョジョらしいつくりです。読んでいると、そのままこの物語が荒木飛呂彦さんの原作で漫画化されて、眼の前に浮かんでくるようです。

さらに内容も非常に濃いですね。第一部、二部の石仮面や第四部のスタンド使いも少しですが絡んできたりして、原作ファンは十分に楽しめるのではないでしょうか。またフーゴの内面描写も非常に深いです。原作を踏襲しながら各人のキャラクターを深く掘り下げ、仲間を裏切らざるを得なかったフーゴの心理を深く描いて行く−。いいですね。ジョジョファンならかなり満足のいく作品になっているかと思います。

一方で難点を挙げるとすると、本作はあくまで「原作のジョジョの延長」ですね。作者である上遠野浩平さん独自の脚色はあまり多くないように感じられました。(これは私が上遠野浩平さんの作品を読んだことが無いため、そう感じるだけかもしれませんが)荒木飛呂彦さんのジョジョを描きつつその先の著者のオリジナリティのようなものを求めている読者にとっては少し物足りないかもしれません。確かに面白いのですが、ジョジョのエピソードが一つ追加された、という印象が抜けきれないんですね。

難点も書きましたが物語としては非常に面白いです。特に、読者であればきっと誰もが気になっていたフーゴのその後を書いて、いい形で完結させてくれたのは嬉しいですね。さて西尾維新さんや乙一さんはディオやプッチ神父を描いたりもしているようですが…、私は個人的には五部のジョルノ編や六部のジョリーン編が好きなので、このあたりについて書いてくれないかなあ、と思います。アナスイとか、承太郎のその後とか。ディオは、ジョジョではどの話でも揺るぎ無い存在感を放つキャラクターなので、外伝として扱うには難しそうですね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の著者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする