2009年07月08日

コミック日記26:PLUTO(8) by浦沢直樹



タイトル:PLUTO 8
作者:浦沢直樹
出版元:小学館
その他:

あらすじ----------------------------------------------
人間とロボットが共生するようになった時代。スイス最強のロボット、モンブランが殺された。同じ頃、ドイツのロボット法擁護団体の幹部が殺害された。
二人の遺体の頭部には“角”の様な物がほどこされていることからユーロポールが誇る高性能刑事ロボット、ゲジヒトは同一人物による犯行と考え捜査を進める。ゲジヒトは犯人の標的が自分を含めた7体の、大量破壊兵器になりうるロボットたちだと考えるが…。(wikipediaより)


感想--------------------------------------------------
20世紀少年」で有名な浦沢直樹さん。つい先日「BILLY BAT」という新作の紹介をしたばかりですが、逆に「PLUTO」は本作で終了です。全八巻と浦沢直樹さんの作品にしては短い作品ですね。本作品は言わずと知れた手塚治虫さんの名作、「鉄腕アトム」の中の一作品、「地上最大のロボット」のリメイクです。「浦沢直樹流、鉄腕アトム」といったところでしょうか。「地上最大のロボット」も読みましたが印象は大分違いますね。

 世界最強の7体のロボットが次々に破壊されていく。その犯人は?また犯行の目的は?

 本作の一番の特徴は主人公でしょうか。原作版では当然、アトムが主人公なのですが、本作の主人公はユーロポールの高性能ロボット:ゲジヒトです。そして、ゲジヒトが生きる「人間とロボットが共存する社会」というものを緻密に現実的に描いています。そのおかげで単なるロボットアクション漫画ではなく深みのある人間ドラマとして仕上がっていますね。

 人間やロボット達の描き込み方もやはり浦沢直樹さん、上手いですね。一人一人の個性を生かしつつ、その感情や背景を深く描き込んでいます。原作の中では一瞬で破壊されてしまったロボットもいるのですが、彼らにも背景と人格と感情を与えることで物語に深みを与えていますね。
 これは7体のロボットにとどまらず、破壊ロボット:プルートにも言えることです。その人格や生い立ちに深みを与えることでプルートの持つ悲しみ、憎しみがよりいっそう深まっていますね。

 ストーリー自体は原作と大きくは異なりません。でも描き方が違うだけで物語がこんなに変わってくるのかと驚かされます。登場人物一人一人の背景・人格・感情を深く描き込むことの大切さを改めて感じさせます。

 アトム・ウラン・お茶の水博士・天馬博士と言った「鉄腕アトム」の主要メンバーはみんな登場してきます。「憎しみだけでは何も変わらない」というメッセージを送ってくれる本作、原作「鉄腕アトム」のファンの方はぜひご覧ください。




総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by taka at 20:31| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月04日

読書日記141:反自殺クラブー池袋ウエストゲートパーク〈5〉 by石田衣良



タイトル:反自殺クラブー池袋ウエストゲートパーク〈5〉
作者:石田衣良
出版元:文春文庫
その他:

あらすじ----------------------------------------------
今日も池袋には事件が香る。風俗スカウト事務所の罠にはまったサンシャイン60階通りのウエイトレス。伝説のスターが設立を夢見るロックミュージアムの真実。集団自殺をプロデュースするインターネットの“クモ男”ー。ストリートの「今」を鮮やかに描くIWGPシリーズ、切れ味がさらに増した第5弾。


感想--------------------------------------------------
 池袋の果物屋の店番であり、なんでも屋であるマコトが友人達の力を借りながら数々の事件を解決していく「池袋ウエストゲートパーク」シリーズ。本シリーズは石田衣良さんの代表作ですね。本作はこのシリーズの第五作目にあたる作品です。「スカウトマン・ブルース」、「伝説の星」、「死に至る玩具」、「反自殺クラブ」の四作から構成されます。本シリーズ、時代劇で言うと「長屋に住む御隠居さんが毎回持ち込まれてくる難題を解決していく」という話です。違うのは舞台・人物設定を現代に置き換えている、という点ですね。

 私は本シリーズが最も石田衣良さんの持ち味が生きた作品だと思います。
 軽快なテンポ、時勢を切り取ったストーリー、生き生きとした人物の描写など、読んでいてどんどん引き込まれ、池袋の街をスピーディーに生きていくマコトの姿が目に浮かび、楽しくなってきます。

 特に素晴らしいと思うのは各話の最初の数ページです。各話、出だしの数ページで事件の背景をマコトの口から説明していくのですが、ここの部分の掴みが抜群にうまい。読者の興味を引き、話の背景を説明しつつ、リズムの良い語り口・比喩表現でストーリーにテンポを与えて読者を載せ、あっというまに話の最後まで連れて行きます。
 中でも最初の最初、出だしの一行はどの話でも秀逸だと思います。この一行にストーリーが集約されているといってもいいと思うのですが、ここの出だしはとても見事だと思います。
 また、登場人物もとても個性的ですね。Gボーイズのキングで氷の男:タカシ、ヤクザのお偉いさん:サル、ファミレスを根城にする情報屋:ゼロワンなどなど、いい味をだしています。

 ストーリ自体も非常に軽いテンポで書かれています。「反自殺クラブ」は自殺を食い止める若者達の戦いを描いた作品で、確かに他の作品よりは重いのですが、他のミステリものと比べると、そこまでシリアスにならずに読めます。この軽さも本シリーズの魅力かと思います。
 また本作、宮藤官九郎さんの脚本でドラマ化もされていますね。主人公のマコトを演じていたTOKIOの長瀬さん、タカシを演じていた窪塚洋介さんが特に印象的でした。

 現代の池袋の街をスピーディーに駆け抜けていくマコトとその仲間たちの姿はとても生き生きとしています。どんな難題にも報酬をもらうこと無く立ち向かっていくマコトの姿は魅力的ですね。そして彼らへの石田衣良さんの愛着も感じられる作品です。現在、第八作目まで出ていますので、そのうち残りも読む予定です。
 

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by taka at 20:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 石田衣良 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月01日

読書日記140:パラドックス13 by東野圭吾



タイトル:パラドックス13
作者:東野圭吾
出版元:毎日新聞社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
13時13分からの13秒間、地球は“P‐13現象”に襲われるという。何が起こるか、論理数学的に予測不可能。その瞬間ー目前に想像を絶する過酷な世界が出現した。なぜ我々だけがここにいるのか。生き延びるにはどうしたらいいのか。いまこの世界の数学的矛盾を読み解かなければならない。



感想--------------------------------------------------
 ヒット作連発作家、東野圭吾さんの最新作です。この方の作品にしては珍しく、SF的な内容です。私は本作を読んでいて、「LOST」や「ドラゴンヘッド」を思い出しました。

 ”P-13現象”に襲われた日本。その瞬間、目の前に現れた崩壊した東京に放り込まれた13人。極限の世界で生きていくことになった彼らは元の世界に戻れるのか・・・?

 本作、東野圭吾さんの作品らしく、ぐいぐいと展開に引きずり込まれていきます。最初から最後まで息付く暇もない、といった感じす。この展開の素晴らしさはさすが東野圭吾さんだ、と思いました。

 一方で、本作は東野圭吾さんにとっては挑戦的な作品だったのではないか、と思いました。
 東野圭吾さんの作品は人間の心理描写の表現の巧みさが際立っています。特に極限状況に置かれた人間の葛藤を描く技術は他の作家さんでは真似のできないレベルに達していると私は思います。犯罪者の身内として世の中から糾弾されつつも兄弟の絆を捨てきれない家族の姿を描いた「手紙」、親の情と倫理観の間で揺れ動く親の姿を描いた「赤い指」、愛のために殺人犯の汚名を着た男の姿を描いた「容疑者Xの献身」。どれも素晴らしい出来だと思います。
 上記の作品が犯罪/サスペンス/ミステリという括りであるのに対し、本作はSFです。しかも崩壊した東京という、実際には見たことが無い世界を舞台に生きる人々の極限心理を描こうとしています。これは相当難しいことだな、と思いましたが、同時に超一流の作家さんがこういうことにチャレンジすることは素晴らしいと思いました。

 内容は・・・、SFものということもあって、やはりこれまでの東野圭吾さんの作品とは一線を画した作品というイメージです。
 極限状況で生きる人間の心理状況を描いているのですが、「崩壊した東京」という舞台を私がなかなか想像できないため、彼らの精神状況を読み手がリアルに想像できない部分がありました。これはもう、SFの宿命かもしれませんが。「崩壊した東京」という舞台をどれだけ読み手が想像できるか、そこで生きる人間の葛藤を想像できるか、ここが本作を楽しめるかどうかのポイントだと思います。
「世界が変われば善悪も変わる。人殺しが善になることもある。これはそういうお話です」こんな風なことを東野圭吾さんはおっしゃっていますが、この言葉もそうですね。「人殺しが善になるまで追いつめられた状況」をどこまでリアルに想像できるか、がポイントです。「想像力」というのは小説を読む上で重要なファクターだと思いますが、特に本作のような現実とかけ離れた世界の物語を読む際には重要だと感じました。

 あと、ラストがあまりにもあっけなさすぎるかな、とも思いました。本作、「サンデー毎日」で一年に渡って連載されていた作品です。ですので、全50回で終わることを想定して書かれているため、こうなったのかな、と思いました。東野作品にしては珍しくさらっと、終わっていましたね。

 東野圭吾さんはもともとメーカーでお仕事をされていたらしく、理系の知識に非常に強い印象があります。この知識を生かしていただき、またSF作品をぜひ書いていただければと思いました。きっとそう思った読者は多いのではないでしょうか?
 

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by taka at 20:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月27日

コミック日記25:Billy Bat(1) by浦沢直樹



タイトル:BILLY BAT (1)
作者:浦沢直樹
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
1949年、アメリカ──『スーパーマン』『ワンダーウーマン』に並ぶ人気漫画『ビリーバットシリーズ』を描く、ケヴィン・ヤマガタのもとに、彼が描くキャラクターと同じものを以前日本で見たという情報が入った。ケヴィンはその真偽を確かめるため日本へと渡る──

浦沢直樹と長崎尚志の強力タッグがつむぐ、最新作!
コウモリが歴史の深淵を照らし出す──


感想--------------------------------------------------
 「20世紀少年」、「Monster」などで有名な、浦沢直樹さんの最新作です。浦沢直樹さんは今、日本で一番売れている漫画家さんかもしれません。その方の新連載がスタートしたとのことで、物凄く期待して読みました。

 日系アメリカ人漫画家ケヴィン・ヤマガタ。彼が描く「ビリーバット」によく似た絵を日本で見たという情報を元に日本を訪れたケヴィンは、不可解な事件に巻き込まれていくー。

 本作、舞台は戦後間もない1940年代後半の日本です。その日本を舞台にコウモリの姿を追うケヴィンが不可解な事件に巻き込まれていく、というものです。日本を裏から動かすコウモリをシンボルとした組織の正体はー?いやが応にも期待は高まりますね。

 本作、先述の「Monster」、「20世紀少年」での浦沢直樹さんの持ち味は十分に生きていますね。謎が謎を呼ぶ展開、しっかりとした時代考証を元に作成された世界観、人と人との関係が生み出す感動。どれも期待以上の出来です。いつも思うのですが、連載作品において毎回毎回、次回への期待を持たせつつ物語が破綻しないように構成を決めていくというのは大変難しいと思うのですが、それを簡単にこなしていく浦沢直樹さんの腕には本当に脱帽します。

 あと、本作では下山事件と呼ばれる、実際の事件を扱っています。
 日本橋三越に立ち寄った後、消息不明となり、翌日、礫死体となって発見された国鉄総裁:下山定則。迷宮入りしてしまったこの事件を浦沢直樹流の見方で読み解いていくようです。
 下山事件に加えて、三鷹事件、松川事件の二つを加えた三つの事件が「国鉄三大ミステリー」と呼ばれているそうですね。どれも真相が究明されていない事件ですが、きっと三鷹事件、松川事件も浦沢直樹流の見方で、本作の中で扱われていくのでしょう。

 時は1950年代の戦後復興の時代です。人類が月に行き、朝鮮戦争、ベトナム戦争を経て日本は高度成長の時代に突入していきます。ここら辺の時代の描き方も今後、とても気になるところですね。20世紀少年では60年代の日本をややノスタルジックに描いていましたが、本作ではどう扱われるのでしょうか。そして何よりも、コウモリをシンボルとした組織の正体は・・・?

 本作も間違いなく浦沢直樹さんの代表作と呼ばれる作品になるでしょう。次巻が待ち遠しくてたまりません。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by taka at 18:20| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月24日

読書日記139:平等ゲーム by桂望実



タイトル:平等ゲーム
作者:桂 望実
出版元:幻冬舎
その他:

あらすじ----------------------------------------------
瀬戸内海に浮かぶ「鷹の島」。そこでは…島民1600人が、全員平等。現代社会の歪みを是正するために生まれた、究極の楽園。人々は、嫉妬や私欲にかられることなく、何不自由ない豊かな生活を約束されている。まさに、天国。の、はずだったー。



感想--------------------------------------------------
 織田裕二さんと柴咲コウさんが出演した「県庁の星」という映画をご存知でしょうか?本作はその「県庁の星」の作者である桂望実さんの作品です。

 本作、概要を読んだ時はその発想が素晴らしいなと思いました。「島民1600人が全員平等に暮らす島を舞台とした物語」。この発想だけでも十分面白い作品に仕上がるだろうなと思いました。
 正直、私は「リアル鬼ごっこ」の作者である山田悠介さんの作品のようなものを期待していたのだと思います。奇抜な設定の中、極限状態で生きていく人間達のドラマ、といったような作品です。でも、本作は全く別のタイプの作品でした。

 本作、あくまでも"人間ドラマ"です。
 ホラーやサスペンス、ミステリの要素は全くありません。島で生まれ育って、正義だけを信じ、憎しみや嫉妬、悔しさといった負の感情を全く持たないままに育った一人の男が人々との触れ合いを通じて、人間らしさを取り戻していく、そんな内容です。

 正直、期待していたストーリー展開と全く違ったため、かなり戸惑いました。あらすじを読んでもミステリー?って普通は思いますしね・・・。「平等に見えた島の裏には不正が渦巻いていた!」みたいな・・・。
 展開自体も非常に穏やかで、静かに展開していきます。男の両親、過去の恋人、仕事を通じて知り合う人々との触れ合いを通じて成長していく男の描き方は見事だと思います。
 ただ、ストーリー自体は少し中途半端な気がします。唐突に始まり、中途半端途中で切れて終わってしまったように感じます。終止優しい雰囲気でいい形でストーリーを勧めていただけに、これは少し残念でした。特に主人公と主人公の元彼女の関係についてはストーリーの後半にもう少し展開があってもよかったかと思いました。あと、「平等ゲーム」というタイトルですがこの意味が少し分からないですね。「平等」の意味は分かるのですが、「ゲーム」という表現はなかったので、?、という感じでした。
 全体を通じて一人称の視点なのですがその描き方は上手いです。静かで穏やかな表現が得意そうですので、恋愛小説なんかが得意な方なのかな、なんて思いました。
 「県庁の星」はどうなんでしょうね?そのうち機会があったら読んでみようかな。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
タグ:書評 桂望実
posted by taka at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の著者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月21日

コミック日記24:ONEPIECE(54)



タイトル:ONE PIECE (54)
作者:尾田 栄一郎
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
”一つなぎの秘宝(ワンピース)”を求めて旅をするルフィは、海軍に囚われた兄”火拳のエース”を助け出すために世界最悪の牢獄、”インペルダウン”に向かうー!!


感想--------------------------------------------------
夢と勇気と友情の冒険ロマン漫画、ONEPIECEの最新巻です。相変わらず面白いです。

エースを救出するために、ルフィは大監獄:インペルダウンへー!!

 相変わらずキャラクターの個性が際立っていますね。本巻では新たにマゼランやハンニャバルといった新キャラが出てきますが、彼らもいい味出してます。
 本巻では新キャラだけでなく、むかしなつかしのキャラも多く出てきますね。ひとくせもふたくせもある彼らの姿が再び見れるのは嬉しい限りです。

 話の流れ的に、近いうちに海軍と最強の海賊:白ひげの衝突が見られそうです。”最強”の名が示す強さがどのようなものか、これも楽しみです。
 また、王下七武海の全貌もようやく分かりました。残るは四皇の残り二人と海軍大将:赤犬ですね。ドクターペガバンクもいましたね・・・。いやあ、この先の展開が楽しみになる一方ですね。
 本作も54巻を迎えたのにまだまだ終わらなさそうです。この先、ますますノンストップで楽しませてくれそうです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
タグ:ONEPIECE
posted by taka at 19:18| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月17日

読書日記138:偽物語(下) by西尾維新



タイトル:偽物語(下)
作者:西尾維新
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
“ファイヤーシスターズ”の参謀担当、阿良々木月火。暦の妹である彼女がその身に取り込んだ、吸血鬼をも凌駕する聖域の怪異とは!?VOFANの“光の魔術”は鮮やかに花開き、西尾維新が今、“物語”を根底から覆えすーこれぞ現代の怪異!怪異!怪異!青春は、にせものだけでは終らない。


感想--------------------------------------------------
 西尾維新さんの作品、最新巻です!!この人の作品は何も考えずに読めるからいいですね。今回も本当に楽しく読ませていただきました。主人公:阿良々木暦が怪異と対決する「化物語」シリーズ、今回の怪異は二人の妹の小さい方、阿良々木月火です!

 ・・・とはいっても、本シリーズ、ストーリーは付録のようなものです。本シリーズで一番面白いのは主人公と各登場人物の掛け合いのような会話ですね。まあ、これは西尾維新さんの作品に共通することですが。

 本作、でてくるキャラクターがみんないい感じにぶっ壊れてますね・・・。ライトノベル、ヤングアダルトという分野であることを考えても行き過ぎた壊れっぷりで、私は好きです。特に今作では二人の妹の大きい方、阿良々木火燐と主人公の掛け合いが多く、また彼女がいい感じの体育会系キャラでおばかで素直なので、彼女との掛け合いを楽しんで読むことが出来ました。
 本作には主人公の彼女、史上最強のツンデレ、戦場ヶ原ひたぎがでてきません。これが非常に残念だったのですが・・・それを十分補う面白さでした。(ひたぎはツンデレからツンドロに進化したという話ですが・・・どうなったのかとても興味がありますね・・・。)
 しかし、本シリーズ、いつも主人公がぼこぼこにされてますね。なんか主人公のイメージが、フルボッコにされているか、他のキャラクターに遊ばれているか、しかない・・・。

 あと、本シリーズ、7月よりテレビアニメ放送がいよいよ始まります。はたしてテレビシリーズの出来はどうなのか?とても楽しみです。しかし、原作を忠実にアニメ化したら間違いなく放送コードに引っかかると思うのですが・・・、そこをどう乗り切っているのかも興味のあるところです。
 そしてもう一つ気になるのは「テレビアニメで西尾維新の面白さが伝わるのか?」というところです。この方の作品は会話の駆け引き、言葉遣いの巧みさが全てですので、そこをどうアニメで伝えているのかが、非常に興味があります。(全く違う作品に仕上げてもそれはそれで面白いかもしれませんね。)

 本シリーズ、本作で終わりかと思いきや、あと二話分あるそうです。本シリーズファンとしては次回作を待つ楽しみがまた増えてとてもうれしいです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
タグ:書評 偽物語
posted by taka at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 西尾維新 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月14日

読書日記137:桐畑家の縁談 by中島京子



タイトル:桐畑家の縁談
作者:中島京子
出版元:マガジンハウス
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「結婚することにした」 妹・佳子の告白により、にわかに落ち着きをなくす姉・露子(独身)。寡黙な父、饒舌な母、そして素っ頓狂な大伯父をも巻き込んだ桐畑姉妹の悩ましくもうるわしき20代の日々。「さようなら、コタツ」の著者がもどかしいほどの姉妹の人生を、ユーモラスな視点で綴った作品。


感想--------------------------------------------------
 これまた初めて読む作家さんです。190ページ程度と読みやすい本でした。

 妹・佳子が結婚することにしたのは台湾人のウ・ミンゾン。いつも姉・露子の後ろに付いて歩いていたはずの妹は、気付くとどんどん先に進んでいってしまうー。

 妹の結婚を機に自分の恋愛や人生を見直していく姉・露子。その姉の姿を中心に、両親である桐畑夫妻や大伯父の姿をユーモアと切なさで描いた作品です。
 ストーリー自体は悪くはないと思うのですが、どうもいまいち登場人物が好きになれません。主人公である姉・露子があまりにも後ろ向きだからでしょうか・・・?寡黙な父、饒舌な母と、各登場人物がうまく色分けされているのですが、いまいち噛み合っておらず、引き込まれるストーリーになっていないところが残念です。

 結婚を決めて、式次第も決めて、いつも自信なさげだった妹は、いつの間にか自分より先を歩いていくー。そんな妹に驚かされ、焦りを感じながらも、自分の生き方、恋愛を振り返っていくー。妹を持つ女性の方は我が事のことのように感じられる方もいるかもしれませんね。晩婚化が進む現代で20代にしてここまで思い詰める人も少ないかもしれませんがー。

 本作、家族の描き方はいいなあと思います。ほのぼのとしていて、どことなくユーモアがあって。ただ、作者の伝えたいことが完全には伝わってきません。あと、一文が非常に長くて読み辛いところがありました。これはこの作者の持ち味だとも思うのですが、読んでてどこで文が終わるか分からず、読みにくいな、と感じてしまいました。もう少し枚数をかけて、じっくりと桐畑家の面々を描いていただけたら、より面白くなったのではないかと思います。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by taka at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の著者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月10日

読書日記136:重力ピエロ by伊坂幸太郎



タイトル:重力ピエロ
作者:伊坂幸太郎
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とはー。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。



感想--------------------------------------------------
 何度も紹介している伊坂幸太郎さんの作品です。昔、読んだ作品ですが映画化されるということで読み直してみました。私は、本作と「死神の精度」が、最も伊坂幸太郎さんらしい作品かと思います。

 伊坂幸太郎さんの作品は張り巡らされた伏線、ウィットに富んだ会話が持ち味ですが、本作もその持ち味は十分に生きています。主人公:泉水とその弟:春の会話はウィットに富んでいるだけでなく温かさも感じられます。そして、物語を最後まで読んで分かる物語の全貌と張り巡らされた伏線の意図、泉水と春の本当の心情。素晴らしく良く出来た物語です。この方の作品の構成の巧みさにはいつも驚かされます。

 本作で最も強調されているのは間違いなく「家族の絆」です。泉水、春、そして二人の両親が過去の悲しい出来事を乗り越えて、日々を前向きに生きていく姿はいいですね。ともすればお涙頂戴的な展開になりそうな物語を、ユーモアと優しさでうまく支えていると思います。なにより心に残るのはやはりタイトルの元となった「重力ピエロ」のフレーズでしょうか。

「楽しそうに生きてれば、地球の重力なんてなくなる」
「その通り。わたしやあなたは、そのうち宙に浮かぶ」

以前、本作を読んでから何年も経つのに、不思議とこのフレーズだけは忘れませんでした。
ともすると、皮肉や嫌み、あてこすりに満ちた言葉ばかり発してしまう大人が多い中で、こんな前向きな、ユーモアに満ちた言葉を発することが出来る親を持った子供達は幸せだ、と私はつくづく思います。

 本作、まさに今、映画化されて上映中ですね。
 泉水を加瀬亮さん、春を岡田将生さん、父親を小日向文世さん、母親を鈴木京香さんが演じているそうです。原作の雰囲気に近い役者さんばかりですね。あと、夏子さんを吉高由里子さんが演じていますね。吉高由里子さんはドラマ:「ラブ・シャッフル」や「白い春」に出ていますがとても演技力のある女優さんだと思います。本作でどんな演技を見せてくれるのか楽しみです。

家庭の事情により映画館に足を運ぶのは難しいですが・・・、そのうち見てみたい作品です。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by taka at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 伊坂幸太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月06日

読書日記135:向日葵の咲かない夏  by道尾 秀介



タイトル:向日葵の咲かない夏
作者:道尾 秀介
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
 夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。



感想--------------------------------------------------
 初めて読む作家さんです。ホラー、ミステリ作品ですね。私は本書を読んで乙一さんを思い出しました。作品全体に漂う雰囲気がどことなく似ています。(ホラー、ミステリという分野だから、というだけかもしれませんが・・・。)

 本書、読み始めた時と読み終わった時でだいぶ作品への印象が変わりました。最初はオカルト系かと思っていたのですが、もっと人間の狂気を深く描いた、内面的恐怖を感じさせる作品でした。

 主人公のミチオ、妹のミカ、二人の母親、S君、トコ婆、古瀬さん、岩村先生・・・。登場人物のほとんど全員がどこかおかしく、普通ではありません。何気ない日常を送っているようにみえて、どこかに狂気を持っています。そして、物語が進むに連れて、徐々にその狂気が姿を現してきます。

 何気ない日常を送っているように見えて、人間はみな多かれ少なかれ狂気を抱えている。そしてその狂気を押し殺し、狂気から逃げて日常を暮らしている。作者はそのように言っているように見えます。確かに我々の生きる現実には逃げ出したくなるような嫌なことが多々あります。それにぶつかったときに人間はどうするのか?本作の主人公であるミチオのような小さな少年はどうするのか・・・?本作の最後にミチオが取った行動は哀しいですが、現実かもしれません。

 本作、人によりますが、読後感は決してよくはありません。救いもありません。それが乙一さんの作品との最大の違いかな、と感じました。甘すぎる作品も辟易してしまうのですが、ストーリーに全く救いのない作品も私はあまり好きではありません。ミステリ作品としての技巧、心理描写の深さ、トリックや仕掛けの巧みさ、そういったものも重要ですが、私は物語を読む際にやはりストーリーのどこかに救いがほしいな、と感じてしまいます。そうでないと・・・やはり哀しくないですか?(救いの無い作品として私は真っ先に「慟哭」を思い浮かべてしまいます。あれはトリックは素晴らしいと思うのですが、いかんせん、読後感がダメでした・・・。)

 この方の他の作品も色々な賞を受賞したり、ノミネートされたりしています。特に「背の眼」は読んでみようかな、と思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


↓よかったらクリックにご協力お願いします
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by taka at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の著者の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする